イノベーションを創出するカルチャーは、「働きがい」の高い会社にある

2021.07.12

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イノベーションを創出するカルチャーづくりについて、ベストカンパニー3社の代表とGPTWジャパン代表 荒川 陽子がディスカッションをしました。イノベーションを促進する企業のトップが考えていることとは?

※本記事は2021年5月28日に開催したGPTW主催セミナー『イノベーションを創出するカルチャーは、「働きがい」の高い会社にある』のパネルディスカッション抄録です。

経営者はイノベーションを創出する「構造」にコミットせよ

荒川 会社が変化に対応して持続的に成長するための「イノベーション」を生み出すカルチャーが根付いていることが、働きがいの高い会社に欠かせない要素です。まず峯尾さんに伺いたいのですが、「既存組織のプロセスや文化がイノベーションを阻む。それを動的に発展させて解消させる」というお話が印象的でした。動的に発展解消させるためにどんなことが大変でしたか。

峯尾 人材サービスという業態上、個人情報保護法や職安法などの各種法律がありますし、企業規模が大きいためグループのガバナンスコードなど、たくさんの制約あります。そのため、「リスクを取らない」「無駄なことはしない」というマインドセットになりがち。そこをまず経営陣が理解することが大事だと思います。

その上で経営陣は目指す組織を実現するための「構造」をつくらなくてはいけません。我々を制約するのは本当にたくさんあり、それにぶつかると従業員はモチベーションを保つのが難しくなる。そうならないために抜け道をつくったり、「ここまではOKだよ」と線引きをしたり、行動し続けないといけないですね。

荒川 経営は現場のマインドセットを理解した上で、望ましい行動につながるような仕掛けをつくっていくということですね。

岡澤 峯尾さんがおっしゃる通りだと思います。それに加えて経営者の「姿勢」も問われていると強く感じますね。従業員が内発的動機で気づく、学ぶことをどう仕掛けていくかが大事なことだなと。そこで私も毎週自分自身の気づきと学びを社内のイントラで「先週の気づき」というテーマで書いています。

荒川 いいですね素晴らしい。

岡澤 毎週月曜日に公開するので1週間ぼやっとしていられないんですよね。「月曜日に何を伝えようかな」と考えるようになりました。

荒川 従業員のマインドセットを変化させて引っ張っていくイメージですね。

世一 私も経営者として構造にコミットすることが大事だと思っています。我々は会社のサイズが300人から500人になっていくところなので、属人性に頼らず構造をいかにつくりこんでいくかチャレンジしているところです。

また、既存のビジネスをどれだけ効率を上げていくかという部分と、新しい可能性の模索がバッティングして、新しいものが潰されがちになることもある。日々の目標達成にあまりヒットしない取り組みは「今それしている場合じゃないでしょ」と芽が潰されてしまうかもしれません。これはもったいない。アイディアを吸い上げる仕組みが大事です。会社が1000人、2000人になっても「この人にアイディアをぶつけてみよう」とみんなに思われるような経営陣であること、ある種のフランクさを会社に残していくことが大事なポイントになるのかなと考えています。

経営情報をオープンにして従業員の「自分ゴト化」を促進

峯尾 経営の方向感として短期的なテーマを追っているときは、イノベーションに取り組みづらくなり、「目の前の課題にフォーカスしよう」という具合に構造的な揺り戻しが起きるんですね。この期間が長く続くとそのままイノベーションが生まれない環境になってしまう。このバランスの取り方が非常に難しいですね。

本来、経営陣の意思で方針を変えられるはずなのに、リーマンショックなどの経済変動で業績が落ちると揺らいでしまう。その揺らぎを自律的にマネジメントするための強さや資産はとても重要だなと改めて感じました。

荒川 イノベーションを生み出す構造をつくることが経営者の役割であるというお話もありましたが、経営者がどんなことにコミットすると従業員のチャレンジが生まれやすいと思いますか。

岡澤 当社のビジョン2030という目標の中で、リスクをとってチャレンジしていく方針を出しました。その中で今気をつけているのは情報開示です。経営会議で何を議論し、何にフォーカスしているのか議事録を経営職(マネジャー)に開示しています。目の前の変化が会社の動きに紐づけられるように意識しているところです。

荒川 世一さんも全てオープンにしているとおっしゃっていましたね。

世一 私たちはバイネームの人事情報と上場企業にとってのインサイダーに触れる情報、もしくはコアな財務情報など以外は、基本的に公開しています。内定者やインターンの子たちも含めて、経営会議をオブザーブする際には事前にインプットの時間も設けているんですよ。

また、内定者のみんなから出てきた疑問をチャットで質問されたら経営企画メンバーが回答するグループチャットをつくっています。情報を出すか出さないかというよりは、「どう出していくか、どう伝えていくか、情報リテラシーの問題とセットでどう届けるか」というところにコミットしています。経営課題を共有する場も毎週1時間、私が主催でつくり従業員に「自分ゴト化」をさせて、ディスカッションを促していますね。

荒川 内定者やインターンの情報リテラシー向上、情報の取扱いの指導は難しいと思いますが、そこに手を打たれているのは素晴らしいですね。

外部環境の変化に適応していくために柔軟性・対応力を高める

岡澤 私からお二人に質問したいことがあります。経営をしていくなかで外部環境の変化にいかに対応するかが重要だと考えているのですが、お二人は外部環境をどう捉えて、どう対応していますか。例えば、我々の電気計測の世界でいえば、脱炭素の動きがあり、大企業としてどう貢献するかが課題となっています。当然ながら経営に反映して取り入れるべきエッセンスです。お二人とも業界が違いますので一概には言えない部分もあると思いますがいかがでしょうか。

峯尾 世の中の情勢が急速に変化する中で、求人広告領域や職業紹介領域は、20年後には今とは異なるビジネスモデルになっているだろう、という前提に立っています。マーケットがある限り、既存の事業をしっかりやらなくてはいけないですが、10年後以降は今とは違うビジネスが主軸になる可能性があるという前提の中で、どういう絵を描き、従業員をどうトランスフォーメーションするのかなど、随分前から検討しています。10年後以降が見えないからこそ、5年、10年で柔軟性や対応力を高めていかなくてはいけないという緊張感はありますね。

世一 デジタルマーケティングの外部環境の変化というと、影響が大きいのはGoogleやYahoo!などのプラットフォームのレギュレーションの変更ですね。現場で何か異変があった時に察知してアラートをあげてくれる従業員が何人もいるので、自動的に情報が入ってくる状態になっています。

組織づくりの観点では、方向性のないおしゃべりの中から変化を拾っていますね。現場の担当領域の人と話して「どんなトレンドがあるの?」と話題を振ってみたり。こんな感じで、メンバーからの情報で環境を整えていくことが多いです。

自立性の高い組織をつくるために経営者が重視すべきこと

荒川 では、ここからセミナー視聴者からの質問にお答えいただきます。「イノベーションを生み出す上でも、このコロナ禍でも自立性は重要なキーワードだと思います。自立性の高い組織を作るために、経営者として一番重視されていることは何ですか?」。岡澤様いかがでしょうか。

岡澤 内発的な動機づけをどうつくるかが一番大事なのかなと。ですからやりたいことが実現できる環境をつくることに尽きると思いますね。

峯尾 従業員の可能性を信じ、力を引き出すことを大切にしています。仮に社員が力を発揮できていないとしたら、まずは経営陣が従業員の力を引き出せていないことに気づくことが起点であり、その上でやりがいを持ってもらうとか環境を整備するとかを考えないといけないんじゃないでしょうか。

世一 従業員がやりたいことを発言してもよいという環境も必要です。また、本人がそれを言語化できていないことも考えられます。1on1ミーティングなどで「引き出す」工夫もあったほういいかなと。「中長期的にやってみたいことって何?」とか、そういう話題を直属の上長もそうですし、斜めのコミュニケーションの中でも引き出せるようにしたり、言語化するための仕掛けを少し強めにやっています。

そうすると「本人はこう言っていたからこのミッションは向いていないかもしれない」とか、「こういった仕事を次は渡してあげたい」などの会話が経営の中で自然と生まれます。こちらから機会を提供しようにも、何を求めているかわからないとできないので、「引き出す」ことが第一歩かなと思います。

在宅ワークを推進するコツは従業員を信じ切ること

荒川 WILLを言語化することは上司にとって非常に大事な仕事であるという点、私も共感いたします。それでは最後の質問です。「在宅勤務もイノベーションの一種だと思います。在宅勤務を促進したいのですが経営陣が従業員を信じきれないようです。不安を取り除く方法やアイディアはありますでしょうか。またサボる従業員にはどう対応しますか」。世一さんの会社は在宅比率が高そうですが、いかがですか。

世一 ちょっとお叱りを受ける可能性もあるんですが、弊社は週に1回は出社してもらっています。特に部署部門で固まればコミュケーションが進むからです。そもそも在宅でやるべき仕事と、オフィスでやるべき仕事は違います。週に1回来ても誰も周りにいなかったら意味がないので、部門で曜日を決めて出社してほしいとお願いしていますね。

サボる人への対応ですが…サボる人は出社してもサボっているんですよね。在宅だからサボる人が多くなるという関係性はあまりないような気がしています。結論、サボる人は辞めていきます。ここで得られるものはないと思っているのかもしれないし、ミスマッチの可能性もありますから。ですから会社がサボる人に対してどうこう、というのはないのが実際のところです。

岡澤 弊社も緊急事態宣言が出ているエリアの販売店は在宅になっています。お客様に会えないのでいろんな工夫をしているんですよ。それで十分だと思いますし、信じて任せれば結果もついてくると思っているんですよ。

峯尾 私もお二人と同じですね。主体的な仕事をしていると信頼していますし、それができる従業員をつくっていくことに尽きるかなと思っています。

荒川 御三方とも従業員を信頼して推進しているということですね。こちらで対談は終了となります。本日はどうもありがとうございました。

パーソルキャリア株式会社 代表取締役社長 峯尾 太郎氏

1970年生まれ。新潟県出身。中央大学理工学部卒業後、1994年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。2002年に同社執行役員、2010年4月常務執行役員に就任。2016年4月より代表取締役社長。公益社団法人 全国求人情報協会 理事も務める。

日置電機株式会社 代表取締役社長 岡澤 尊宏氏

1987年、当時社長の新聞記事から企業理念に共感し日置電機に入社。製造部で自動試験装置の生産に携わり、管理職として製造、営業を経て製造部長を歴任。2011年取締役に就任。製造・営業部長として販売会社支援で年の半分が海外出張の日々を送る。2017年に専務。2021年1月から代表取締役社長(現任)。長野県長野市出身。座右の銘は「我以外皆我師」。

株式会社キュービック 代表取締役社長 世一 英仁氏

1981年埼玉県さいたま市生まれ。2005年に東京大学法学部卒業後、弁護士を目指して司法試験に打ち込むかたわら、ひとりでデジタルマーケティング事業をスタート。2006年には司法試験に区切りをつけて事業を法人化、現在に至る。フィールドワーク重視のマーケティングが特長。表面的なニーズではなくインサイトを的確に捉え、人々をよりスムーズな課題解決体験へと導く。

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