リーダーシップとは?定義や種類、求められる5つの力について解説
更新日 2022.10.192022.10.17コラム
会社組織や団体などの集団で活動をする場合、その集団に参加する一人ひとりがリーダーシップを発揮することが欠かせません。では、リーダーシップとは何なのでしょうか。また、どのようにそれを高めていけばよいのでしょうか。
本記事では、リーダーシップについて、先行研究から明らかになっているリーダーシップ論を踏まえながら定義するとともに、リーダーシップを発揮し、高めていくために必要なことについて解説します。
リーダーシップとは
リーダーシップとは、会社組織や団体などの集団で活動をする人びとをまとめ、その集団を目的に向かって導いていく機能のことです。その定義は多岐に渡り、先行研究によってさまざまな内容が発表されていますが、代表的な研究として以下の3つを紹介します。
① PM理論
② ピーター・ドラッカーのリーダーシップ論
③ ジョン・アデアのリーダーシップ論
それぞれについて、説明していきます。
PM理論
PM理論とは、1966 年に社会心理学者である三隅二不二(みすみじゅうじ) が提唱したリーダーシップの基本的な理論の一種です。PM理論は、以下の2つの軸でリーダーシップを説明しています。
・目標達成機能(Performance function、以降はP機能)
・集団維持機能(Maintenance function、以降はM機能)
P機能とM機能の強弱を英字の大文字・小文字で表現する点は、PM理論の大きな特徴です。例えば、P機能とM機能がどちらも弱い場合は「pm」と表現し、P機能が強くM機能が弱い場合は「Pm」と表現します。
P機能とM機能のどちらが優れているかということではなく、どちらの機能も強い「PM」の状態が理想的なリーダーです。以下のような具体例があります。
P機能の具体例 |
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M機能の具体例 |
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ピーター・ドラッカーのリーダーシップ論
オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーのリーダーシップ理論も有名です。ピーター・ドラッカーは、リーダーシップに必要なものは、「カリスマ性ではなく人格」と説きました。ドラッカー説の考え方は、以下の3点にまとめられます。
1.リーダーシップは仕事
ドラッカーは、「リーダーシップは、カリスマ性のような資質ではなく仕事」と述べています。組織目標設定と説明、仕事の優先順位や基準を定め、維持することを仕事としてできれば、リーダーシップを発揮できるという考え方です。
2.リーダーシップは責任
ドラッカーは、「リーダーシップは責任を負えるかどうかだ」とも述べています。地位や特権ではなく、チーム全体の責任を負い、失敗しても他人のせいにしない潔さがリーダーシップの発揮につながります。
3.リーダーシップは信頼
ドラッカーは、リーダーの定義として「つき従う人がいること」を挙げています。「強制でもなく好意でもなく、リーダーの発言が真意と確信を持てることが、リーダーを信頼することだ」としています。
ジョン・アデアのリーダーシップ論
イギリスで活躍するジョン・アデアのリーダーシップ論は、行動に重点を置いたもので、「シンプルで実用的」という評価を受けている理論です。アデアのリーダーシップ論は、以下のように「仕事・チーム・個人」の3要素で表現されています。
1.仕事:仕事を成就させること
2.チーム:チームを団結し、それを維持すること
3.個人:個々の部下を育てること
リーダーはこれら3要素に働きかけるため、核となる以下の8つの行動を挙げています。
1.仕事を明確にする
2.計画する
3.要約する
4.統制する
5.支援する
6.動機づけする
7.評価する
8.模範となる
「リーダーシップは資質ではなく、これらの行動を通じて仕事・チーム・個人の3要素に働きかけることで発揮できる」というのが、アデアのリーダーシップ論の核となる考え方です。
リーダーシップの種類
次に、リーダーシップの種類について明らかにされている先行研究を紹介します。管理職やチームリーダーとして仕事を進める中で、多くの人が「自分らしいリーダーシップとは何か?」ということを自問自答したことがあるのではないでしょうか。あるべき姿は1つとは限りません。様々なリーダーシップのスタイルがあることを理解し、メンバーの特性を生かしながら自分らしく組織を率いていけるリーダーシップのスタイルを見つけていくことが大切です。
クルト・レヴィンが提唱した3種類のリーダーシップ
アメリカの心理学者クルト・レヴィンは、リーダーシップを3種類に分類しました。それぞれの特徴は、以下の通りです。
1.専制型リーダーシップ
クルト・レヴィンは、メンバーの行動意思決定のすべてをリーダーが決めるタイプのリーダーシップを「専制型リーダーシップ」と分類しました。短期的に高い成果を上げるには、優秀な専制型リーダーシップの発揮が奏効するケースもあるかもしれません。専制型リーダーシップの典型例は、「創業者がワンマン社長」というケースです。
しかし、専制型リーダーシップの下では、組織メンバーの自主性が育たず、個人の成長も促せません。メンバーは、リーダーにばかり意識が向くため、チームワークも発揮しにくくなりがちです。組織は、未熟でメンバーが受け身となるのが特徴となります。
2.民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップとは、チームメンバーの意見を聞き、メンバー自身に計画や実行手段、進捗管理などを任せていくタイプのリーダーシップです。リーダーは、メンバーに対してアドバイスをしますが、あくまでもメンバー自身が考えながら問題解決に当たります。メンバー同士が協力する場面も出てくるため、組織内のコミュニケーションの活性化や、チームワーク強化などが期待できる点がメリットです。
そのため、専制型リーダーシップに比べてチームメンバーの成長が期待でき、長期的にはより大きな組織目標の達成を目指すことができます。ただし、組織やメンバーの成長に時間がかかるため、「短期的に結果が出にくい」というデメリットがあることも把握しておく必要があるでしょう。
3.放任型リーダーシップ
放任型リーダーシップとは、チームメンバーに対して働きかけをせず、自由に行動させるタイプのリーダーシップです。メンバーは、組織目標達成に最低限必要となる情報しか渡されないため、戸惑う場合もあるでしょう。ただ、チームメンバーが優秀で自律性が高い場合は、高いレベルの個人プレイや協力関係が進み、上司の承認を得ずともスピーディに仕事が進みます。そのようなケースでは、かえって高い成果を発揮するでしょう。
ダニエル・ゴールマンが提唱した6つのリーダーシップ
アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンは、クルト・レヴィンよりも細かく6パターンに分類して、以下のようにリーダーシップを説明しました。
1.ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップとは、チームに対して組織のビジョンを明確に示し、メンバーを導くタイプのリーダーシップです。目的を達成するための手段は、チームメンバーに委ねて細かい指示は出さないため、チームメンバーはどのようにして組織目標を達成するかを常に考えることになります。チームメンバーは、自分たちで考えた手段で納得しながら目的達成を目指せるため、チームの自律性が高まるでしょう。
2.コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップとは、リーダーとチームメンバーが1対1でコミュニケーションを行い、強み・弱みをメンバーにフィードバックしながら、メンバーの成長を促すタイプのリーダーシップです。リーダーは、メンバーの能力を正確に把握できるため、能力に見合った仕事を与えられます。また、メンバーは自分の能力を客観的に把握できるため、自身の能力向上を目指しやすくなるでしょう。
3.関係重視型リーダーシップ
関係重視型リーダーシップとは、チーム内の関係を重視し、チームワークを高めるような行動に力を入れることで、組織全体の実行力を高めるタイプのリーダーシップです。このタイプのリーダーは、組織内に良好な人間関係を築き、メンバーにとって働きやすい環境が構築できます。ただし、時には対立が必要な場合でも遠慮をしてしまい、問題解決が先送りになる可能性も否めません。そのため、組織目標の達成に悪影響が出るケースもあることを把握しておく必要があるでしょう。
4.民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップとは、組織メンバーの意見を広く取り入れながら、意思決定をしたり仕事を進めたりするタイプのリーダーシップです。チーム内のコミュニケーションが円滑になり、各メンバーが納得して組織目標の達成にまい進できますが、意見がまとまらず組織の方向性があいまいになるケースもあります。
5.ペースセッター型リーダーシップ
ペースセッター型リーダーシップとは、高い成果を掲げて、チーム内のやる気を鼓舞するタイプのリーダーシップです。「意欲の高いチームメンバーが集まっている組織」「高い目標の達成が必要」といった場合には、このタイプのリーダーシップが有効です。ただし、メンバーにそこまでやる気がない場合には、リーダー自身が成果を見せ続ける必要があるため、疲弊しかねません。
6.強制型リーダーシップ
強制型リーダーシップとは、クルト・レヴィンの定義した専制型リーダーシップとほぼ同じタイプです。リーダーがすべてを決め、メンバーの管理も行うため、短期的に成果を出す必要がある場合に向いています。ただし、組織としては未熟でメンバーは受け身になりがちなため、組織やチームメンバーの成長は見込めません。このような組織の場合、リーダーがいなくなると機能不全に陥る可能性もあります。
リーダーシップを発揮し、高めていくために必要な5つの力
ここまで、主要なリーダーシップ理論とリーダーシップの種類を解説しました。これらの理論を踏まえると、リーダーシップを発揮し、高めていくためにはどのような力が求められるといえるのでしょうか。ここからは、リーダーシップを効果的に発揮していくために必要な力を5つご紹介します。
明確な方向性を示すビジョン構築力
メンバーに対して明確なビジョンを示し、その実現プロセスを示す力は、リーダーシップの根幹であり、組織目的の実現や組織目標の達成に不可欠です。時にはリーダーの抱く夢も交えながら、メンバーのモチベーションをアップさせる前向きなビジョンを示すことで、リーダーへの信頼感は高まります。ただ、ビジョンやその実現プロセスの説明は1回だけでは浸透しにくいため、折を見て何度も継続的にメンバーに話して聞かせる根気も必要です。
また、自組織の目標と会社の目標をしっかりとリンクさせ、数値化できる部分は数値化して、目標の進捗や達成度を分かりやすく示す工夫なども必要になるでしょう。
メンバーの主体性を引き出す目標設定力
高い期待を込めた目標設定を行い、メンバーの主体性・当事者意識を引き出すことで目標達成を実現する目標設定力も、チームを導いていくうえで重要です。その際に、組織の都合だけを押し付ける目標設定ではメンバーのやる気は起きません。メンバーの強みを活かすことができ、なおかつ、メンバーの今後のキャリア実現にも値する目標設定ができるかどうかは、リーダーの腕の見せ所です。
チームやメンバーへのコーチング力
チーム全体やメンバー個人にコーチングを行うことは、それぞれが持つ潜在的な能力や可能性を開花させることにつながります。潜在能力の最大化はチームの連帯感強化やメンバー個人の成長を期待できるため、組織力が向上していくでしょう。コーチングと対比して用いられる育成手法であるティーチングが、知識や方法を教えることであるのに対して、コーチングはメンバーに自分で考えることを促し、答えを引き出すことに違いがあります。
メンバーの状態を的確に把握するアセスメント力
チームやメンバーの能力を客観的に把握するアセスメント力も必要な力の1つです。なお、能力をアセスメントするだけではなく、観察して得られた結果に対して的確なサポートを行ったり、仕事の割り振りを行ったりすることが重要です。これにより一人ひとりの成長が促され、組織の成果を最大化させることが期待できます。
メンバーの信頼を得るコミュニケーション力
リーダーには、メンバーからの信頼を得るためのコミュニケーション力も求められます。普段は離れた場所で働いていたとしても、近づきやすい存在だと思われていたり、何かあってもなくても気軽に話せるとメンバーに感じられたりするようなコミュニケーションを日ごろから行うことが重要です。また、メンバーへの期待を折に触れて伝えたり、仕事の意味や価値を共有する場面を意図的に作ったりすることも信頼を高めることにつながります。
優良なリーダーの存在が職場の働きがいに大きな影響を及ぼす
改めて、リーダーシップとは、会社組織や団体などの集団で活動をする人びとをまとめ、その集団を目的に向かって導いていく機能のことです。GPTWでは全員型「働きがいのある会社」モデル(For Allモデル)において、「リーダーシップの有効性」をその尺度の1つとして定義しています。
目的を実現するために設定された組織目標を達成するために、ビジョンを描き、仕事を的確に割り当て、メンバーを動機づけることで、一人ひとりが潜在能力を最大化できるよう働きかけていくこと。それらリーダーシップに求められる力こそが、働きがいのある会社作りの最重要要素であると言っても過言ではありません。
ただし、リーダーシップを発揮するのは経営者や管理職だけではありません。職場を構成する一人一人が、自分の周りの小さな単位でリーダーシップを発揮していくことが重要です。ISO30414においても、人的資本を可視化する領域として「リーダーシップ」が掲げられています。つまり、これからの企業経営において、リーダーシップの状態を可視化してKPIやKGIを設定していくことが求められていることになります。
GPTWでは働きがいを測定する調査の一環で自社のリーダーシップの現状を測定し、ベンチマークと比較することが可能です。ご興味があれば検討してみてください。
(ライター:横山リホ(ペンネーム)、編集:GPTW)