社員全員で新たなバリューをつくり企業文化をアップデート
フラットな組織と透明性のあるコミュニケーションが働きがいを育む
更新日 2021.01.082021.01.08対談
業界業務の経験豊富な「その道のプロ」に、1時間からピンポイントに相談できる「スポットコンサル」を展開し、日本最大級のナレッジプラットフォームを運営する株式会社ビザスク。2020年版GPTWランキング小規模部門では14位、女性ランキング小規模部門5位に選出されています。今回は執行役員 PF事業部事業部長 七倉壮氏に『ビザスク流「自由」を実現する組織づくり』と題してお話しいただきました。後半ではGPTWジャパン代表・荒川との対談『成長企業における「働きがい」向上の壁と乗り越え方』をご紹介します。あわせてご覧ください。
※本記事は2020年12月10日に開催した特別セミナー『世界を舞台に成長する企業を支える「働きがい」のある組織づくりとは』の講演・対談抄録です。
目次
データベース化した知見を挑戦とつなぎ、世界中のイノベーションに貢献する
全社員の働く環境を整えるため、福利厚生に「家事代行サービス」を導入
関連メンバーと目標を共有し、期末に振り返るための「ピアコメント」
<対談>成長企業における「働きがい」向上の壁と乗り越え方
株式会社ビザスク 七倉 壮氏 × GPTWジャパン代表 荒川 陽子
データベース化した知見を挑戦とつなぎ、世界中のイノベーションに貢献する
私たちのビジョンは「知見と、挑戦をつなぐ」です。組織や世代、地域などバリアやハードルを超え、知見をデータベース化してつなぐことで世界中のイノベーションに貢献し、世界一のナレッジプラットフォームをつくることを目指しています。
依頼する企業と有識者の知見を1時間からのインタビューでつなぐ「スポットコンサル」が事業の中心であり、例えば「新規事業を始めたい」「社内の改革をしたい」などのニーズに対して、アドバイザーの知見をマッチングしています。マッチング実績は累計で7万件超。アドバイザー登録も国内外12万人を突破。あらゆる業界、職種の知見を持つアドバイザーを集め、データベース化することで、ビジネス知見とニーズのマッチングを日々追求しているところです。
2020年1月には初の海外オフィスをシンガポールに構え、グローバル化をさらに推進しています。今後も北米やヨーロッパの主要地域にオフィスを展開していく予定です。社員数は現在約130名で、30代の比率が大きく、子育てをしているメンバーもいます。退職者数が非常に少ないのも特徴です。これはスタートアップ企業の中では珍しいのではないでしょうか。
社員が議論してつくった新バリュー「自由を自覚しているか」
私たちが大切にしているバリューは6つあります。「初めから世界を見よう」「一流であることにこだわる」「圧倒的な一番になる」「プライドはクソだ」「広める努力は全員で」「自由を自覚しているか」です。その中でも特に特徴的なものは「自由を自覚しているか」。これは、全社合宿中につくったものであり、私たちの組織のカルチャーを最も表す言葉の一つだと思っています。
全社合宿では組織が拡大していく中で、どんな問題意識があるのか共有しました。風土やカルチャー、行動指針を組織の状態に合わせて新しくするにはどうしたらいいか、グループでセッションしたのです。みんなで議論を重ねた結果生まれたのが、「自由を自覚しているか」でした。これの意味するところは、「一歩踏み出すか出さないか、発信するかしないかという決定は、アクションを起こす側の責任と自由であることを認識しましょう」ということです。バリューを考えるだけではなく、その解釈までみんなで考えて大切に守っています。
従業員が組織づくりに主体的に参加する風土をつくるために重要なのは情報共有です。風通しが良くオープンであることが大前提。今年は東証マザーズに上場をしたこともあり、情報の取り扱いが難しいタイミングではありましたが、事業計画や実績、詳細なKPIについて全社で共有しています。月曜日の朝10時から全社週次ミーティングを開催し、そこで事業計画と細かな進捗などの内容を共有。コミュニケーションツールを使う上でのルールもつくりました。Slackを使うときも原則としてDMをNGとし、オープンな場で議論することを前提としています。
全社員の働く環境を整えるため、福利厚生に「家事代行サービス」を導入
リモートワークにも早くから取り組み、コラボレーションや気づきの観点から原則は対面コミュニケーションを大事にしつつも、リモートでもパフォーマンスを発揮できる環境づくりに取り組んできました。特徴的な福利厚生もいくつかあります。まずは「自己啓発休暇」。これは入社半年から年1回いつでも5連休(土日含め最大9連休)を取得できるという制度です。正社員であれば誰でも掃除ならば月2回、料理ならば月1回の家事を会社全額負担でお願いできる「家事代行サービス」はメディアからも注目されています。子育て中の社員向けのサービスとイメージされるかもしれないのですが、「正社員なら誰でも利用可能」というところにこだわりました。家事の負担を減らすことでより仕事を頑張れる、プライベートな時間を充実させられる。子育て中の社員はもちろんですが、そういった社員が急に稼働できなくなってしまう時にサポートしてくれる社員含め、すべてのメンバーのが活用できる制度かどうかを考えています。
このほかにも制度はいくつかありますが、基本的な考えとしては「全員が働く環境をいかに整えられるか」です。これを念頭に置き、これからもサポートを充実させていきたいと考えています。
関連メンバーと目標を共有し、期末に振り返るための「ピアコメント」
評価報酬制度にも工夫を加えています。私たちは年2回のレビュー、評価の機会を用意しています。メインは年度末で、半期のレビューで進捗を補足しながら昇給のチャンスをつくるという流れです。
当社オリジナルの制度として「ピアコメント」というものがあります。その期に業務で関連したメンバーの中からコメントをもらいたい人を3名選び、自分の当期の目標を事前に共有。どんな目標を設定していたのかを参考に、ポジティブに評価をするのです。さらに「次の目標としてこれはどうでしょうか」という提案も3名のメンバーから行います。出てきたコメントは、事業部グループ内において実名で共有。そして、このコメントを参考に、当期の振り返りと来期の目標設定を実施し、それをベースとして次の評価につなげていくという仕組みです。どこがよかったのか、どこに改善の余地があるのか事業グループ全体で振り返ることで、課題や成長機会の発見、日々の振る舞いの変化につながってくれればと願っています。「ピアコメント」は選出者から感謝を感じられるものもありますし、自覚していなかった能力について評価されたことが、新しい気づきになっているようです。
ご紹介してきた通り、働きがいを高めることにつながる仕組みを行ってきました。プロダクトやサービスを改善し続けるのと同じように、これからもカルチャーや制度についても仮説と検証を繰り返して、進化させていきたいと考えています。
<対談>成長企業における「働きがい」向上の壁と乗り越え方
株式会社ビザスク 七倉 壮氏 × GPTWジャパン代表 荒川 陽子
IPOの準備でバックオフィスの従業員が輝いた
荒川 ビザスクは今年3月にIPOをされました。「働きがいのある会社」の要件に照らしてみたときどのような変化がありましたか。これらを実現する職場においては色濃い価値観、バリュー、優れたリーダーシップが機能しており、イノベーションが起きて、結果として財務的成長が実現すると考えています。いかがでしょう、IPO後にお感じになられていることはありますか。
七倉 IPOを進めるプロセスの中では、バックオフィスや監査体制の強化を行い、証券会社さんや監査法人さんと連携して準備をしていくことになります。ここで、バックオフィスのメンバーが輝きますよね。IPOに関していえば、明らかにバックオフィスが輝きましたし、このプロセスの後に全社MVPを受賞したのは、当社の上場を担当したメンバーでした。
荒川 一人ひとりが輝いたわけですね。
七倉 ファイナンスの面だけ着目しても、働きがいを高めることにつながります。スタートアップの方はご存知かもしれませんが、IPOをするとストックオプションの付与上限が上がるため、インセンティブとして配りやすくなります。また、上場したことにより知名度が上がり、クライアント、アドバイザーも増えました。世の中の注目が高まったのかなと実感しているところです。私たちは世界で勝てるスタートアップを目指していますので、一つのステップとしてIPOは重要な経験になったのではないかなと感じています。
荒川 ストックオプションや知名度の部分でいくとおそらく「誇り」のところかなと思います。仕事の価値が認められたり、貢献実感を得られたり、というところが強化されたのではないでしょうか。
組織拡大の中で気をつけるべきは「透明性」の確保
荒川 続いて、「従業員の増加に伴う働きがいの壁」というテーマでお話したいと思います。御社は現在約130名の規模で、新卒採用もスタートし、拡大基調であると思います。最近我々が発表した調査によりますと、300名以下の成長企業は、企業規模が大きくなるプロセスにおいて、働きがいが下がるリスクを秘めていることがわかりました。御社の場合、変化の兆しはございますか。
七倉 組織が大きくなるにつれて、情報の透明性の確保が難しくなることは予見していました。そのため30名、50名、100名のフェーズで先んじて打ち手を考えてきています。透明性は、会社に対する帰属意識やオーナーシップを高める上で重要です。組織が拡大するに連れて難しくなるのは事実ですが、それに対してどうしたら透明性を上げられるか、10人のときと100人のときではやるべきことが違うと思うのです。
荒川 おっしゃる通りですね。
七倉 そのため情報の共有の仕方を工夫してきました。組織の階層が増えていくと距離感が大きくなるのは良くあることだと思うのですけれど、それを避けるためにできるだけ横に広げていくことを今はしていますし、これからも続けていきたいと考えています。
荒川 御社の場合は、社長がいて、事業部長がいたらその下は全員メンバーなのですか?
七倉 メンバーもいますし、チームリーダーもいます。
荒川 普通ですと、事業部長の下に部長がいて、リーダーがいて、メンバーがいるというイメージがありますが、できるだけ複層化をしないことで情報の透明性やスピードも担保しているというわけですね。
コロナ禍の壁を乗り越えミッション・ビジョン・バリューを浸透させるには
荒川 続いて最後のテーマに参ります。「テーマはミッション・ビジョン・バリューの浸透のための取り組み」です。今まさにコロナ禍の中で、テレワーク中心の働き方になっている企業が非常に多いです。6月に我々がアンケート調査を実施した結果、ワークライフバランスは充実したのですが、ビジョンや方向性、透明性や社内の一体感、コミュニケーションは少し減ったよと答える人が目立ちました。御社はこのコロナ禍でどうやってこのビジョンバリューを浸透させているのか教えていただけますか。
七倉 テレワーク中心の働き方でも、できるだけ顔を合わせているときのようなコミュニケーションの機会をどうやってつくるのか、この半年間試行錯誤を続けています。緊急事態宣言中は政府の対応方針に従い、その後様子を見ながら出社比率を調整してきました。そのような中で、毎月、レビューシートに記された内容をもとに振り返りをしているのですが、そこではバリューについても書いています。バリューに基づいて自分がどのような行動ができていたのか、その結果としてどんなことが起きたのか、この振り返りを1on1のミーティングの中で確認していくプロセスが大事です。この取り組みについてはメンバーによってグラデーションがあるかもしれませんが、地道な1on1やメンター・メンティーとの会話の中でつくることが結局は近道なのかなと。
荒川 1on1や毎月のレビューの中で、バリューを中心に置きながら自分の行動を振り返り、やることを決めているのですね。
七倉 例えば私の場合は、目標の中に一つのバリューを置いていて、今回のセミナーのように、オープンな場で発信することを目標として置いていました。
荒川 なるほど。ちなみに、4月以降のテレワークで、意識的に会社としてバリューやミッションの発信の機会を増やしたりはしていたのでしょうか。
七倉 バリューやミッションの発信を意図的に増やしたわけではないですが、シャッフルランチのような制度で、事業部を超えたメンバーの接触を増やすことは意識的に行いました。シャッフルランチはオンラインでも行えるようにし、会社としてテレワークでもコミュニケーションの機会を増やすという明確な狙いを持って実施しています。
荒川 やはり意図的にやっていかないと薄れていくという危機感があるのですが、なかなか具体的な一歩を踏み出せないという相談を弊社にいただくことがありました。御社はランチや振り返りの機会を使いながら増やしていたということですね。参考になるお話をありがとうございました。