内定辞退防止の具体策|候補者の「安心感」を高める実践的アプローチ

更新日 2025.12.042025.12.03コラム

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優秀な人材の確保が難化する中、内定辞退は多くの企業が抱える課題です。
表面的な辞退理由は様々ですが、その根底には「この会社で本当に大丈夫か」という候補者の「安心感の欠如」があります。

この記事では、内定辞退の根本原因を理解した上で、選考の各フェーズで候補者の安心感を高め、入社意欲を維持する具体的な方法を解説します。
新卒・中途それぞれの特性も踏まえながら、実践的なアプローチを紹介します。

なぜ内定辞退は起こるのか?根本原因と表面的な理由

内定辞退には、給与や待遇、他社との比較といった様々な「表面的な理由」があります。
しかし、その根底には共通する本質的な問題があります。それが「安心感の欠如」です。 

候補者は選考を通じて、「この会社で本当に大丈夫か」「自分は活躍できるのか」「入社後に後悔しないか」といった不安を常に抱えています。
この不安が解消されないまま内定を迎えると、些細なきっかけで辞退につながります。 

安心感の欠如は、主に以下の3つの要素から生まれます:

関係性の不足 - 企業や社員との接点が少なく、信頼関係が築けていない
・ 具体性の不足 - 入社後の働き方やキャリアが具体的にイメージできない
信頼性の不足 - 企業の説明に客観的な裏付けがなく、本当かどうか疑念が残る

これらの要素を理解した上で、新卒・中途それぞれの特性に応じた対策を講じることが重要です。 

【新卒】内定辞退につながる主な理由

新卒の学生は、複数の企業から内定を得ているケースが多く、他社と比較検討した結果、より条件の良い企業や志望度の高い企業を選ぶ傾向にあります。

特に「企業の将来性や安定性」「社風や社員の雰囲気」といった点は、社会人経験がないからこそ重視されるポイントです。
面接や説明会で受けた印象と、内定後に行った情報収集の結果にギャップを感じると、不安から辞退につながることがあります。 

また、自身のキャリアプランが描けない、希望する配属先への確約がないといった、入社後のキャリアに対する漠然とした不安も大きな辞退理由の一つです。 

新卒学生の場合、社会人経験がないからこそ、「関係性」と「具体性」への不安が特に大きくなります。面接官や社員との接点が少ないと「本当に受け入れてもらえるのか」という関係性への不安が生まれ、入社後の働き方が具体的にイメージできないと「自分にできるのか」という不安につながります。

【中途】内定辞退につながる主な理由

中途採用における内定辞退は、よりシビアな条件面の比較によって引き起こされることが多いです。
給与や待遇、役職といった具体的な労働条件が、他社や現職の条件に劣る場合、辞退の直接的な原因となります。
また、現職の企業から強い引き留めにあったり、カウンターオファーを提示されたりして、心が揺れ動くケースも少なくありません。 

さらに、選考過程で聞いていた業務内容と、内定時に提示された内容に食い違いがあった場合、企業への不信感につながります。
自身のスキルや経験が本当に活かせるのかという懸念も、辞退を決断させる要因です。 

中途採用者の場合、即戦力として期待される分、「具体性」と「信頼性」への要求が高まります。「本当にこの環境で自分のスキルが活かせるのか」という具体性への疑問や、「企業が説明する成長性や働きやすさは本当なのか」という信頼性への疑念が、辞退の決断を後押しします。

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内定辞退を防ぐための具体的な対策【フェーズ別】

内定辞退を防ぐためには、内定を出してから対策を始めるのでは遅すぎます。
候補者が企業と最初に出会う選考段階から、内定承諾後に至るまで、一貫したコミュニケーションとフォローアップが不可欠です。 

各フェーズで候補者の心理状態は変化するため、それぞれの段階に応じた適切な防止策を講じることが、内定辞退を防ぐ上で極めて重要です。
ここでは、採用活動のフェーズ別に具体的な対策を解説します。 

選考中:候補者の不安を払拭し信頼関係を築く【関係性×信頼性】

内定辞退を防ぐには、選考段階から候補者との信頼関係を築くことが基盤となります。
選考結果の連絡を迅速に行う、面接官が威圧的な態度を取らず候補者の話を丁寧に聞くなど、誠実な対応を心がけることが大切です。
また、企業の魅力だけでなく、仕事の厳しさや課題についても率直に伝えることで、透明性が高まり信頼感が増します。 

現場で働く社員と話す機会を設けることも、候補者が抱える「実際に働く人の声が聞きたい」という不安の払拭に有効です。
一方的に選抜する場ではなく、相互理解を深める場として選考を位置づける姿勢が求められます。 

また、企業の魅力を伝える際には、自社の主観的な説明だけでなく、第三者機関による認定や受賞歴(働きがい認定、健康経営優良法人など)を示すことで、客観的な信頼性を担保できます。候補者の「本当にそうなのか?」という疑念を、確かな証拠で信頼に変えることができます。 

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内定出し:特別感を演出し、最終面接後から継続的にフォローする【関係性×具体性】

内定通知は、単なる事務連絡ではなく、候補者の入社意欲を最大限に高める絶好の機会です。
ただし、最終面接から内定通知までの期間こそ、候補者の不安が最も高まる時期です。
この空白期間を放置せず、以下のステップで継続的にフォローすることが重要です。 

【最終面接直後】
- 次のステップ(内定通知の時期、方法)を明確に伝える
- 面接での評価ポイントをフィードバックする 

【内定通知時】
- 社長や配属予定部署の上長から直接お祝いのメッセージを伝える
- オファー面談を実施し、給与や待遇の根拠を丁寧に説明する
- 「なぜあなたを選んだのか」を個別具体的に伝え、特別感を演出する

通知方法や内容について社内でルールを設けておくと、一貫した対応が可能です。 

内定後:企業の魅力を伝え入社後のイメージを具体化させる【具体性の強化】

内定を出してから入社までの期間は、候補者の気持ちが揺らぎやすい時期です。
内定辞退を防ぐには、この期間に接点を持ち続けることが不可欠です。 

【継続的な情報提供】
定期的にメールや電話で連絡を取り、社内報を送付したり、自社が取り上げられたニュースを共有したりすることで、企業の魅力を継続的に伝えられます。 

【時系列での具体的なキャリアイメージの提示】
配属予定部署の先輩社員との面談を設定し、入社後の働き方を時系列で具体的に説明します:
- 入社前:どんな準備をしておくと良いか
- 1か月目:どんな研修やOJTがあるか、誰がサポートするか
- 3か月目:どんな業務を任されるようになるか
- 半年後:どの程度の裁量や責任を持てるか
- 1年後以降:どんなキャリアパスがあるか 

このように段階的に示すことで、候補者は「●か月後には〇〇ができる」という具体的な活躍イメージを持つことができ、入社への期待感が高まります。 

内定承諾後:定期的なコミュニケーションで内定ブルーを防ぐ【関係性の強化】

内定を承諾した後でも、「本当にこの会社で良かったのか」という不安、いわゆる内定ブルーに陥る候補者は少なくありません。
この不安を放置すると、土壇場での辞退につながる可能性があります。
内定ブルーを防ぐためには、人事担当者やメンターとなる先輩社員からの定期的な声かけが有効です。 

近年では、内定者専用のSNSグループやコミュニケーションツールを導入する企業も増えています。
こうしたツールを活用し、同期との交流を促したり、入社前の課題を出したりすることで、会社への帰属意識を高め、孤独感や不安を和らげることができます。

内定辞退防止に効果的なイベント・施策5選

候補者との継続的な接点を持ち、入社意欲を高めるためには、各種イベントや施策の実施が非常に効果的です。
面接だけでは伝えきれない企業の魅力や文化を多角的にアピールし、候補者の不安を解消する機会となります。 

特に、社員や職場、同期となる仲間との交流は、候補者の入社への意思決定を強力に後押しします。
ここでは、オンラインでのセミナー開催なども含め、内定辞退防止に有効な具体的なイベントや施策を紹介します。 

社員との座談会でリアルな働き方を知ってもらう【関係性×信頼性】

面接の場では聞きづらい給与や残業、人間関係といったリアルな情報を、現場で働く社員から直接聞ける座談会は、候補者の疑問や不安を解消するのに非常に有効です。
特に、年齢の近い若手社員や同じ職種の社員が参加することで、候補者は自身の働く姿を具体的にイメージしやすくなります。 

座談会では、業務内容だけでなく、職場の人間関係の温かさを具体的なエピソードで伝えることが重要です。「困った時に先輩が声をかけてくれた」「チームで助け合いながら仕事を進めている」といった具体的な体験談を通じて、候補者は「この職場なら安心して働けそう」という実感を得られます。 

成功体験だけでなく、仕事の厳しさや乗り越えた経験などを率直に語ってもらうことで、企業への信頼感が高まります。
オンラインでの開催も可能で、場所を問わず多くの候補者に参加してもらえるメリットがあります。 

社内見学で職場の雰囲気を体感してもらう【具体性】

Webサイトや資料だけでは伝わりきらない、実際の職場の雰囲気を肌で感じてもらうことは、候補者の入社意欲を高める上で大きな効果があります。
社員が実際に働いている執務スペースや、休憩室、食堂などを見学してもらうことで、入社後の働き方を具体的に想像できます。 

社員同士が和やかにコミュニケーションを取っている様子や、集中して業務に取り組む姿を直接見ることで、文章では伝わらない企業の文化や空気感を体感し、入社への納得感を深めることにつながります。 

内定者同士の懇親会で横のつながりを強化する【関係性×具体性】

入社前に同期となる仲間と交流する機会を設けることは、内定者の帰属意識を高め、入社への安心感を与える上で非常に重要です。
内定者同士でコミュニケーションを取ることで、「一緒に頑張る仲間がいる」という心強さが生まれ、内定ブルーの防止にもつながります。
食事会やグループワーク形式のイベントなどを通じて、互いの人となりを知る機会を提供します。 

オンラインでの懇親会も有効で、自己紹介や簡単なゲームを取り入れることで、物理的な距離があっても一体感を醸成することが可能です。

体験入社や内定者アルバイトで業務理解を深める【具体性×信頼性】

入社前に実際の業務を体験してもらうことで、仕事内容への理解を深め、入社後のミスマッチを効果的に防ぐことができます。
数日間の体験入社や、長期休暇中の内定者アルバイトといった形で、実際のチームの一員として業務に携わってもらいます。 

候補者は自身のスキルが業務に活かせるか、職場のカルチャーに馴染めるかなどを実践的に確認できます。
企業側にとっても候補者の適性をより深く見極める機会となり、双方にとってメリットの大きい施策です。 

経営層との交流会でビジョンへの共感を促す【関係性×信頼性】

社長や役員といった経営層から、直接企業のビジョンや事業戦略、将来の展望について話を聞く機会は、候補者にとって大きな魅力となります。
トップの情熱や人柄に触れることで、企業理念への理解が深まり、「この経営者のもとで働きたい」という強い動機付けにつながる可能性があります。 

特に、企業の成長性や社会的な意義を重視する候補者に対しては非常に効果的です。
質疑応答の時間を設けることで、双方向のコミュニケーションが生まれ、企業へのエンゲージメントが一層高まります。 

この場では、ビジョンの説明だけでなく、客観的な実績や第三者評価も併せて示すことで、「本当にこの会社は成長しているのか」という疑念を信頼に変えることができます。
業績データ、顧客からの評価、業界での受賞歴などを具体的に示すことで、経営層の言葉に説得力が増します。

もし内定辞退者が出てしまった場合の対処法

どれほど万全な対策を講じても、内定辞退の発生を完全にゼロにすることは困難です。
しかし、辞退者が出てしまった後の対応こそが、次なる採用活動の成功と、将来の辞退を防ぐための重要な鍵を握ります。 

辞退という事実をただ受け入れるのではなく、それを貴重なフィードバックとして捉え、自社の採用活動を見直す機会とすることが求められます。
ここでは、内定辞退が発生した際の具体的な対処法を解説します。 

辞退理由を丁寧にヒアリングし、今後の採用活動に活かす

内定辞退の連絡を受けた際には、感情的にならず、まずは候補者の決断を尊重する姿勢を示します。
その上で、もし可能であれば、電話やオンライン面談などで辞退理由を丁寧にヒアリングすることが極めて重要です。
「今後の採用活動の参考にさせていただきたい」と伝え、候補者が本音を話しやすい雰囲気を作ります。 

他社のどのような点に魅力を感じたのか、自社の選考プロセスのどこに懸念があったのかなどを具体的に聞き出すことで、自社の採用活動における客観的な課題が浮き彫りになります。 

採用プロセス全体を見直し改善点を発見する

一人の辞退理由だけでなく、複数の辞退者の意見やデータ、さらには選考途中で離脱した候補者の傾向も踏まえて、採用プロセス全体を多角的に見直します。
求人広告の打ち出し方、書類選考の基準、面接官の対応や質問内容、オファー面談での条件提示、内定後のフォローアップ体制など、各フェーズにおいて改善すべき点がないかを洗い出します。 

辞退理由として多く挙がった項目は、優先的に対策を講じるべき課題です。
このPDCAサイクルを継続的に回すことが、採用力の強化に直結します。

まとめ

内定辞退を防止するためには、候補者の「安心感」を選考の全フェーズを通じて継続的に高めていくことが不可欠です。 

3つの重要ポイント】

・関係性を築く- 企業や社員との信頼できる接点を増やし、「受け入れられる」安心感を与える
具体性を示す - 入社後の働き方を時系列で具体的に示し、「活躍できる」イメージを持たせる
信頼性を担保する - 客観的な証拠で企業の魅力を裏付け、「本当にそうだ」という確信を与える

新卒・中途それぞれが抱える不安の性質を理解し、選考中から内定後まで一貫してこれらの要素を意識した対応を行うことで、候補者の入社意欲を維持し、内定辞退を効果的に防ぐことができます。 

辞退が発生した場合は、その原因を「安心感のどの要素が不足していたか」という視点で分析し、次の採用活動に活かすという継続的な改善サイクルを回すことで、企業の採用力は着実に強化されていきます。

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