入社後ギャップとは?早期離職を防ぐ原因別の対策をわかりやすく解説
更新日 2025.12.042025.12.01コラム
入社後のギャップは、多くの企業が直面する人材定着における重要な課題です。
この問題は、社員のモチベーション低下や早期離職につながるだけでなく、企業の採用コスト増大や生産性の低下をも招きます。
本記事では、入社後ギャップが発生する主な原因を分析し、採用段階から入社後まで、企業が実践できる具体的な対策を解説します。
適切な予防策とフォローアップ体制を構築し、社員と企業の双方にとって不幸なミスマッチを防ぐことが求められます。
入社後ギャップによる早期離職を防ぐには、採用段階からの体系的な対策が不可欠です。
本記事では基本的な考え方を解説しますが、より実践的な施策については、
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そもそも入社後ギャップとは?多くの社会人が経験するミスマッチの正体
入社後のギャップとは、候補者が入社前に抱いていた企業に対する期待やイメージと、入社後に経験する現実との間に生じる認識のズレを指します。
これは特別なことではなく、多くの社会人が経験する現象です。
しかし、このギャップが大きすぎると、社員のエンゲージメント低下や早期離職の引き金となり得ます。
企業は、入社後にギャップが生じることを前提として、その原因を理解し、影響を最小限に抑えるための取り組みを行うことが不可欠です。
入社前に抱いた理想と入社後の現実との食い違い
入社後ギャップの正体は、候補者が企業に対して抱く「理想」と、入社してから目の当たりにする「現実」との間に存在する食い違いです。
具体的には、求人情報や面接で伝えられた仕事内容、働きがい、社風、労働条件、人間関係といった要素について、事前の期待と実際の状況が異なる場合に発生します。
例えば、「裁量権の大きい仕事ができる」と期待していたにもかかわらず、実際には定型的な業務ばかりだったというケースがこれにあたります。
このような食い違いが積み重なると、社員は「こんなはずではなかった」と感じ、仕事への意欲を失い、最悪の場合、早期の退職を決断する要因となります。
【データ】約9割の社員が入社後のギャップを経験
エン・ジャパンが実施したアンケート調査によると、20~30代ビジネスパーソンの9割近くが、入社後に何らかのギャップを感じたことがあると回答しています。
このデータは、入社後ギャップが一部の特別なケースではなく、非常に多くの社会人が経験する普遍的な課題であることを示しています。
同調査では、「想定より悪かった」と感じたギャップとして「仕事内容」「職場の雰囲気」「仕事量」「評価制度」などが上位に挙げられており、ミスマッチが特定の領域だけでなく多岐にわたっていることがわかります。
企業の人事担当者や管理職は、こうした実態を認識し、ギャップが生じるのは当然という前提に立って対策を講じる必要があります。
出典:エン・ジャパン/「20代・30代のビジネスパーソン900人に聞いた「入社後ギャップ」調査
なぜ入社後ギャップは起きてしまうのか?よくある5つの原因
入社後ギャップは、単一の原因で発生するわけではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じます。
多くの場合、採用活動における企業側の情報提供のあり方と、候補者側の企業理解の度合いとの間にズレがあることが根本的な問題です。
ここでは、入社後ギャップを引き起こす代表的な5つの原因を具体的に掘り下げ、それぞれの背景にある構造的な課題を明らかにしていきます。
これらの原因を理解することが、効果的な対策を講じるための第一歩となります。
原因1:仕事内容に関する認識のズレ
求人情報や面接で説明された業務内容と、実際に担当する業務の範囲や難易度、裁量権が異なる場合に、仕事内容に関するギャップが生じます。
企業側が採用競争力を高めようとするあまり、仕事の魅力的な側面を過度に強調し、地味で泥臭い作業や困難な部分について十分に説明しないことが一因です。
また、配属先の部署やチームの具体的な業務フローまで候補者が理解できていないケースも少なくありません。
会社としては、候補者に即戦力としての活躍を期待していても、本人のスキルセットと業務の要求レベルが合わず、お互いにとって不幸な結果を招くこともあります。
原因2:労働時間や休日など働き方への期待との乖離
残業時間、有給休暇の取得率、休日の取りやすさ、リモートワークの導入実態など、働き方に関する条件が入社前の説明と異なることは、入社後ギャップの典型的な原因です。
例えば、面接の場では「残業は月平均20時間程度」と伝えられたにもかかわらず、実際には繁忙期に倍以上の残業が常態化しているといったケースが該当します。
特に近年はワークライフバランスを重視する傾向が強く、働き方の柔軟性に対する期待値は高まっています。そのため、実態と異なる説明は社員の不満を直接的に引き起こし、信頼関係を損なう大きな要因となります。
原因3:企業理念や社風が自分に合わない
企業のウェブサイトや採用パンフレットで謳われている理念やビジョンと、実際の職場の雰囲気や文化との間に隔たりがある場合、社員はカルチャー面でのミスマッチを感じます。
例えば、「風通しの良いフラットな組織」と聞いていたのに、実際は年功序列やトップダウンの意思決定が根強い文化だったというケースです。
社風のような定性的な情報は、短い面接時間や形式的な質問のやり取りだけでは正確に伝わりにくく、候補者も自身の価値観と合うかどうかを判断しきれないまま入社に至ることがあります。
このズレは、日々の業務におけるコミュニケーションの取り方や意思決定のプロセスに違和感をもたらします。
原因4:上司や同僚との人間関係におけるミスマッチ
人間関係は入社後ギャップの中でも特に深刻化しやすい問題です。
配属された部署の上司との価値観の相違や、チームメンバーとのコミュニケーションスタイルの不一致は、日々の業務遂行において大きなストレスとなります。
特に中途採用の場合、前職までのやり方や文化が身についているため、新しい環境の人間関係に馴染むのに苦労することも少なくありません。
採用選考の過程で、人事担当者や役員など限られた社員としか接する機会がなく、実際に共に働くことになる直属の上司や同僚の人柄やチームの雰囲気を事前に把握できなかった場合、入社後に問題が顕在化しやすくなります。
原因5:給与や評価制度といった待遇面への不満
給与や評価制度に関する認識のズレも重大な入社後ギャップの原因です。
例えば、提示された年収額に固定残業代が含まれていることを入社後に知ったり、インセンティブ制度が思ったように機能していなかったりするケースが挙げられます。
また、どのような成果を上げれば昇給や昇格につながるのか、評価基準が不明確であることも不満につながります。
特にキャリアの浅い新入社員は、自身の働きがどのように評価に結びつくのか理解できていない場合が多いです。
入社前に評価制度の具体的な運用実態について十分な説明がなされていないと、「貢献度が正当に評価されていない」という不満を抱くことになります。
入社後ギャップの原因を理解したら、次は「候補者心理」を踏まえた対策が重要です。
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入社後ギャップが企業にもたらす3つの深刻なデメリット
入社後ギャップは社員個人の問題にとどまらず、企業経営全体に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
社員の早期離職は、目に見えるコストの増大だけでなく、組織の士気や生産性、さらには将来の採用活動にまで負の影響を連鎖させます。
この問題を軽視し、適切な対策を怠ると、企業の持続的な成長を阻害する大きな要因となりかねません。
ここでは、入社後ギャップが企業にもたらす3つの具体的なデメリットについて解説します。
早期離職による採用・教育コストの増大
入社後ギャップを理由に社員が早期離職した場合、その社員を獲得するために投じた採用コストがすべて無駄になります。
具体的には、求人広告の掲載費用、人材紹介会社への成功報酬、採用担当者の人件費などがこれにあたります。
さらに、入社後に行った研修やOJTなどの教育コストも回収できなくなります。
欠員を補充するためには、再び同じプロセスを経て採用活動を行わなければならず、コストは二重に発生します。
このような採用と教育に関わる金銭的・時間的なコストの損失は、企業の収益性を直接的に圧迫する深刻な問題です。
既存社員のモチベーション低下や業務負担の増加
新入社員の離職は、残された既存社員にも大きな影響を及ぼします。
離職者が出た部署では、その人物が担っていた業務を残されたメンバーで分担する必要が生じ、一人ひとりの業務負荷が増加します。業務量の増加は、長時間労働や心身の疲労につながる可能性があります。
また、「同期が辞めてしまった」「この職場には何か問題があるのではないか」といった不安や不満が周囲に広がり、チーム全体のモチベーションを低下させることもあります。
こうしたネガティブな連鎖は、さらなる離職者を生む悪循環を引き起こすリスクをはらんでいます。
企業の評判低下が採用活動に与える悪影響
現代では、企業の口コミサイトやSNSを通じて、元社員が自社の内部情報を発信することが容易になっています。
入社後ギャップが原因で退職した社員が、その経験を元にネガティブな情報を書き込んだ場合、企業の評判は大きく損なわれます。
特に「求人情報と実態が違う」「ハラスメントが横行している」といった情報は、求職者の企業選択に大きな影響を与えます。
一度広まった悪い評判を払拭するのは容易ではなく、結果として今後の採用活動において優秀な人材からの応募が減少するなど、中長期的に企業の競争力を低下させることにつながります。
採用段階でミスマッチを防ぐ!入社後ギャップの予防策
採用段階での対策は、候補者の心理状況に合わせた情報提供がカギです。
応募時・面接時・内定後の各段階で「候補者が何を考え、何を不安に思うか」を予測し、最適な情報を提示する実践的なフレームワークは、
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入社後ギャップを根本的に解決するためには、問題が発生してから対処するのではなく、採用段階でミスマッチの種を摘み取ることが最も効果的です。
そのためには、企業側が候補者に対して、できる限り正確で透明性の高い情報を提供し、入社後の姿を具体的にイメージしてもらう必要があります。
ここでは、採用プロセスにおいて実践できる、入社後ギャップを未然に防ぐための具体的な予防策を4つ紹介します。
企業のありのままを伝える「RJP(現実的な職務予告)」を導入する
RJP(RealisticJobPreview)とは、採用選考の段階で、仕事の良い面だけでなく、厳しさや困難な点、ネガティブな情報も含めて、ありのままの姿を候補者に伝える手法です。
例えば、業務内容のやりがいに加えて、地道な作業の多さや繁忙期の厳しさなども率直に伝えます。
これにより、候補者は入社後の働き方をより現実的に想像でき、過剰な期待を抱くことなく、自身で入社するか否かを判断する「自己選抜」が促されます。
結果として、入社後の定着率向上や、困難な状況にも覚悟を持って取り組める人材の確保が期待できます。
募集要項や面接で仕事の良い面も悪い面も正直に伝える
RJPを具体的に実践する場として、募集要項や面接が挙げられます。
募集要項には、魅力的な業務内容だけでなく、現在チームが抱えている課題や、乗り越えるべきハードルについても言及することが有効です。
面接の場では、候補者の質問に対して誠実に回答することはもちろん、企業側からも「この仕事には、こういった大変な側面もありますが、どう考えますか」といった問いかけを行い、候補者の覚悟やストレス耐性を確認します。
このような正直なコミュニケーションは、候補者との間に信頼関係を築き、入社後の「こんなはずではなかった」というギャップを最小限に抑える効果があります。
候補者の価値観やスキルを客観的に見極める
面接官の主観や印象だけに頼った選考は、ミスマッチを生む温床となり得ます。
候補者の能力や人柄をより客観的に評価するために、適性検査やスキルテストといったツールを活用することが有効です。
これらのツールは、候補者の潜在的な性格特性や価値観、職務遂行に必要なスキルレベルを可視化し、自社の社風や求める人物像との適合性を多角的に判断する材料を提供します。
また、あらかじめ質問項目や評価基準を定めておく「構造化面接」を導入することで、面接官による評価のブレをなくし、一貫性のある選考を行うこともミスマッチ防止に寄与します。
現場社員との座談会や職場見学の機会を提供する
採用担当者や役員の話だけでは伝わらない、リアルな職場の雰囲気や人間関係を候補者に理解してもらうために、現場社員と直接交流する機会を設けることは非常に効果的です。
カジュアルな雰囲気の座談会やランチミーティングを設定し、候補者が仕事の進め方や一日の流れ、職場の人間関係について気軽に質問できる場を提供します。
また、実際に働くことになるオフィスを見学してもらうことで、物理的な労働環境やそこで働く社員の様子を肌で感じてもらうことも有効です。
これにより、候補者は入社後の自分をより具体的にイメージでき、納得感を持って入社を決めることができます。
入社後のフォローでギャップを解消し離職を防ぐ方法
どれだけ採用段階で対策を講じても、入社後ギャップを完全に防ぐことは困難です。
そのため、入社した社員が抱える不安や戸惑いを早期に察知し、解消するためのフォローアップ体制を構築することが極めて重要になります。
入社後の丁寧なケアは、社員の孤立を防ぎ、組織へのスムーズな適応を促します。
ここでは、入社後のギャップを解消し、社員の定着を支援するための具体的な方法を4つ紹介します。
新入社員の早期活躍を支援するオンボーディングの実施
オンボーディングは、新入社員が組織の一員として早期に定着し、パフォーマンスを発揮できるよう支援する一連の体系的なプログラムです。
入社直後のオリエンテーションだけでなく、配属後のOJT計画、メンター制度の導入、定期的なフォローアップ面談などを組み合わせ、数ヶ月から1年といった中長期的なスパンで実施します。
計画的なオンボーディングを通じて、新入社員は業務スキルを習得するだけでなく、企業文化への理解を深め、社内の人間関係を構築していきます。
これにより、業務上の不安や組織への疎外感を解消し、早期の戦力化と定着促進が期待できます。
上司やメンターによる定期的な1on1ミーティング
直属の上司や業務の指導役であるメンターが新入社員と定期的に1対1で対話する機会を設けることはギャップの早期発見と解消に非常に有効です。
この場では業務の進捗確認だけでなく仕事を進める上での悩みや課題人間関係の不安今後のキャリアについての考えなどを率直に話し合います。
上司やメンターは傾聴の姿勢で新入社員の声に耳を傾け適切なアドバイスやサポートを提供します。
このような定期的な対話を通じて新入社員は孤独感を和らげ安心して業務に取り組むことが可能になります。
キャリアパスを明確に示し将来の展望を共有する
入社後の社員が、現在の業務の先にどのような成長可能性があるのか、将来のキャリアパスを具体的に示すことは、仕事へのモチベーションを維持する上で重要です。
この会社で働き続けることで、どのようなスキルが身につき、どのような役職や職務に就ける可能性があるのかを明確に提示します。
定期的な面談の機会に、本人の希望や適性を踏まえながら、今後のキャリアプランについて共に考える姿勢が求められます。
会社が自分の成長を支援してくれていると感じることで、社員は目の前の困難な課題にも前向きに取り組むことができ、エンゲージメントが高まります。
安心して悩みを相談できる窓口や環境を整備する
直属の上司には直接相談しにくい内容の悩みもあるため、人事部などが担当する公的な相談窓口を設置することが有効です。
ハラスメントに関する相談はもちろん、キャリアやメンタルヘルスに関する悩みまで幅広く受け付ける体制を整えます。
匿名での相談を可能にしたり、必要に応じて外部の専門家(産業医やカウンセラー)と連携したりすることも重要です。
また、特定の窓口だけでなく、部署や役職の垣根を越えて気軽にコミュニケーションが取れる、風通しの良い職場環境を日頃から醸成していくことも、社員が悩みを一人で抱え込むことを防ぐ上で不可欠です。
まとめ
入社後ギャップは、企業と社員双方にとって望ましくない結果を招く可能性がある、避けては通れない課題です。
しかし、その原因を正しく理解し、適切な対策を講じることで、影響を最小限に抑えることは可能です。
重要なのは、採用段階で企業のありのままの姿を誠実に伝え、候補者との相互理解を深めること、そして入社後も社員を孤独にせず、継続的なコミュニケーションと支援を通じて組織への適応を丁寧にサポートしていく姿勢です。
これらの取り組みが、結果的に社員の定着率を高め、企業の持続的な成長を支える基盤となります。
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2. リアルな現場発信で信頼をつくる
現場社員の体験談や日常のエピソードを活用し、
候補者の「本当に知りたい情報」に応える発信手法
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内定者の心理状態(安心/不安/期待)に応じた
フォロー施策とメッセージ設計
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