採用ROIとは?計算方法から投資対効果を高める改善策まで解説

更新日 2025.12.042025.12.02コラム

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採用ROIとは、採用活動に投じたコストに対してどれだけのリターンがあったかを測る指標です。
労働人口の減少や採用手法の多様化により、採用コストは増加傾向にあります。

本記事では、採用ROIの基本的な考え方や計算方法から、費用対効果を高めるための具体的な改善策、KPI設定のポイントまでを網羅的に解説し、戦略的な採用活動の実現を支援します。

採用ROIとは?採用活動を「投資」として捉える考え方

採用ROIReturn On Investment)とは、投下した資本に対して得られた利益の割合を示す「投資対効果」を意味する経営指標です。
これを採用活動に適用したものが採用ROIであり、採用にかけたコストを、将来の企業成長を支える人材への「投資」と捉えます。
具体的には、採用した人材が生み出す成果をリターンと考え、それに見合ったコストで採用活動が行えているかを定量的に評価します。 

この指標を用いることで、感覚的になりがちな採用活動の効果を客観的な数値で把握し、より戦略的な意思決定を行うための土台を築くことが可能になります。

なぜ今、採用活動でROIが重要視されているのか

現代のビジネス環境において、採用ROIが重視される背景には、労働人口の減少に伴う人材獲得競争の激化があります。
売り手市場が続く中で、企業は優秀な人材を確保するため、多様な求人媒体や人材紹介サービスを利用する必要に迫られ、結果として採用コストが増加する傾向にあります。
限られた予算の中で最大限の成果を出すためには、各採用施策の費用対効果を正確に把握し、より効果的な手法にリソースを集中させなければなりません。 

また、経営層に対して採用活動の成果を客観的なデータで示す説明責任も求められており、ROIは採用部門の貢献度を可視化する上で重要な指標となっています。

採用ROIの基本的な計算式と算出方法

採用ROIは、採用活動によって得られた利益を採用コストで割り、100を掛けることで算出します。計算式は「(採用による利益÷採用コスト)×100」となり、この数値が高いほど、費用対効果の高い採用活動ができたと評価されます。 

例えば、ROI100%を超えれば、投資したコスト以上のリターンがあったことを意味します。
適切な人材を採用するために、この計算式を用いて自社の採用活動の効果を定量的に測定し、改善につなげるサイクルを確立することが求められます。 

計算に必要となる「採用コスト」の内訳

採用ROIを正確に算出するためには、採用コストを正しく把握する必要があります。
採用コストは、社外に支払う「外部コスト」と、社内で発生する「内部コスト」の二つに大別されます。
外部コストには、求人広告の掲載費用、人材紹介会社への成功報酬、会社説明会の会場費、採用パンフレットといった制作物の費用などが含まれます。

一方、内部コストは、採用担当者や面接官の人件費、リファラル採用を実施した場合のインセンティブ、内定者フォローにかかる費用などが該当します。
優秀な人材を採用する上で発生したこれらの費用を漏れなく集計することが、ROI算出の正確性を担保する第一歩です。 

算出における「採用成果(リターン)」の考え方

採用ROIの算出において、リターンとなる「採用成果」をどのように定義し、数値化するかが重要なポイントとなります。
採用した人材の貢献度を金額で測ることは容易ではありませんが、一般的には入社後の活躍度を指標として設定します。
例えば、採用した社員が1年間で創出した売上や粗利を成果と見なす方法があります。 

また、営業職以外の場合は、評価制度における評点や、特定のプロジェクトでの貢献度を換算する方法も考えられます。
さらに、入社後90日や1年といった特定の期間における定着率や、ハイパフォーマーの割合なども、組織への貢献を示す成果として定義することが可能です。 

具体例で学ぶ!採用ROIのシミュレーション

具体的な数値を用いて採用ROIを計算してみます。
仮に、ある企業が1人の営業職を採用するために、求人広告費や人件費など合計で200万円の採用コストをかけたとします。
そして、その採用された社員が入社後1年間で500万円の粗利を生み出した場合、採用による利益は500万円です。

この場合の採用ROIは、「(500万円÷200万円)×100=250%」となります。
これは、投資した採用コストに対して2.5倍のリターンがあったことを示しており、費用対効果の高い採用ができたと判断できます。
逆に、利益がコストを下回るとROI100%未満となり、採用投資が短期的には回収できていない状態を意味します。

採用ROIを向上させるための具体的な改善ポイント

採用ROIを向上させるには、「採用コストの削減」と「採用による利益の最大化」の二つの側面からのアプローチが考えられます。
コスト面では、費用対効果の低い採用手法を見直し、予算配分を最適化することが有効です。 

利益の面では、採用のミスマッチを防ぎ、入社した人材が早期に活躍できる環境を整えることで、定着率を高め、長期的なリターンを増やすことが求められます。
これらの改善策を総合的に実行することで、採用活動全体の投資対効果を高めることが可能になります。

採用手法の見直しでコストを適正化する

採用コストを削減するためには、まず現在利用している採用手法ごとの費用対効果を分析することが不可欠です。
求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用など、各チャネルから何人の応募があり、何人が採用に至ったか、そしてそれぞれにかかった費用はいくらかをデータで可視化します。 

その結果、特定のチャネルからの採用決定率が著しく低い、あるいは採用単価が非常に高いといった課題が見つかる場合があります。
費用対効果が低い手法への投資を減らし、自社の採用ターゲット層に効果的にアプローチできているチャネルへリソースを再配分することで、コスト全体の適正化が図れます。 

採用ターゲットを明確にしてミスマッチを防ぐ

採用ミスマッチによる早期離職は、それまでにかかった採用コストや教育コストが回収できなくなるだけでなく、新たな採用活動を要するため、採用ROIを著しく低下させる要因となります。
これを防ぐためには、採用活動を始める前に、事業戦略に基づいて求める人物像を具体的に定義することが重要です。 

必要なスキルや経験はもちろん、企業の文化や価値観に合う人材か(カルチャーフィット)という視点も欠かせません。
現場部門と十分に連携し、具体的なペルソナを設定した上で、求人票の訴求内容や面接での質問項目を設計することで、候補者との相互理解が深まり、入社後のギャップを最小限に抑えられます。 

選考プロセスを効率化して内部コストを削減する

採用活動における内部コスト、特に採用担当者や面接官の工数(人件費)は見過ごされがちな削減ポイントです。
書類選考に時間がかかりすぎている、面接回数が多すぎる、候補者との日程調整が煩雑であるといった課題は、プロセス全体の非効率化を招きます。 

ATS(採用管理システム)を導入して応募者情報を一元管理し、選考の進捗状況を可視化するだけでも、工数は大幅に削減されます。
また、一次面接にWeb面接を取り入れることで、面接官と候補者双方の移動時間や交通費といったコストを削減することも有効です。
プロセスの各段階でボトルネックとなっている部分を特定し、改善を図ることが内部コストの圧縮につながります。

入社後のフォローで定着率を高める

採用活動は、候補者が入社した時点で終わりではありません。
入社した人材が組織に定着し、本来のパフォーマンスを発揮して初めて、採用という投資が成果に結びつきます。
したがって、入社後の定着率を高めるための施策は、採用ROIを向上させる上で極めて重要です。

具体的には、新入社員がスムーズに職場に馴染めるよう支援するオンボーディングプログラムの設計、上司との定期的な1on1ミーティングの設定、メンター制度の導入などが挙げられます。
こうした入社後の丁寧なフォローアップは、早期離職を防ぎ、エンゲージメントを高めることで、長期的なリターン(利益)の最大化に貢献します。

入社後のオンボーディングやメンター制度に加えて、組織全体の「働きがい」を高めることが、定着率向上に大きな効果をもたらすことが実証されています。
働きがいと定着率の関係については、
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採用ROIの改善に役立つKPI設定のポイント

採用ROIという最終目標を達成するためには、そこに至るまでの各プロセスを計測する中間指標、すなわちKPI(重要業績評価指標)の設定が効果的です。
例えば、「採用チャネル別の応募数」「書類選考通過率」「面接通過率」「内定承諾率」といった選考プロセスごとの指標を設定します。 

また、「採用単価」や「内定までにかかる日数」も重要なKPIです。
さらに、採用の質を測る指標として「入社後1年定着率」や「ハイパフォーマーの採用比率」なども設定するとよいでしょう。
これらのKPIを定期的に観測し、目標値との乖離を分析することで、採用活動のどの段階に課題があるかを特定し、具体的な改善策を講じることが可能になります。

採用ROIを正しく活用するために知っておきたい注意点

採用ROIは採用活動の効果を測る上で非常に有用な指標ですが、その活用には注意が必要です。
まず、短期的なコスト削減のみを追求すると、採用の質が低下し、長期的に見て企業の成長を阻害する人材しか集まらないリスクがあります。 

また、成果(リターン)の定義が曖昧だったり、部署ごとに異なったりすると、指標の信頼性が損なわれるため、社内で明確な基準を設けて統一することが求められます。
採用ROIはあくまで全体像を把握するための一つのツールであり、数値だけでは測れない定性的な要素や、事業戦略との整合性といった多角的な視点を持って、総合的に採用活動を評価することが肝要です。

採用ROI向上において見落とされがちなのが、「従業員エンゲージメント」の重要性です。
エンゲージメントの高い組織では、採用した人材が早期に定着し、生産性も高まるため、長期的な採用ROIの大幅な改善が期待できます。

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まとめ

採用ROIは、採用活動をコストではなく「投資」として捉え、その費用対効果を客観的な数値で評価するための指標です。
この指標の算出には、外部コストと内部コストから成る「採用コスト」と、採用した人材が生み出す「採用による利益」を正しく定義することが不可欠となります。
 
ROIを向上させるためには、採用手法の見直しによるコスト最適化や、採用ターゲットの明確化によるミスマッチ防止、選考プロセスの効率化、そして入社後の定着支援によるリターンの最大化といった多面的なアプローチが求められます。
適切なKPIを設定して進捗を管理しつつ、短期的な数値に固執することなく、企業の持続的な成長に資する戦略的な採用活動を行う必要があります。

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