「働きがいのある会社」ワークライフバランスの取り組み方
更新日 2018.10.042017.02.17オピニオン
毎年公表されている「働きがいのある会社」ランキング。その最新版である2017年ランキングを見ていくと、ワークライフバランス推進の取り組み方に大きな違いがあることが分かってきました。「働きがい」はどう高めていけばよいのか、その秘訣を解き明かします。
Great Place to Work®(以下GPTW)では、毎年「働きがいのある会社」の調査を行い、一定の水準を満たしていると認められたベストカンパニーを発表しています。今年も、2017年版の日本の「働きがいのある会社」ランキングを日経ビジネス(2017年2月13日号)誌面で公開しました。
今回の調査では、前回の321社を大きく上回る379社の企業が参加。そのうち、100社が「働きがいのある会社」として選定されています。
昨今、「働き方改革」が注目を浴びていることもあり、ワークライフバランスの取り組みに力を入れる企業が増えています。女性の社会進出や外国人の採用、働く価値観の多様化などが進む中、優秀な人材の採用やリテンション(人材の維持、確保)のためにも、ワークライフバランスを推進していくことは避けて通れない道となっています。
しかし、今回調査の大規模部門の結果において、「働きがいのある会社」選出企業(ベストカンパニー)と選出外企業(ベストカンパニー外)を比較すると、「働きがい」に関する全般の評価に比べて、ワークライフバランスに関する項目には大きな差異が表れていません。
それではワークライフバランスを推進することはあまり重要ではないのかというと、そんなことはありません。実際に「働きがい」の高いベストカンパニーは、従業員が仕事とプライベートを両立させながら中長期的に働き続けられる環境を十分に整えています。つまり、「働きがい」を高める上でのベースとなっているものと考えられます。
では、「働きがい」の向上につながるワークライフバランスとは、一体どんなものなのでしょうか。
GPTWが実施した「働きがいのある会社」調査結果を分析したところ、ベストカンパニーに選出されている企業の取り組みから3つのポイントが見えてきました。
ポイント1 働く「時間」の選択肢を増やす
ワークライフバランスを推進していく上では、勤務時間の自由度を高めることが重要です。残業時間の削減やフレックスタイム制の導入などに加え、1日3~4時間といった超短時間勤務制度を採用する企業も増えてきています。こうした制度は、育児休暇や介護休暇からの復帰を支援する制度としても活用されており、特にキャリアの断絶を防ぐことに高い効果があります。
ベストカンパニーでは、休暇制度も多様です。有給休暇取得の奨励やリフレッシュ休暇の推進はもちろん、震災復興等を目的としたボランティア休暇や誕生日休暇など、様々な目的での休暇取得が奨励されています。
ポイント2 働く「場所」の選択肢を増やす
働く「時間」に加え、働く「場所」の選択肢を増やすことも大切です。在宅勤務は、既に多くの企業で導入されており、徐々にその数も増えてきました。さらに利用場面を増やしていくために、ビデオ会議システムも導入され始めています。介護離職の予防に効果がみられ、マネジャーが在宅勤務を取得するよう積極的に推進している企業もあります。中には、自社拠点内外に従業員が働く場所を自由に選べるサテライトオフィスを設置する企業もあり、介護などで実家に帰らなければならない人が実家近くのオフィスで働き続けられるようになっています。
このように、働く「時間」と「場所」の選択肢を増やしていく制度は、「働きがいのある会社」の多くが取り組んでいます。しかし、こうした制度がすんなりと現場に受け入れられてきたわけではありません。制度を充実させたとしても、制度を利用しにくい雰囲気があったり、利用したときに不利益を被るのではないかという疑念があったりすると、実際にワークライフバランスが推進されることはなく、「働きがい」も向上しません。
「働きがいのある会社」の中には、元々がむしゃらに働くカルチャーがあり、度を越した長時間労働が当たり前のように行われていた企業もあります。働く「時間」や「場所」の選択肢を増やすことは、これまでの働き方の習慣が変わることでもあり、現場の管理職からの反発も大きかったようです。
ベストカンパニーでは、こうした課題を克服していくために経営層が一丸となって、組織の風土改革や管理職の意識を変えていくことに取り組んでいます。「働きがいのある会社」では、こうした意識改革の取り組みが際立っているのです。それが、「働きがい」の向上につながるワークライフバランス推進の3つ目のポイントです。
ポイント3 経営層が職場風土改革に本気で取り組む
「働きがいのある会社」では、ワークライフバランスに対する意識改革のために、経営層から従業員に対し、会社のビジョンや方針と共にワークライフバランスを重視する思いや考えを伝えています。中には、従業員の家族に対して、ワークライフバランスを推進することを宣言する手紙を送付している企業もあります。
また、残業時間や有休取得率などワークライフバランスに関する数字を可視化し、経営層が共有する取り組みも行われています。その進捗状況をもとに、今後の取り組みを経営層が話し合い、現場にメッセージを送っています。その他、全従業員への定期的な有給休暇取得状況の配信、有給休暇取得に関する現場の管理職への啓蒙活動、強化月間の設定によるキャンペーンなどが展開されています。
職場内では、ワークライフバランスに関するコミュニケーションも重視されています。例えば育児休暇からの復職の際、労働可能な時間帯だけではなく、保育園の迎えの時間、家族のサポート体制など育児の状況を共有した上で、会社として何が支援できるのかを話し合っている企業もあります。こうした職場では、「大事な会議の前に子供が急病で早退をしなければならなかったとき、上司や同僚がサポートしてくれた」といった声が聞こえてきます。
ワークライフバランスの推進から「働きがい」の向上へ
GPTWでは、「働きがい」を信頼・誇り・連帯感と定義しています。「働きがいのある会社」では、ワークライフバランスを推進することは「働きがい」を高める一つの手段として捉えられています。ワークライフバランスを推進することによって、従業員は自分たちが尊重されていると感じ、経営層や会社への信用が高まります。また、ライフステージに合わせて誰でも活躍できる場が作られることで従業員間の公平感が醸成され、職場内で従業員同士がお互いの状況を共有し、支え合う職場風土が形成されていくのです。
ワークライフバランスの推進によって「働きがい」を高めていく、新しい組織運営の在り方が今必要とされており、これが「働き方改革」の本丸といえるでしょう。
※ 本コンテンツは日経BP社の許可により日経ビジネスオンラインの広告(初出:2017年2月~5月)から抜粋・再編集したものです。禁無断転載 (C)日経BP社