NewNormal時代に働きがいのある会社をつくるには?

更新日 2021.04.142021.04.14対談

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リクルートワークス研究所所長の奥本氏とGPTWジャパン代表の荒川が、ベストカンパニーの事例から得られた示唆や調査データを踏まえて対談しました。NewNormalへのシフトを考えている企業必見の対談です。

※本記事は2021年3月9日に開催した「働きがいのある会社」ランキング1位企業が語る事例セミナー ~「働きがい」の高い企業は、コロナ禍を乗り越えNewNormalへのシフトに成功している!~の講演抄録です。

事例セミナー登壇企業のカルチャーの地盤、厚みを感じた

荒川 対談の前に奥本さん一つご質問です。セミナー登壇企業の事例を聞いて、どんな感想をお持ちになりましたか?

奥本 各社のカルチャーの地盤、厚みを感じましたね。それがあるから効果的な施策を打てるし、働きがいが生み出されているのかなと思いました。カルチャーやフィロソフィー、クレドをトップが信念を持って伝えていることが印象的でしたね。

荒川 確かにおっしゃる通りでした。では早速ですが、「NewNormal時代に働きがいのある会社をつくるには?」というテーマで対談に移っていきたいと思います。まず、働きがいのある会社のモデルをあらためてご紹介させてください。

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荒川 このモデルに基づいて調査に参画いただいた企業の働きがいを測らせていただいております。そして、その結果をランキング形式で毎年発表しています。

コロナ前とコロナ禍をまたぐタイミングということもあり、どんな違いがあったのかも調査しました。総合的な働きがいが下がってしまった企業と、そうではない企業と比較すると、「尊重」と「信用」という項目に違いが見られました。

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ということで、今回は奥本さんと「尊重」と「信用」という2つのポイントでお話しできればと思います。

※ 2021年版調査・ランキング傾向分析の完全版はこちら新しいタブまたはウィンドウで開きますからダウンロード頂けます。

「尊重のマネジメント」はどうすれば実現できるのか

荒川 それでは一つ目のテーマ「尊重のマネジメント」から。管理型マネジメントから脱却し、自立的に働く従業員を育成するにはどうしたらいいでしょうか。

奥本 実はワークス研究所でも約1万人に対して、コロナ禍において心理的な条件がどう変わったのか調査しています。その結果、コロナ禍では職場のつながりを感じにくく、働きがいに対してマイナスに傾きやすいことが見えてきました。仕事の満足であったり、成長の実感なども低下傾向です。

反対にコロナ禍で上がったものもありました。仕事のストレスなどは改善されていたんです。

荒川 なるほど。

奥本 調査で「ひどく疲れている」と答えた人の比率が3割くらいから2割に。また「頭痛やめまいがする」という人の割合も減少しています。こうした改善を促しているのもある意味で職場のつながりなんですね。

職場のつながりが安心感や信頼、成長などを担保している反面、ストレスによってマイナスの影響を与えていたことも考えられるわけです。先ほど荒川さんの解説にあった、職場で健康に安心を感じて働くことができる社員尊重の環境づくりは、「つながり」をどうマネジメントしていくかが鍵になると思っています。

仕事とキャリア、会社に対するオーナーシップをどう育てるか

荒川 面白い結果ですね。ストレスが減る人もいる一方で、テレワークによって長時間労働が問題化するパターンもあるので、管理型のマネジメントも必要なのかなとも感じるのですが、どうお考えですか。

奥本 リモートワークでは自律的なマネジメントが求められると思います。最近は「ジョブ型」という言葉も頻繁に出てきますけれども、個人がミッションをしっかり自覚して、自律的に働いてもらいたいと会社は考えているはずです。

自律性の高い社員の育成には三つの観点があるのではと考えています。一つは、仕事にオーナーシップを持つことです。もう一つは、キャリアに対するオーナーシップです。どんなキャリアをつくるのか。それは会社の中でどうするのか、会社の外でどうするのかというオーナーシップですね。

三つ目の観点は会社に対するオーナーシップです。このバランスが取れていないと、自分がよければいいという方向になりがちです。

仕事に対するオーナーシップが強いと、「自分の仕事をしっかりやっていればいいや」となってしまうかもしれない。ただ、キャリアに対するオーナーシップがあると長期的に見れば、これはやっておきたいというコミットメントが生まれてきたりする。

会社に対するオーナーシップがあれば、会社のミッションのため、自分の仕事の範囲を超えてお客さまのためにやろうという意識が生まれます。この三つのエッセンスをどう高めていくのかは、各社の事例の中にも詰まっていたのではないでしょうか。

荒川 個人のオーナーシップをバランスよく高めるという観点でマネジメントは関わっていくべきだし、個人も意識していくべきということですね。

奥本 例えば、仕事へのオーナーシップを持ってもらうためには、安定的にその仕事に取り組めるとか、希望する仕事への配置やローテーションを考えるなど、制度的な面からもサポートできると思います。

キャリアのオーナーシップであれば、自分自身が次にどのような仕事にチャレンジして専門性を高めていくかを明確にして日頃からコミュニケーションしておくといいと思います。会社のオーナーシップも同様ですね。経営の情報を開示して、ビジョンを共有することがとても大事です。

そうした取り組みの多くは、働きがいを維持し、高めるための取組みと重なります。3つのオーナーシップを醸成するマネジメントを通じて、働きがいのある会社づくりも実現できるのではないでしょうか。

相互信頼を構築するコミュニケーションの鍵は「信頼の束」

荒川 ありがとうございます。では続いて「相互信頼を構築するコミュニケーション」についてお話ししたいと思います。コロナの影響が続く中で、どういうタイミングで、どういう観点でコミュニケーションを設計したらいいのか、ご知見を伺いたいです。

奥本 みなさんは「彼に信頼をおく」であるとか「人から信頼を得る」であるとか、言葉として使うと思うのですが、信頼って自分から相手におきにいくものだと思うんですね。

例えば、「彼は必ず業績を上げる」というのも信頼の一つですが、それだけじゃなくて彼は嘘をつかないとか、彼は家庭をすごく大事にするなど、人には沢山の信頼のポイントがあります。このような相手に信頼をおくポイントをたくさん発見し合うことが、相互信頼につながるのかなと思っています。

荒川 そう考えると、プライベートな話を含めた雑談などが距離を縮めてくれるかもしれませんね。

奥本 信頼が束になれば「彼はここだけはダメだけど、ほかに信頼できるところがあるからいいか」と許し合えると思うんですよね。束のうちの1本、2本が切れてもまあしょうがないなっていう感じになる。ですから色々な方面からの会話を通じて信頼関係を築くことは大事ですね。

会社も同じで、財務的な内容だけでなく、ビジョンやお客さんに届けたい価値など、多様な価値があります。切り取り方の側面によって色々な価値を導き出すことは、社員との信頼をつくる意味で大きなテーマですね。

荒川 相互信頼にはまず相互理解がベースにあって、いろんな価値をいろんな切り口で、みんなで味わっていくみたいな、そんなイメージですかね。

奥本 そうです。今回発表した3社もものすごく力を入れてらっしゃいましたよね。

荒川 Cisco様の感情のコミュニケーションであるチェックインもそうですし、フラッグシップオーケストラ様の自己紹介の動画もそうでした。コンカー様は高め合うフィードバック文化に取り組まれていましたね。

安全のためのリモートワークから、成果を上げるためのリモートワークへ

荒川 リモートとリアルの使い分けについても色々な会社から質問されるのですが、どういう運用が理想だと思われますか。

奥本 今はまさに従業員の安全を確保するためのリモートワークですが、次に考えるべきは、成果を上げるためのリモートワークですね。ここを本気で考えていく必要があると思います。そこで基準となるのは従業員の働きがいの部分と、業績と生産性だと思います。

フランスなどはリモートワークが雇用者の権利として認められているくらいの先進国なんですけれど、週に2日くらいリモートワークの日をつくると非常に生産性が高まるという研究があるそうです。ただし、その場合のリモートワークは今の緊急避難的なリモートではなく、集中的な業務を家でやっているんですね。朝から晩までリモート会議が入っているのとは違うわけです。集中して取り組む必要がある業務の切り分けや、リモートワークのガイドラインを企業がどこまで出せるのが鍵なのかなと思います。

NewNormal時代に働きがいのある会社をつくるためのヒント

荒川 それでは最後のテーマです。NewNormalで“いきいき”働くために、どんなことが大事になると思われますか。

奥本 働きがいを重視した経営をすることが、会社経営の本質だと思います。このコロナ禍で、経営者は経済的な利益や売上の一部を犠牲にしても、従業員の安全を取るという選択をしました。コロナ禍で得た視点をNewNormalの中でも反映していくことが大事なのかなと。

リモートワークにしても、コミュニケーションの再設計にしても、従業員のことを考えて本当に色々な取り組みが行われました。ここで生み出された様々な取組みのオプションを棄却せず、いかに活かしていくか考えて、次の取り組みを考えられるのが理想ではないでしょうか。

個人の主体性にかける経営や人の可能性にかける経営は、予測がつきにくくコントロールが難しいんです。管理の指標やKPIで縛って確実にそのレベルを上げていくのなら予測がつきやすいですし、個人間のブレもなくなるため経営のしやすさがあるんですね。

では人の可能性や個人の主体性にかける経営はどうかというと、確かに個人間のブレはすごくあるけれども、平均をとったら管理的な経営よりも辛うじて上回っているとか、そういうことだと思いますね。そこに対して会社として我慢をする、賭けてみる、もしくは上手くいかないからといって簡単にやめない。これができるかどうか。経営者の姿勢が問われますが、ぜひこの機会に賭けていただきたいです。

荒川 そんな中で個人が心掛けることは、やはりオーナーシップですかね。

奥本 オーナーシップも大事ですし、最後はやっぱり自らを生かす意識がないと、会社側がいくら用意してもそれが噛み合わないと思うんですよね。心理的安全性という言葉が最近よく聞かれるようになりましたけれど、あの言葉の主であるエイミー・C・エドモンドソンも心理的安全性との掛け合わせに個人の責任を置いています。

つまり責任と掛け合わさったときに会社との間でWIN-WINになると。個人が自ら責任を負う意思があって初めて働きがいにつながり、企業も個人もハッピーになっていくのではと思っています。

荒川 自らを生かす意思と責任が重要なのですね。では、お時間も迫ってきましたので視聴者からの質問に入りたいと思います。「生産性向上のためのリモートワークを日本で行うためには、日本企業の一般的な組織運営のどんなところを変えていくべきだとお考えですか」。

奥本 ミッションをつくり、それを言葉にすることがまず大事じゃないかなと思います。設定された期中に取組むべき課題に従ってではなく、担う仕事のミッションに基づいて行動することで、自律を尊重するマネジメントとも噛み合ってきます。「自分は何を通じてどんな価値に貢献するのか」ということを多くの人が考えられる風土をつくると、少し会社の雰囲気や仕事の仕方も変わってくるんじゃないかなと思いますね。

荒川 成果を上げるためにリモートワークをやっていくとなるとミッションが改めて大事になることがよくわかりました。奥本さん、どうもありがとうございました。

リクルートワークス研究所 所長 奥本 英宏 氏

1992年株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(旧社名:人事測定研究所)入社。2011年10月株式会社リクルート ソリューションカンパニー カンパニー長、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ代表取締役社長に就任。企業の人事制度、人材評価、人材開発、組織開発全般のソリューションに従事。2018年4月リクルートワークス研究所に参画。2020年株式会社リクルート専門役員、リクルートワークス研究所所長。

Great Place to Work(R) Institute Japan 代表 荒川 陽子

2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。

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