アフターコロナの働き方の変化とは?2023年の働き方のあるべき姿を解説

更新日 2024.10.112023.05.12コラム

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コロナ禍でリモートワークの導入は一気に進み、多様な働き方は順調に職場に定着していくように見えました。しかし、働く人にとって出社が当たり前の価値観ではなくなったことに、ある種の功罪を感じている経営・人事関係者は案外多いのではないでしょうか。GPTW Japanで行った最新調査をもとに、今の時代に合った働き方を取り入れつつも働きがい向上につながるポイントについて考えてみます。

コロナ禍で働き方や働く人の価値観はどう変化しているか

リモートワーク導入率

2020年に始まったコロナ禍により、会社に出社して働くということが当たり前であった日本企業においてもリモートワーク導入が格段に進みました。総務省の調査によると2019年に20.2%であった導入率は、2021年には51.9%と報告されています。(総務省(2022)「令和3年通信利用動向調査」

リモートワーク実施率

実際の制度利用の実態はどうなのでしょうか。Great Place To Work® Institute Japan (以下、GPTW Japan)が「働きがいのある会社」調査の参加企業に行った最新調査によると、2022年1月~3月の期間において、最も多い結果となったのは、出社とリモートを組みわせた「ハイブリッド」で64.7%、次いで「出社」24.1%、「フルリモート」は11.2%となりました。

GPTW Japanでは調査の結果一定水準を満たした働きがいの高い企業を、「働きがい認定企業」として毎月公式発表していますが、認定企業と不認定企業を比較すると、後者の方が出社している割合が多いようです(参考:図1)。2020年4月の緊急事態宣言下ほどの高い利用率ではありませんが、リモートワークは着実に多様な働き方の一つとして選択肢の1つになりつつあります。

図1
Q:リモートワークを導入している企業に聞きます。2022年1月~3月頃までの状況を振り返り、全従業員のどれくらいの割合が出社していましたか。
<単一回答/n=187/%>

リモートワーク実施率 認定企業と不認定企業比較

働く人の実感値の変化

リモートワークは主に自宅が仕事場となりますが、必ずしも設備が十分であるとも限らない環境下で、働く人は自身の生産性や働きやすさについてどのように感じているのでしょうか。

日本生産性本部が行った「第12回 働く人の意識調査」によると、在宅勤務時の作業効率については肯定的な意見が増えています。コロナ禍初期の2020年当時は、(在宅勤務の方が)「効率が上がった」「やや上がった」が33.8%であったのに対し、2023年1月には、66.7%に改善しました。

さらに、今後もリモートワークを継続したいかという問いについても、2020年当初は、「そう思う」・「ややそう思う」が合わせて62.7%だったのに対し、2023年1月は、84.9%と増加傾向にあることが分かりました(参考:図2)。自宅での勤務でも生産性を徐々に上げ、満足できている人が一定数いることが分かります。

図2

コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか

企業動向

「働きがいのある会社」調査参加企業の担当者に自社の今後の働き方の方針について尋ねたところ、「どちらかといえばリモートワーク中心の働き方」よりも、「出社と組み合わせた働き方」(ハイブリッド)、あるいは「どちらかといえばオフィスなどに出社することが中心の働き方」を想定している企業が多い結果となりました。また認定企業ほどリモートワークをある程度取り入れていく方針であることが分かりました(参考:図3)。

図3
Q:コロナ禍が落ち着いた後の働き方としてどのようなお考えですか。
<単一回答/n=216/%>

今後の働き方についての方針働く人の希望や認定企業の方針を鑑みると、今後もリモートワークをある程度取り入れながら、働き方の選択肢を増やしていくことがトレンドになると考えられます。企業努力が必要ですが、人材採用力やリテンションにも一定の効果が期待できるでしょう。

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働き方の変化の功罪

しかし、新しい働き方にはチャレンジがつきものです。そこで働き方の変化による組織への影響について考えてみます。

企業規模、業種、働く人の職種、あるいは個人の年齢や価値観といった属性特徴によっても程度は異なりますが、コロナ禍での働き方の変化は、会社(経営)にとっても、そこで働く人にとっても様々な変化を引き起こしています。ここ数年における「働きがいのある会社」調査の全体結果を分析すると、まずポジティブな変化としては、「尊重」の要素(従業員が会社から大切にされていると感じることができる)が大きく伸びています。リモートワークの導入によって働き方の選択肢が増えたこと、ワークライフバランスがとりやすくなったことで、働きやすさの満足度が向上しました。

一方で、ネガティブな変化としては、「連帯感」の要素、「誇り」の要素の低下が指摘されます。出社をすれば必然的に顔を合わせ、なにかしら自然発生したコミュニケーションが減ってしまったこと、コロナ禍で恒例となっていた行事が中止となってしまったこと等が背景に考えられます。

調査参加企業では、そうした中でも、経営・管理者層からの発信(縦のコミュニケーション)は積極的に行われている企業が多くありましたが、交流会やイベント実施等を通じて育まれる職場全体の連帯感(横のコミュニケーション)については、うまく維持できた会社とそうでない職場に明暗が分かれました。交流会は“参加して楽しい”といった感情の共有が大切なので、オンラインの画面越しの対話となると運営の限界があったのかもしれません。

関連記事:テレワーク環境下における縦・横コミュニケーションの実態調査

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どの働き方だと働きがいが高まるのか、出社はだめなのか

新しい働き方にはともすると功罪の両面がありそうですが、それはどのような要因から生じるのでしょうか。最新の「働きがいのある会社」調査では、いくつかの働き方のパターンによって働きがいに違いが出るのか調べてみました。

その結果、「出社していた人は50%程度」という場合が、他の働き方に比べて働きがいが低い(有意差あり)ことが分かりました。「ほぼ全員が出社していた」あるいは「ほとんど出社していなかった」は正反対の働き方ですが、両者には働きがいの感じ方に有意差はありませんでした。また出社していた人の割合が20%未満や、50%未満~20%程度の場合でも働きがいの感じ方に違いはありませんでした(参考:図4)。

図4 リモートワークの実施度合別 働きがいスコア

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では、出社の割合が50%程度であると、なぜ働きがいが低くなるのか。考えられる理由としては働き方のルールを会社がきっちり決めていて、個人の裁量がほとんどない、あるいはリモートワークができる対象者が限定されているなどといったことが想像されます。実際、それらの職場の特徴を分析してみると“利益が公正に分配されている”、“誰もが認められる機会がある”といった 公正感に関する設問のスコアが低いことが分かりました。

このことから、働きがいの高低は働き方そのものに影響されるのではなく、職場のカルチャーに合っているか、あるいは運用やルールにおいて職場の納得感、公正感が感じられるかという観点が大切なのでは考えています。

関連資料:2023年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング 全体傾向レポート

自職場にとってよい働き方を模索する

では自職場に合った働き方はどう決めていけばよいのでしょうか。働き方のバリエーションをどう揃えるか、運用させていくかについては、規模や業種ばかりか、従業員の年齢構成、スキルの成熟度、あるいは新しく入社する従業員の受け入れ状況等にも考慮していく必要があるでしょう。

しかしながら、認定企業が最も大事にしているのは、その働き方が人事ポリシーや大事にしたい価値観に合っているかという点です。例えば、全員がリアルに集まって創造することを大事にしている企業では、リモートワークの日数を限定してなるべく多くの出社を義務化している、代わりにオフィスはコミュニケーションをしやすいレイアウトに変えたり、個人ブースなどを新たに作って集中できるようにしたりと工夫をしています。

一方で、従業員の自律性を重んじる企業では、フルリモートワークも選択肢に入れて提示し、どの働き方でパフォーマンスを出すのかは自己判断に任せています。ただ、そうしたポリシーに添った方法を採用している企業であっても、最近よく聞く悩みとしては、裁量に任せてしまうと中堅社員やベテラン社員が出社してくれない、同じメンバーばかり固まってチーム力の低下が気になるという問題です。

認定企業の働き方の事例 ~連帯感や誇りを高めるコツ~

では、働きがいの高い認定企業では、多様な働き方によって起きがちな課題をどういった工夫で対応しているのでしょうか。

一つの方法としては、“対面の場”を活かすということです。認定企業では先に紹介した通り、リモートワークを導入している割合は90.7%と非常に高いですが、フルリモートの割合は12.1%に留まっており、リモートワークと出社とのバランスをうまくとっている企業が大半であると想定されます。そしておそらく対面の場をうまく活用することで従業員の働きがいを維持しているのではと考えています。

column_230512_06.jpg実際、コロナ禍で対面の価値についてなにかしらの変化を感じている企業に働きがい向上施策として「コロナ禍前に重視していたもの」、「コロナ禍になって重視するようになったもの」についてそれぞれ聞いてみたところ、コロナ禍になっては、“従業員同士の交流会”、“上司との1on1”、”従業員同士のナレッジ共有“といった双方向型・全員参加型のコミュニケーションについてより重視していることが分かりました。

対面で行うメリットとしては、“場が創り出す空気感等、リアルでしか味わえない ものがある”、“顔を直に合わせないと親近感がわきづらい”といった声が寄せられました。コロナ禍になって職場に来れば当たり前にできていた職場の会話やコミュニケーションが自然な状態では発生しにくくなり、改めて会社として意図的に仕掛ける必要性が出てきたのでしょう(参考:図5)。

図5
”対面で集う価値”が「変わった」「どちらかと言えば変わった」と回答された企業に聞きます。コロナ禍前後で重視していたものは何ですか(3つまで選択)※通常の業務は除きます
<複数回答(3つまで)/n=162/%>

コロナ禍前あるいはコロナ禍後で重視するようになった施策

出社するとメリットが感じられる工夫も必要でしょう。ある企業では、部門やチームごとに出社日を合わせて定例会議を行います。また先輩と後輩とを組み合わせて出社してもらいナレッジ共有を行う、あるいは職場ごとに予算を確保して対面で楽しいイベントを楽しむ機会をつくっています。また、定期的に全社で現在の働き方についての職場アンケートを行い、職場の連携やコミュニケーションはスムーズであるか、なにか不具合がないかについて点検し、問題があれば都度解決策について皆で話し合うなど早めに手を打っています。

リモートワークが一部の社員しか利用できない場合には、認められていない社員には特別休暇 や出社手当を与えるなど配慮していくことも大切でしょう。多様な働き方であっても職場の連帯感が感じられると、会社やチームに対する誇りにもよい影響が期待できます。

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まとめ

今回のコラムでは新しい働き方にチャレンジしているものの、職場で起きている課題感について考えてみました。多様な人材活躍を実現する上では、働き方のバリエーションを増やしていくことは企業の競争力には欠かせず、課題の解決は避けては通れません。ぜひコラムの事例などをご参考に貴社に合ったやり方を見つけていただきたいと思います。

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Great Place To Work(R) Institute Japan シニアコンサルタント 今野 敦子

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名古屋大学大学院経済学研究科(経営管理学)修了。フランス国立ボンゼショセ工科大学MBAコース取得。
外資系航空会社、医療系商社の人事部を経て、リクルートマネジメントソリューションズに入社。人事領域において、採用・制度設計・人材育成など一連の業務に携わる。
2009年GPTWジャパン設立メンバーとして、事業立ち上げに参画。働きがいのある職場を目指す多くの企業などに調査分析、経営層への提言と支援を行う。

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