プレイングマネジャーとは?役割や抱える課題、支援の方法を解説
更新日 2024.08.282024.08.26コラム
不確実な世の中、マネジャーには様々な役割が求められています。加えて、マネジャーのうち約9割を、プレイング業務も同時にこなすプレイングマネジャーが占めているようです。
皆様の組織においても、経営と現場をつなぐ役割にあり、同時に個人としても高い目標を担うプレイングマネジャーは、組織目標達成におけるキーパーソンでしょう。
本コラムでは、プレイングマネジャーが活躍できる組織づくりを扱います。さらに、プレイングマネジャーの動き方によって組織の働きがいを高める方法もご紹介いたします。
プレイングマネジャーとは
本コラムでは「プレイングマネジャー」を扱います。
プレイングマネジャーとは、人事考課の一次考課者として対象となる部下を持ち、仕事時間の中で少しでもプレイング業務に時間を割いているマネジャーを指します。
皆様の組織にいるマネジャーは、マネジメント業務に集中できているでしょうか。
少し問いを変えると、皆様の組織にいるマネジャーは、どの程度プレイング業務に時間を取られているのでしょうか。
3割?4割?ややもすると、1日の半分以上をプレイング業務にあてているマネジャーもいらっしゃるかもしれません。
少し前の調査データによると、世の中のマネジャーのうち約87%は、大なり小なり、仕事のなかでプレイング業務に時間を割いているようです。さらにマネジャーのうち約31%は、仕事のなかで、5割以上の時間をプレイング業務に割いているという結果がわかりました。
(出典)2020/4/24 リクルートワークス研究所 「マネジメント行動に関する調査2019」
かくいう私自身も、以前マネジメント職にあったころは、週のうち9割ほどがプレイング業務で占められていました。
さらに、本コラムを書くにあたり、現在の私の上司にも確認したところ、時期により変動がありつつ、3~6割ほどをプレイング業務にあてているそうです。
また、別のチームのマネジャーは、忙しい時期とも重なっており、7~8割をプレイング業務に費やしているとのことでした。
「働きがいのある組織を作るには、経営・管理者層と現場の信頼が大切だ!」という話は、私も毎日のように、お客様から伺っております。そして信頼関係を築くにはマネジメント業務が欠かせない。しかし、その実、世の中のマネジャーの皆様は、思うようにマネジメント業務に集中できていないのかもしれません。
一プレイヤーとしての高い成果と、事業・人材のマネジメントを同時に求められるプレイングマネジャー。
本コラムでは、そんなプレイングマネジャーを掘り下げてまいります。
プレイングマネジャーが多い理由
それでは、プレイングマネジャーが多い理由を考えてみましょう。
マネジャーがプレイング業務を行う理由は「せざるを得ない」「したい・した方が良い」の、大きく2つに大別されます。
以下、順に紹介いたします。
チームのケイパビリティ不足のため「せざるを得ない」
まずは、「せざるを得ない」からプレイング業務をしているプレイングマネジャーについてです。
こちらは組織の要請上、改善が難しく、またプレイングマネジャー自身も疲弊しやすいパターンです。
各マネジャーに対して、組織から果たすべきミッションが課せられます。
そのミッションを果たすうえで、チームメンバーのケイパビリティを比較したときに、足りない場合は、自然とマネジャーにプレイング業務が回ってきます。
実態はさらに複雑です。
組織からは、相当のスキル・経験を持つ社員しか満足にこなせない役割を求められます。また、方針の変化に応じて、組織の要請がかわることもあり、変化が生じるごとにチームメンバーの配置を変更・調整する必要が生じます。
メンバーについても、多様な背景を持った方が多く、スキル・経験、家族構成も様々です。働き方改革による労働時間への配慮や、コロナ禍以降の働く場所の多様化もマネジメントの複雑さを増しています。
さらにメンバーの入れ替わりがあれば、慣れるまでの指導や支援、退職者については引継ぎの手配なども生じます。これらの状況を全て加味したうえで、複雑で変化が激しい仕事に、多様なメンバーを割り当てる必要があるわけです。
ここまで考えると、むしろ、ケイパビリティが安定して充足している状況、マネジャーがプレイングをしなくてよい状況などあるのだろうかと、途方に暮れてしまいます。
マネジャー本人は、プレイング業務を減らしたいと思っている場合がほとんどですが、上記のような状況により、マネジャーのプレイング業務を減らすための業務改善や部下育成、採用・配置などのマネジメント業務が行う時間が確保できません。結果、状況が打破できないという負のループに陥ってしまう方が多いように感じます。
これが「せざるを得ない」からプレイングマネジャーが多い理由です。
「したい・した方が良い」という強い信念
もう一つ、「したい・した方が良い」からプレイング業務をしているプレイングマネジャーを紹介します。
こちらは、マネジャーの主体性でプレイング業務をしているパターンです。
部下と同じプレイング業務を通じて部下育成を行う、マネジャーが経験豊富なプレイヤーとしてプレイング業務の改善を進める、そもそもプレイング業務が好き、といった理由が聞かれます。
「せざるを得ない」でプレイング業務をしている場合と比べて、疲弊感は少ないですが、「したい・した方が良い」と、強い信念をもっている場合、少しの隙間時間を見つけては、プレイング業務に投じる方もいらっしゃいます。
その意味では、「せざるを得ない」プレイングマネジャーとは、異なる意味合いで根の深い問題と言えそうです。
「うちのマネジャーは、プレイング業務ばかりしていて、マネジメント不足なんだよ」といった愚痴を、お客様から何度も伺いました。
しかし、「せざるを得ない」「したい・した方が良い」いずれの場合でも、プレイングマネジャーがプレイング業務を行う理由は強固です。マネジャーの上位層から、「もっとマネジメント業務に集中しろ!」とはっぱをかけられたところで、プレイング業務を減らすのは難しく、彼らのストレスをためるばかりになりそうです。
そうだとすると、プレイングマネジャーから、一足飛びに全てのプレイング業務を取り除くことはできないと前提を置いたうえで、次善の策を考える方が良いのかもしれません。
プレイングマネジャーに必要なスキル
「せざるを得ない」プレイングマネジャーは、プレイング業務を減らす目途が立たず、減らすために考える時間も取れない。
「したい・した方が良い」プレイングマネジャーは、隙間時間でもプレイング業務を増やそうとする。
このような状況の中で、プレイングマネジャーは、何に気を付ければ良いのでしょうか。
ここでは、プレイングマネジャーに必要なスキルを紹介します。
一般的なマネジャーに求められるスキルと重複進部分もありますが、特にプレイング業務を担うマネジャーの特性を踏まえてお伝えしてまいります。
- プレイング業務の割合を30%以内とする目標設定
- プレイング業務の見極め2行目テキスト
- プレイング業務とマネジメント業務の同時実現
プレイング業務の割合を30%以内とする目標設定
プレイングマネジャーに必要なスキルの1つ目は、目標設定です。
もちろん全てのマネジャーに必要なスキルではありますが、プレイング業務を担うマネジャーには、より強く求められるスキルです。
具体的には、ご自身のプレイング業務の割合を30%以内になるように、目標を設定してください。
というのも、チームの成果を高めるためのプレイング業務の割合は、30%という調査結果が確認されています。それを超えてしまうと、マネジメント業務にも支障をきたし、チームの成果にも悪影響を及ぼしてしまうようです。
(出典)2020/1/30 リクルートワークス研究所 「プレイングマネジャーの時代」
どれほど忙しいプレイングマネジャーも、期初の目標設定はしているでしょうから、ここで以下のことを気にしてみて下さい。
①ミッションの分解
組織で持っているミッションは従来通りのミッションなのか、前期から変化があるのか。
前期からの変化は、前期の延長線上にあるものなのか、まったく新たなテーマが与えられたのかを確認します。
②チームのケイパビリティの確認
ミッションを達成するために、メンバーの配置は前期通りで良いのか、配置を見直したり、メンバーに新たなスキルを付与する必要はないのかを確認します。
上記のことを検討した結果、どの程度のプレイング業務が、今のメンバーで担いきれないかがわかります。
ただ、それを「マネジャーが担うプレイング業務」と、しないでください。
③マネジャーが担う業務の見極め
メンバーからはみ出たプレイング業務は全てマネジャーの担うもの、としてしまうと、時間がいくらあっても足りません。
業務改善や部下育成の中で、少しでも減らせないか。今の人員で解決できない場合、人事と相談し人を増やすことはできないか。これらも検討いただいた上で、マネジャーが担うプレイング業務を見極めて下さい。
一時的にオーバーしてしまうこともあるかもしれませんが、上記①~③も参考に、可能な限り、プレイング業務が30%以内になるように、目標をご検討ください。
プレイング業務の見極め
続いてのスキルは、プレイング業務の見極めです。
「せざるを得ない」場合でも、「したい・した方が良い」場合でも、どのプレイング業務を担うかについて、丁寧に見極めるステップを設けることをお勧めします。
上記、目標設定の項目と同じ内容を再度記載しますが、メンバーからはみ出た業務を「マネジャーが担うプレイング業務」と、しないでください。
メンバーからはみ出たプレイング業務にも、いくつかの種類があると思われます。
「難易度が低い・定型的な業務」と「難易度が高い・非定型的な業務」に分かれます。
このように書けば、ご想像頂けるかと思いますが、「難易度が高い・非定型的な業務」を優先的にご担当下さい。そのプレイング業務を担う中で、いずれメンバーに任せられるよう「難易度が高い・非定型的な業務」の分解・定型化にもお取組み下さい。
分解とは、文字通り、大きな塊の仕事を小さな単位に分解することです。分解の方法は2種類あります。
1つ目は、ステップごとの分解です。例えば、〇〇が終わったら次は△△、その次は□□とステップごとに分け、△△の仕事は手を付けやすいので部下のAさんに任せよう、となります。
2つ目は、作業の種類ごとの分解です。情報収集、方針検討、資料作成、関係者への情報共有・・・と分解し、情報収集はBさん、資料作成はCさんに任せるというようになります。
また、それらの仕事の中で、今は部下に任せられない〇〇の仕事や、考える工程が複雑な方針検討の仕事も、進め方や押さえるべき注意点を、言語化・マニュアル化の上、教育することで部下が対応できるようになります。これが定型化です。
分解・定型化を行うことで、今は「難易度が高い・非定型的な業務」もやがて「難易度が低い・定型的な業務」に変わり、マネジャーの手を離れることでしょう。
「難易度が低い・定型的な業務」がメンバーからはみ出ている場合も考えられます。それらをマネジャーが担う場合は、業務改善やアウトソーシングの余地を探すという目的をもって臨んでください。
プレイング業務とマネジメント業務の同時実現
最後のスキルは、プレイング業務とマネジメント業務の同時実現です。
プレイング業務を見極めて実施頂きますが、その際も、マネジメント業務の側面も持って行って下さい。
プレイングマネジャーの中には、部下との1on1など、マネジメント業務に時間が取れない場合も多いのではないでしょうか。プレイングマネジャーの皆様も既に実践済みと思われますが、ご自身のプレイング業務を、マネジメント業務の側面を持たせながら行うことを意識してください。
マネジメント業務も色々ありますが、特にプレイング業務と同時に行えるマネジメント業務には、以下のようなものが考えられます。
仕事側面
- 非定型業務の定型化
- 業務改善(簡略化・効率化)やアウトソーシング
人側面
- 協働する部下の情報収集、コンディション確認
- 協働する部下の育成
特に「難易度が低い・定型的な業務」を、マネジャーが行う場合、いかに早く終わらせるかに集中し、マネジメント業務の側面をゼロにして取り組まれることも多いのではないでしょうか。
早く終わらせてマネジメント業務に時間を使いたい、という気持ちもあろうと思いますが、せっかくプレイング業務を行う機会なので、マネジメント側面を持たせられないか、立ち止まってお考え下さい。
プレイングマネジャーのメリット
Googleで「プレイングマネジャー(もしくはプレイングマネージャー)」と検索すると、検索候補のキーワードには「ダメ」「限界」「おかしい」「激務」など、そうそうたる言葉が並んでいます。
世間では、非常に良くないものとして扱われがちなプレイングマネジャーですが、本当にただ悪いだけなのでしょうか。ただ悪いだけなのに、世の中の9割ものマネジャーがプレイング業務を手放せないのでしょうか。
もちろん、「せざるを得ない」状況で、必要悪だ、と割り切ってプレイング業務を行っている方もいるでしょう。
しかし「したい・した方が良い」方もいると思えば、何かしらのメリットがあると思われます。
ここからは、少し話題を変えて、プレイングマネジャーのメリットについて考えてまいります。
プレイングマネジャーのメリットは、以下の3点です。
- 実務に対してリアリティを持ったチーム運営
- プレイング能力の維持による、再配置のしやすさ
- マネジャーの情報や意思決定に対する信頼
実務に対してリアリティを持ったチーム運営
マネジャーがプレイング業務を行っているがゆえに、より真に迫った部下育成や業務改善が行えます。
仕事の割当や人員配置についても、プレイング業務を正しく理解していればこそ、適材適所が実現できるものと思われます。
まさにプレイングマネジャーならではの、チーム運営におけるメリットでしょう。
マネジャーの情報や意思決定に対する信頼
先ほどのものは部下・チームからの観点でした。
もう一方で、組織側からの観点でご紹介します。
プレイング業務も担い、部下の情報に詳しいマネジャーからの情報はより確度が高く、それに基づいた意思決定に対しても、組織として信頼を厚く寄せるものでしょう。
特にネガティブな情報(クレームやコンプライアンス違反等)が出てしまった場合、プレイング業務を担っているマネジャーから挙げられる報告は、より信頼できるものと思われます。
プレイング能力の維持による、再配置のしやすさ
最後は、少し異なる観点ですが、再配置のしやすさです。
事業計画が変更になれば、マネジャーといえど、新たな役割に就くことも考えられます。
企業によっては、役職定年をされた方は行き先がなく再配置に困る、といった話も伺います。
その時に、プレイング業務もできる場合と、マネジメント業務しかできない場合では、配置先の選択肢にも差がでてきます。
これもプレイングマネジャーならではのメリットと言えるでしょう。
このように見れば、プレイングマネジャーもデメリットばかりではないようです。
ただ、どうしてもデメリットが目立ってしまうのかもしれません。
プレイングマネジャーのデメリット・課題
反対に、プレイングマネジャーのデメリット・課題はなんでしょうか。
先の検索候補のように、挙げだせばきりがない状況かと思いますので、こちらも以下の3点にまとめてみました。
- マネジメント業務の時間不足
- 問題解決がプレイヤー志向
- 評価・育成の難しさによるマネジメント能力の成長鈍化
マネジメント業務の時間不足
こちらは誰もが感じていることではないでしょうか。
プレイング業務に大半の時間を取られてしまい、十分なマネジメント業務が行えない。もしくは、マネジメント業務も行おうとすると、体調を崩しかねない労働時間になってしまう。
これでは部下を育成したり、最適配置を考える時間も取れません。
結果、チームからはみ出るプレイング業務は抜本的に減らすことはできず、マネジャーの担うプレイング業務も減らすことができない、となりかねません。
さらには、そのプレイングマネジャーを見た部下が、マネジメント職に就くのをネガティブにとらえることも考えられます。
マネジメント業務の時間不足は、現在だけでなく、将来に向けても大きな影響を及ぼします。
問題解決がプレイヤー志向
2つ目は問題解決における考え方のデメリットです。
多くのプレイングマネジャーは、プレイング業務がチームからはみ出た場合、「自分がやれば〇時間で終わらせられるな」と考えがちです。
どうように、何か問題が起きたとき、プレイヤー志向で考えることが多いのではないでしょうか。
本来のマネジャーは、業務改善やアウトソーシング、場合によっては他部署との業務分担の交渉なども選択肢をもっています。その選択肢でもって、はみ出た仕事を減らせるはずです。結果として減らすことができなくても、その選択肢はお持ちのはずです。
もちろん、問題が解決されれば解決方法は何でも良いのかもしれません。
その場合でも、色々な選択肢を思い浮かべたうえで最善の選択を頂ければと思います。
評価・育成の難しさによる成長鈍化
最後は、プレイングマネジャーの成長に関するデメリットです。
人材育成は、役割等に応じた理想像があり、理想像に対する現状の到達点を評価し、そのギャップを埋めるべく育成する流れで行われます。
皆様の組織では、プレイングマネジャーの理想像は規定されているでしょうか。
そして、プレイングマネジャー用の項目で評価が行われているでしょうか。
私の過去のお客様との接点の中で、そのようなことが行われている組織には出会ったことがありません。
多くの場合は、プレイング業務を担わないマネジャーとして評価・育成しているか、場合によってプレイング業務を付加業務として加味する程度です。
つまり、実態に沿った理想像がなく、それにより正しい評価が行えていない場合がほとんどです。
ギャップが正しく見えていなければ、理想像に向かった育成も効率的に行えません。
これらがプレイングマネジャーのデメリット・課題です。
プレイングマネジャーの支援と育成の方法
上記のようなデメリット・課題のあるプレイングマネジャーには、どのように支援・育成すれば、さらにメリット部分を強調できるのでしょうか。
ここでは、組織としていかに支援・育成の体制を整えるかといった観点で2つの方法をご提案いたします。ぜひご参考になさって下さい。
- 定期的な内省の支援
- マネジメント業務の協力・分担
定期的な内省の支援
一つ目のご提案は、定期的な自己客観視の支援です。
日々、忙しく過ごしているプレイングマネジャーは、自身の仕事に埋没してしまい、おかれている状況が見えづらくなりがちです。
上司でも、人事担当者でも、外部コーチでも結構ですが、プレイングマネジャーに対して、自己の振り返り(内省)を促す機会を設けてみてはいかがでしょうか。
落ち着いていれば、もっといい結果になったのに!といった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。それはプレイングマネジャーも同じこと。
過去の意思決定は間違っていなったのか、今行っている業務の進め方は最適なのか、将来のリスクは正しく見立てられているかなど、日々不安に感じることは多々あります。それらが全て、落ち着いた、万全の精神状態で行えたわけではないでしょう。
むしろ、日常の中で落ち着いている状態の方が珍しいかもしれません。
そこで、有効なのが内省です。さらに効果的なのが、他者との対話を通じた内省です。
内省とは、自分の行動を主観や感情ではなく俯瞰して考え、悪かった点だけでなく良かった点も振り返ることですが、単独では難しいと捉える人が多くいます。
また、プレイングマネジャーが一人で丁寧に内省する時間をとれるかというと、それも忙しさの中に埋もれてしまうでしょう。
これらを踏まえ、月に1,2回、30分ずつでも結構ですので、上司や人事、コーチなどが、定期的に面談の機会を設けてください。
面談の中では、たとえば「最近の仕事はどうか」「悩んでいること、困っていることはないか」といった話しやすい問いから会話を始めてみてください。
定期的に日常を振り返り、アウトプットする機会を持つだけでも、大きな効果が期待できます。
もし、内省の面談を繰り返す中で、いずれ両者に十分な信頼関係が築けた、日常的な問いでは新たな気付きが得づらくなってきたと感じれば、「あなたは正しいことをしていると思うか」「あなたは何をやりたいのか」といった深い問いを投げかけることで、さらに深い内省を促すことが可能となります。
(出典)2010/4 RMS Message vol.21 内省し、学び続ける人こそ経営者にふさわしい
出来る範囲からで結構ですので、ぜひお取組み下さい。
マネジメント業務の協力・分担
もう一つのご提案は、マネジメント業務の協力・分担です。
これまで述べてきたように、マネジメント業務には様々なものがありますが、「誰が」それを担うかは、組織によって自由に設定することができます。
つまり、過負荷な状態にあるプレイングマネジャーに、全てを担わせるのではなく、一部のマネジメント業務を外部化することをご提案いたします。
部下育成を例にとってご紹介いたします。
数名の部下がいる中で、すべての部下を一人のプレイングマネジャーが育成しなければいけないわけではありません。チームのリーダー層にコンディションの確認などの情報収集を任せて、随時プレイングマネジャーに共有してもらうことも可能です。チームの業績や業務の進捗管理についても、担当者に現状把握を任せる、その上で、打ち手はプレイングマネジャーと共に考えるといった方法もあります。
組織によっては、部門組織に人事パートナー(HRBP)が配置されていることもあるでしょう。その際は、さらに人事管理を任せることも可能です。
人事管理とは例えば、採用や配置見直しなどのチーム構成の最適化、チームメンバー個々人のキャリアに関する展望確認やモニタリング、チーム内・外での人間関係の把握などが考えられます。
誰もが忙しいのは、その通りですが、プレイングマネジャーだけですべての責任を背負いきる必要はありません。
そして、一度誰かにマネジメント業務を任せたからといって、未来永劫その分担である必要もありません。メンバーに一部の業績管理を任せても、その担当が過負荷になった場合、プレイングマネジャーの手が空いた場合などは役割を戻しても良いのです。
常に今の組織を見て、最適な役割分担をご検討下さい。
組織の働きがいを高めるプレイングマネジャーの動き方
本コラムの最後に、組織の働きがいを高めるプレイングマネジャーの動き方をご紹介いたします。
弊社は数々の組織の働きがいを調査しておりますが、その中で、「総合的にみて、『働きがいのある会社』だと言える」という設問と相関が高い、経営・管理者層に関する設問を分析すると、「私を単なる従業員としてではなく、人として大切に扱ってくれる」や「誠実で倫理的に仕事を行っている」「まじめに従業員の提案や意見を求め、それに対応している」といった設問が上がりました。
NO. | 設問 | 相関係数 |
---|---|---|
ー | 総合的にみて、「働きがいのある会社」だと言える | ー |
1 | 経営・管理者層は、私を単なる従業員としてではなく、人として大切に扱ってくれる | 0.70 |
2 | 経営・管理者層は、誠実で倫理的に仕事を行っている | 0.67 |
3 | 経営・管理者層は、まじめに従業員の提案や意見を求め、それに対応している | 0.66 |
これらの設問から、以下のようなプレイングマネジャーの動きが組織の働きがい向上に効果的です。
- プレイング業務に取り組む際は、部下と協働の機会を作り、丁寧に仕事ぶりを見たり対話・指導の機会を持つ
- プレイング業務に誠実・倫理的に取り組み、その仕事におけるポイントや大切さを周囲の部下に伝える
- 業務の改善余地について部下から意見を求め、自分がプレイング業務を行う際の観点も織り交ぜながら、一緒に業務改善を進める
いかがでしょうか。
このような取り組みは、プレイングマネジャーだからこそ取り組める、働きがいの高め方だと思われます。
GPTW Japanの調査では、働きがいの高い会社は業績が高い、離職率が低いということも分かっています。会社のパフォーマンス改善のためにも、ぜひこのような動き方もお試し下さい。
プレイングマネジャーを取り巻く状況を把握する「働きがいのある会社」調査
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
世の中のマネジャーのうち、大半はプレイングマネジャーでした。マネジメント業務に時間を割きたいと思っていても、プレイング業務を捨て去るのも難しいようですが、プレイングマネジャーならではのメリットもあり、組織の支援次第ではより強くメリットを引き出すことも可能です。
また、プレイングマネジャーがどれほど働きがいを感じているか、プレイングマネジャーは部下の働きがいを引き出せているかなどの現状把握にあたっては、弊社の「働きがい調査」が大変有効です。自社の働きがいと、働きがいが一定水準以上のベンチマーク企業と比較した強みや成長の機会などの情報は、これからの方向性を検討する素材として非常に多くの示唆をもたらしてくれます。
さらに一定のスコアで受けられる働きがい認定は、企業ブランディングにも大変有効です。
Great Place To Work®の「働きがい調査」は最短2か月で実施可能で、「プレイングマネジャーへの内省支援」にも活用いただけます。ご関心のある方は是非、以下より詳細をご確認ください。
従業員が定着しない原因を突き止めます。エンゲージメントサーベイ
世界約170ヶ国で10,000社以上が導入。機能豊富なサーベイプラットフォームで、従業員の声を可視化して働きがいを高めませんか?上位企業は「働きがい認定企業」に選出!
Great Place To Work® Institute Japan コンサルタント 落合 健太
2023年10月、GPTW Japanに参画。働きがいのある会社調査を通じて、組織変革の支援を行う。