働きがいを高める効能~業績パフォーマンスや離職率への影響~

更新日 2025.09.042025.09.04コラム

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近年、多くの企業が「働きがい」の重要性に注目しています。従業員が働きがいを感じ、前向きに働ける環境づくりは、単なる福利厚生や満足度の問題ではなく、企業の持続的成長を左右する経営課題でもあります。働きがいの高い職場では、イノベーションが生まれやすく、チームの連携も円滑になり、結果として業績にも好影響を及ぼします。本コラムでは、「働きがいとは何か」から始め、働きがいと企業パフォーマンス、離職率への影響について、データを交えながら経営へのメリットについて解説していきます。

働きがいとは

近年では、従業員の幸福度やエンゲージメントに注目する企業が増えており、「働きがい」は人的資本経営における重要な指標のひとつとされています。

Great Place To Work(R) Institute Japan(以下、GPTW Japan)では、働きがいとは“働きやすさ”と“やりがい”の両方を指しています。“働きやすさ”とは、いわゆる就労条件や報酬条件といった衛生要因であり、働き方改革が進む中で改善されてきた内容です。一方“やりがい”とは、仕事に対するやる気やモチベーションといった動機づけ要因を指します。我々は、この両面を備えている組織を「働きがいのある会社」であると考えています。

働きがい認定とは

働きがい認定は、Great Place To Work(R) Institute(以下、GPTW)が提供する制度で、従業員へのアンケートと経営・人事の取り組みに基づき、公正かつ定量的に組織の「働きがい」を評価・可視化するものです。

この認定を取得した企業は、先述した“働きやすさ”があるのはもちろん、従業員の“やりがい”も兼ね備えた企業であるといえます。

従業員の声を基に、第三者機関での評価・認定が得られる仕組みとなっているため、この認定を取得していることは、社内のモチベーション向上だけでなく、社外へのブランド発信、採用力の強化、取引先・求職者等からの信頼の獲得にもつながります。

▼「『働きがいのある会社』認定」の詳細はこちらから
https://hatarakigai.info/ranking_service/

【ホワイトペーパー】働きがいを向上させるための施策事例15選

この資料では、働きがいを高めるうえで企業が直面しやすい5つの組織課題とそれらの課題に対する具体的な施策事例について紹介します。

働きがいと業績の関係

「働きがいがある会社」は、単に良い職場というだけではありません。実際には、業績面にも明確なプラス効果をもたらすことが、様々なデータで明らかになっています。

対前年売上伸び率

「働きがいのある会社」は、売上成長率においても優位性を示しています。

2025年版「働きがいのある会社」調査参加企業のうち、働きがい認定企業と不認定企業における対前年売上伸び率の違いをみてみると、働きがい認定企業は不認定企業に比べて売上の対前年伸び率の平均が12.0ポイント高いという結果となりました。

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※2025年版「働きがいのある会社」調査参加企業のうち、売上数値の提出があり比較が可能な企業183社のデータを集計し作成

これは、従業員の主体性や協働性が高まり、顧客対応の質やイノベーション創出が加速するためと考えられます。現場での小さな改善活動や提案が日常的に行われ、組織全体のパフォーマンスが底上げされていくのです。

【ホワイトペーパー】働きがいとは何か?~これを読めば、「働きがい」のあれこれが分かる!~

「働きがい」は漠然とした言葉であるため、その実態はよく分からないという方も多いのではないでしょうか。 本資料では、働きがいを構成する要素や、その中でも特に働きがいに影響の強い要素、また企業が働きがいを高めることのメリットなどについて、データとともに紹介します。

株価パフォーマンス

働きがいの高い企業は、株式市場においても投資家から高い評価を得ています。

2010年版「働きがいのある会社」ランキング発表後の20103月末に10社の株式に等金額を投資した場合(2010働きがいのある会社ポートフォリオ)の、その後の20253月末時点までの投資リターンを分析した結果が以下のグラフです。

2010年働きがいのある会社ポートフォリオのリターンは477.7%(年率換算前、年率では12.4%)と投資額は約6倍になっています。また、同時期の日経平均とTOPIXのリターンはそれぞれ221.6%と171.6% (年率ではそれぞれ8.1%、6.9%)であり、市場平均を大きく上回る結果となりました。

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PBR/PER(株価指標)

また、働きがい認定企業はPBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)といった指標でも、上場企業平均を上回る傾向があります。

2024年版働きがい認定企業のうち上場している26社における20242月末株価に基づく連結PBRPERの中央値と、PBRPERが計算できる上場企業の中央値をそれぞれ比較した結果が以下のグラフです。いずれも上場企業の中央値を働きがい認定企業の中央値が上回る結果となりました。

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これは将来の成長性や収益性に対する市場からの期待を結果的に反映しているものと言えるでしょう。

PBRPERとは
PBRとは、企業の純資産に対して株価がどれだけ評価されているかを示す指標で、「将来の成長性や資産の質」が高いと市場が判断している企業ほど、PBRが高くなる傾向があります。
PERとは、企業の利益に対して株価がどれだけ割高・割安かを示す指標で、「将来の収益性」への期待が大きい企業ほど、PERが高くなる傾向があります。

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離職率

もうひとつの重要な指標が「離職率」です。厚生労働省の調査でも、従業員の早期離職は主に「人間関係」や「職場環境への不満」に起因することが多いですが、働きがいがこれらをカバーする概念と言えます。

実際、働きがい認定を受けている企業では、一般企業と比較して離職率が低い傾向がみられます。以下のグラフは、厚生労働省発表の産業別離職率平均と、働きがい認定企業の産業別離職率平均を比較したものです。多くの業種において働きがい認定企業の離職率の方が低い結果となっています(認定企業の社数が一定数以上の産業のみ掲載)。

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※1:「離職率」にはフルタイムとパートタイムの離職率が含まれる
2出典:厚生労働省 令和5年雇用動向調査結果の概要「2.産業別の入職と離職」 図4-2 産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率(令和5年(2023))

離職率の低下は、採用コストや引き継ぎコストの削減に直結するだけでなく、現場のノウハウ蓄積や組織学習を促進し、さらなる業績向上へとつながります。

また、従業員が長く働き続けたいと思える環境は、結果的に採用力の強化や企業ブランド価値の向上にも寄与します。

認定を通じて、働きがいのある会社へ

以上のように、「働きがい」を高めることは、従業員満足の向上にとどまらず、業績向上や人材定着、投資家からの評価向上にもつながるという、非常に高い投資対効果をもたらします。

とはいえ、働きがいは一朝一夕で醸成されるものではありません。従業員一人ひとりの声に耳を傾け、誠実な対話を重ね、組織全体で信頼関係を築くことが出発点です。

働きがい認定は、その道のりにおけるマイルストーンと言えます。評価を受けることで、自社の強みや課題が明確になり、さらなる改善へ向けた指針が得られます。

これからの時代、「人が辞めない会社」ではなく、「人が集まり、育ち、挑戦し続ける会社」こそが、持続可能な成長を遂げる真の勝者となるでしょう。
その第一歩として、まずは「働きがい認定」を目指してみてはいかがでしょうか。

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Great Place To Work® Institute Japan コンサルタント 岡部 宏章

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新卒で人材派遣会社に入社し、経営企画としてグループ会社の事業基盤作りや組織開発業務に携わる。
2021年よりGreat Place To Work(R) Institute Japanに参画し、コンサルタントとして中小~大手まで幅広く顧客を担当。「働きがいのある会社」調査の提供、経営層への提言・支援の他、調査データの分析研究なども担当している。