これからの時代に求められる働きがい

更新日 2020.01.232019.03.28対談

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2019年2月27日、「働きがいのある会社」表彰式にて明治大学大学院教授の野田稔氏とGPTWジャパン代表岡元の対談が行われた。
GPTWは、ベストカンパニーの「働きがいのある会社」調査結果に見られた特徴的な傾向をデータと共に紹介。今、日本企業の「働きがい」はどうなっているのか?そしてこれからの企業のリーダーに求められるものとは何なのだろうか?両者が熱く語り合った。

「信頼」が働きがいのベース

talk_190329_01.jpg岡元利奈子(以下、岡元) 働きがいの重要性について、野田先生とお話ししていきたいと思います。その前に、おさらいの意味も込めまして、GPTWの「働きがい」の考え方をご紹介させてください。

GPTWでは「信頼」をベースとした「働きがいのある会社モデル」を提唱しています。このモデルに基づき、“従業員へのアンケート”と“会社へのアンケート”の2種類のアンケートをスコア化し、「働きがいのある会社」ランキングを発表しています。従業員のアンケートでは、「信用・尊敬・公正・誇り・連帯感」という5つの要素について聞いています。信用は「従業員が経営・管理者層を信用しているか」という意味。尊敬は「従業員が経営・管理者層から人間として尊敬、尊重されていると感じるか」という意味です。「公正」は文字通りフェアな職場かどうかということ。これらに仕事や会社への「誇り」と仲間との「連帯感」を加えて、働きがいを数値化しています。労働条件や環境などの「働きやすさ」だけではなく、モチベーションの向上や動機づけなどの「やりがい」も調査しているのです。

野田稔氏(以下、野田) 1960年代、アメリカの臨床心理学者、ハーズバークが動機づけ・衛生理論を唱えました。その中でも言われていることですが、働きやすさを高めると不満は減ります。ただし、満足につながるかというと違うんですね。やりがいを感じられなければ、満足できないのです。だから、GPTWの目指す方向は正しいと思います。

前年と比較し、全体的に「働きがい」は低下傾向

岡元 続いて、GPTWの調査にご参加いただいたお客様のデータを見ていきたいと思います。最初のテーマは従業員へのアンケートの前回と今回のスコアの比較です。スコアの変化が±2に収まる場合は「大きな変化なし」とし、それより大きい変化があった場合を「改善傾向」あるいは「低下傾向」として分析しました。その結果、大規模、中規模、小規模いずれの部門でも低下傾向の企業の割合が改善傾向の企業の割合を上回りました。また、規模が大きくなるほど、1年間でスコアが大きく変化する企業の割合は少なくなりました。

 

従業員へのアンケート 前回との変化(2018年版→2019年版)

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野田 非常に面白い。やはり大きな会社のほうが、スコアが安定しているということですね。ただし、生活習慣病のようにゆっくりとゆっくりと低下することもある。それと比べて中規模・小規模は、小さな子供の病気のような感じですね。すぐに悪化したり、改善したりする。いずれにせよ、高い働きがいを維持し続けることは大変です。10年連続で表彰されているベストカンパニーは本当に素晴らしいと思います。

「働き方改革」の成果はみられた一方、「信用」と「誇り」が低下

岡元 では、具体的にどの項目が上がったのか、もしくは下がったのか見ていきましょう。まず改善が見られた設問は「この会社は仕事と生活のバランスをとるように推奨されている」「必要な時に休暇が取れる」「労働環境が安全で衛生的である」などでした。

 

前回より改善が見られた設問(上位5設問)

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野田 働き方改革の成果が表れていますね。

岡元 続いて低下傾向が見られた設問です。「経営・管理者層はこの会社にあった人を採用している」「私はこの会社で長く働きたいと思う」「会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う」「経営・管理者層は企業経営する能力が高い」「この会社の人たちは仕事を達成するために努力を惜しまない」これらはすべて、「信用」か「誇り」に関する設問です。

 

前回より低下が見られた設問(下位5設問)

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野田 ここ最近、経営者の能力やIntegrity(誠実さ)が疑われる事件もありましたね。それともう一つ、私が思うのは、「今やっている仕事をコツコツやっていてもこれ以上成果が上がらないんじゃないか。新しい価値創造をしないとダメなんじゃないか」と感じている方が増えているんじゃないかということです。だからこそ、今の経営・管理者層の体制や組織の体制に変化を求めているということが表れた結果ではないかと思います。

これからのベストカンパニーとGPTWに期待すること

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岡元 野田先生はベストカンパニーのリーダーたちにどんなことを期待したいですか?

野田 今ここにきて、日本の企業は自信を失っている気がするんですよね。「今までと同じことを努力しても、これ以上高い成果を上げられないんじゃないか」と感じているのではないかと思います。だから、リーダーの方々には新しい価値を生む方向にマネジメントの舵をきってほしいです。言い換えると、イノベーションを基軸に置いてほしい、ということですね。仕事を通じて「達成感」や「社会への価値提供」を実感できるように導いていただきたいと思います。

また、三菱総研の研究で、活性化した組織とそうではない組織の比較をした結果、活性化した組織には一体感があるとわかりました。社員はお互いを信頼し、目線は外に向いているんです。つまり、社会貢献などに関心を持っている。内側がまとまっていて、外側を向いているのが活性化した組織の特徴なんです。

岡元  GPTWへのリクエストはありますか?

野田 GPTWは人間ドックのようなイメージを持っています。人間ドックには脳ドックがありますよね。企業における脳ドックの対象者は経営者。ようは、働きがいのある会社をけん引するのにふさわしい経営者かどうか、その資質を見るものがあってもいいかもしれません。ただ、医師が脳ドックを受けることに反対することもあります。もし動脈瘤(どうみゃくりゅう)が見つかったら気になるだろう、と。手術して危険な場合もあるので、知らない方がいいこともあるというのです。だから、企業の脳ドックをやるにしても、よく議論したほうがいい。いずれにせよ、経営者のチェックは必要だと思いますが、ダメなところを指摘するだけではなく、処方箋を渡せるようなものがいいですね。

岡元 ありがとうございます。処方箋をセットで提供できるような脳ドックのやり方を検討してみたいと思います。

野田 ぜひ、ご一緒できる部分があれば、私も考えたいと思います。

岡元 大変、心強いです。野田先生、今日はどうもありがとうございました。

明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔氏

1981年一橋大学商学部卒業 株式会社野村総合研究所入社。(株)リクルート新規事業担当フェロー、多摩大学教授を経て現職に至る。リクルートワークス研究所 特任研究顧問を兼任。組織論、リーダーシップ論に関する書籍も多く、人材マネジメント分野の開拓者の一人である。

Great Place to Work® Institute Japan 代表 岡元 利奈子

大学卒業後、人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職を経験後、人事コンサルタントとして、人事制度設計・多面評価制度・採用選考設計・従業員意識調査などを行う。その後、海外現地法人に出向し、コンサルティングビジネスの立ち上げ支援、新サーベイ開発のプロジェクトリーダーなどを経験し、2014年より現職。

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