従業員の「全員活躍」を徹底的に追求
シニアの強みを引き出す大和リースの取り組み
大和リース株式会社
上席執行役員 人事部長 佐伯 佳夫 様
更新日 2024.10.102023.10.10
従業員の「全員活躍」を徹底的に追求
シニアの強みを引き出す大和リースの取り組み
大和リース株式会社
上席執行役員 人事部長 佐伯 佳夫 様
Great Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)は、「働きがい認定企業」(2021年7月~2022年9月調査実施)の中から、特にシニア(管理職を除く55歳以上)の働きがいに優れた企業を規模別に選出しました。シニアランキング発表初年度である昨年から2年連続でランクインを果たした大和リース株式会社の取り組み事例を、上席執行役員の佐伯佳夫様にご講演いただきました。
<記事のポイント>
✓働きがいの向上と業績は一定の相関があると実感
✓シニア活躍の根底にあるのは「全員活躍」へのこだわり
✓シニアへの施策例:「アラ還現役塾」で57歳から100歳の人生をイメージ
※本記事は2023年版 日本における「働きがいのある会社」シニアランキング 記者発表会の抄録です。
※佐伯氏、同志社大学政策学部 教授の太田肇氏、GPTW Japan代表 荒川の三者によるトークセッションの様子はこちら:シニアの働きがいを高めるために、企業ができることは何か?
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
大和リースは大和ハウスグループの一員です。従業員数は正社員が約2400名となっています。大和ハウスグループは、「儲かるからではなく、これからの人々が何を必要としているのかで事業を興しなさい」という考え方を大切にしています。弊社もその精神を受け継ぎ、多くの地方自治体と取り組む地方創生などの仕事にも取り組んできました。
大和ハウスグループには480社ほどのグループ会社がありますが、いわゆる兄弟会社というのは2社だけです。大和ハウスと大和リースは兄弟会社であり、大和ハウスと役割分担をしながら仕事をしてきた歴史があります。
弊社は1959年に大和工商株式会社としてスタートし、2005年にグループ経営に移行しました。そして、グループ経営の一体感を高める目的で、2006年に東証一部から上場を廃止し、翌年、大和リースという現在の社名に変更しています。
そんな弊社が、「働きがい」を高めるためにどのような取り組みをしているかご紹介します。弊社はインクルージョン推進室というセクションを人事部の中に設けています。「インクルージョン」を弊社は「全員活躍」と解釈して捉えています。外部評価をきちんと受け、反省をして改善につなげたいという思いから、「働きがいのある会社ランキング」には、2017年から参加しました。
働きがいの向上は、業績にも一定の寄与があるようです。2006年から2021年の業績推移を見ると、営業利益率は4.4%から9.9%まで上がっており、働きがい向上への取組みは業績の向上とも一定の相関があると感じているところです。
今回、評価をいただいたシニア層への取り組みを紹介します。その前に弊社の「ダイバーシティ&インクルージョン」「全員活躍」に取り組む中での3大テーマは次の通りです。一つ目は女性の活躍、二つ目はシニアの活躍、そして三つ目は障害者の活躍です。この三つを大きなテーマとして取り組みを進めています。
シニア層(非管理職の55歳以上)は、8月現在で55歳から59歳の非管理職が127名、60歳から64歳が140名で、合計267名となっており、全職員の約11%を占めます。定年は65歳ですが、60歳で役職定年のため、60歳から64歳は原則非管理職です。3年後、5年後の見込みでは、11%から13%、15%と増加傾向にあります。人員割合の面からも、このシニア層の活躍が、これからの経営においても非常に重要だと考えています。
弊社は2013年に65歳定年制を導入しました。それまでは60歳以降を嘱託再雇用という位置付けにしていましたが、2013年からは65歳まで正社員として働く制度に変更しています。一方、60歳での役職定年制を導入し、組織長からは外れることにしています。
「全員活躍」を考えた場合、シニアの活躍を期待しつつ、60歳でポストは後進に譲り、新たな役割を担っていただくこととしました。また、給与においては2013年以降、段階的に待遇の改善を進めており、現状の月給水準は、60歳時比較で「原則維持」としています。
賞与も業績連動としており、支給率の考え方も60歳までと同じです。ただし、役職定年に伴って、責任手当(役職手当)がなくなるため、それに伴う月給の減少や賞与の減少は生じます。想定年収の平均は、60歳時比較で8割から9割となりますが、非管理職のケースではほぼ横ばいです。
弊社は、60歳前後を「アラ還」と呼んでいます。60歳からはポストを譲り、新たな役割に挑むことになるので、「アラ還現役塾」という名で60歳を迎える3年前に塾を実施しています。「第2の現役」をその時点から準備してもらうことが狙いです。
アラ還現役塾の中では、57歳から100歳までの人生をイメージしてもらいます。若いときは仕事の占める割合が多いですが、歳を重ねるほどに仕事の比率は下がって行くことが一般的です。仕事が減ったら生きがいも減ってしまうというのでは、人生が楽しくなくなる。そこで、アラ還現役塾では、仕事に対しては現役として責任を持ってもらう一方で、ライフ・ソーシャル(生きがい)を増やし、ワーク・ライフ・ソーシャルの総量を減らさない意識を持ってもらっています。
これからの働き方については、適材適所から適所適材、そして適能適所へのシフトが必要であると考えています。適材適所をベースにしながらも、一人ひとりの働きがいを高めていくことを考えると、その人の長所を生かしていくことが重要です。「一人ひとりの能力」を活かした「適能適所型」が要であり、言い換えればメンバーシップ型とジョブ型を併用した「ハイブリッド型」です。“働き方の良いところ取り”が大切だと考えています。
続いて今年度から始まった『チーム制』を紹介します。例えば、60歳まで支店長職を担っていた役職者が役職定年になった場合、実務から離れて久しいケースもあります。いざ役職が外れたときに、全ての実務を自分ひとりで進めるのは大変です。またシニアに限らず、「育児や介護等で十分な時間が取れないケース」「経験の浅い若手が先輩に支援してもらうケース」などに『チーム制』が活かされればと考えています。つまり、「時間的」「能力的」にチームで「補完し合う」考え方がチーム制です。
今後はシニアに自分の強みを発揮してもらうと同時に、チームとして仕事をしたときの成果を数字で可視化(受注計上)して行きます。これにより、今までは支援に回る(可視化できない)ことが多かったシニア層にも、数字として自分の実績を見てもらえるため、やりがいや働きがいにつながっていくのではないかと期待しています。
シニア層になると、親御様ももちろん高齢になるため、若手以上に介護が増えます。弊社は基本的な勤務時間を9時から18時としていますが、勤務時間帯はフレキシブルに変更ができます。始業と終業時間も変更できますし、プライベートタイムとして中抜けも可能な勤怠システムを構築しています。また、定年まで無期限で取得できる介護休業制度は、セーフティーネットの役割を果たしています。
「共に創る。共に生きる。」というのが、大和ハウスグループの考え方です。全員活躍の場も、全従業員が共に創り、共に生きることで形づくられ、生涯の最後まで働きがいと生きがいのある人生につながれば何よりであると思っております。