部下の仕事のモチベーションの上げ方は?成功させる具体的な方法

更新日 2024.11.262023.09.04コラム

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昨今、働きがい、エンゲージメントへの注目が高まっており、多くの企業で従業員の働きがいを高めようと様々な取り組みが行われています。しかし、多くのお客様からは、部下の働きがいを高めることの難しさについて相談を受けることがあります。コロナ禍を経てリモートワークも定着しつつあり、部下の様子が見えづらいというお悩みも多いようです。部下のモチベーションが低いと感じたときにどのようにアプローチをするべきなのか、考えてみましょう。

モチベーションとは何か?

モチベーションとは、物事を行うための動機や意欲になるものです。日本語では「動機づけ」であり、目標や目的などのために行動を起こし、維持や促進するプロセスを意味するものです。ビジネスの場面において使われるモチベーションは「仕事に対する意欲・やる気」と理解するとよいでしょう。

組織が掲げる目標を達成するためには、従業員の能力も重要ですが、モチベーションが高い状態であることも大切です。従業員のスキルが高くともモチベーションが高くなければ、パフォーマンスの低下につながります。従業員のモチベーションを高めることは、マネジメントに求められる大切な仕事の一つでもあります。

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モチベーションの種類

では、モチベーションについてもう少し具体的に見てみましょう。モチベーションについては様々な理論がありますが、ここでは2種類に分けて説明します。

外発的動機づけ

外発的動機づけとは、金銭的な報酬や昇進、昇格などによってもたらされる名誉、周囲からの評価や称賛、または罰や強制など、外部からもたらされる要因により動機づけされることを指します。短期的にモチベーションを向上させるには、外発的動機づけが効果的であるケースもあります。そのためか、一般的には、外発的動機づけの効果は一時的であるという見解もありますが、外発的動機づけによって行動をしているうちに、次第に興味・関心が生まれ内発的動機付けへと変化することもあるようです。

内発的動機づけ

内発的動機づけとは、報酬や評価などの外部要因を受けることなく、自身の内側から湧き上がる興味・関心、知的好奇心や向上心などによって動機づけられている状態のことを指します。従業員自身が、会社のビジョンや価値観に賛同したり共感できること、また、自身の仕事が興味のあることだと感じたり、やりがいを感じられることは、とても重要です。

上記のように、外発的・内発的動機づけにはそれぞれ違いがあります。外発的動機づけは、報酬などわかりやすい内容で動機付けしやすいというメリットがありますが、同時に、例えば報酬は継続的に上げていくことが難しいため、結果的に継続的に動機づけることが難しく一時的なものになりやすいというデメリットがあります。企業において、従業員に継続的にモチベーション高く良い仕事をしてもらうためには、初めは外発的動機づけしかない状況であったとしても、本人のやりがいや興味、貢献意欲などの内発的動機づけに繋げていくことが理想的です。

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仕事におけるモチベーション低下の要因

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それでは、具体的にどのような理由でモチベーションが下がってしまうのでしょうか。3つの観点でいくつか例を挙げます。

マネジメントとの関係において

  • 経営陣の示すビジョンに賛同ができない
  • 人事評価への納得感が薄い
  • 目標設定が明確・適切でない
  • 業務量が適切でない
  • 上司との関係が良くない

仕事について

  • やりがいが感じられない
  • 仕事の内容が自分に合っていない
  • 達成感がない
  • 仕事内容について誇りに思えない
  • 自身の成長が感じられない

仲間との関係において

  • 自分らしく振舞うことができない
  • 仲間と助け合うことができていない
  • 仲間との関係が良くない

これら以外にも様々なことが考えられますが、上記のとおり一例を紹介しました。経営層や人事部などによる組織的な対応が求められるものもあれば、上司の立場で考えると、部下とのコミュニケーションによって改善できる点もあるのではないでしょうか。

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部下のモチベーションを上げるには

部下のモチベーションが低いと感じた時、具体的にはどうするべきでしょうか?モチベーションの源泉は人それぞれ異なるため、一律に効果のある施策はありません。まずはその部下がどのような思いをかかえているのか、確認する必要がありそうです。

STEP1:現状の把握

特定の部下のモチベーションが気になる時は、まずは対話をして思いを引き出すことが重要です。上司と部下が1対1で行う面談として、1on1ミーティングを実施する企業も増えていますが、そのような場でまずはしっかりとヒアリングするとよいでしょう。例えば業務量が不適切である等の課題がはっきりした場合は速やかに対応することが求められます。

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なかなか本音を引き出すことが難しい場合や原因がはっきりしない場合、スムーズに対話が進まない場合は、以下の図1のような「Will(したい)・Can(できる)・Must(すべき)」の3つの視点で現状を考えてみることをおすすめします。「Will(したい)・Can(できる)・Must(すべき)」は、従業員がモチベーション高く、自律的に働く場合に有効な部下マネジメントの考え方です。一般的に、仕事の遂行にあたっては「Must(すべき)」に着目しがちですが、部下の「Will(したい)」や「Can(できる)」も踏まえて業務をアサインすることができれば、部下のモチベーションを引き出すことができます。

図1:Will(したい)・Can(できる)・Must(すべき)の部下マネジメント

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(出典)2021/11/15 リクルートマネジメントソリューションズ「コロナ禍で注目される自律的な働き方とエンゲージメント」

部下のモチベーションが低い、パフォーマンスを発揮できていないと感じる場合、以下のようなことがそれぞれの観点で生じている可能性があります。

  • Will:期待役割の全うに向けて意欲が引き出せていない、本人の希望や行いたいことと仕事のアサインがマッチしていない
  • Can:期待役割を全うするために必要な知識やスキルが不十分
  • Must:期待役割が正しく伝わっていない、期待されていないと感じている

上記の中の特に「Will(したい)」に着目し、本人の希望を引き出して業務のアサインに接続できるとよいでしょう。

なお、特定の個人ではなく、自身がマネジメントしているチームメンバー全体の状態が気になる場合は、エンゲージメントサーベイ等を実施することで現状把握を行うことができます。また、サーベイだけでなくインタビューを行うことによって各チームメンバーの本音を引き出すという方法もあります。

STEP2:対策の実施

ヒアリングをしたり、サーベイやインタビューを実施したりすることで対策が必要な点が明らかになれば、当該内容を踏まえて施策を検討します。対策は課題によって異なりますが、以下は一例としていくつかご紹介します。

●例1:評価への納得感が薄い場合

1部門の1マネジャーの立場である場合、制度そのものへの介入は難しいかもしれませんが、納得感を高めるためのコミュニケーションを行うことは可能です。部下が評価結果に対して納得感が薄い場合、そもそもの目標設定時のコミュニケーションが十分ではなかった可能性があります。前述のWill(したい)・Can(できる)・Must(すべき)の観点も参考に、部下がやりたいことを把握できているか、そもそもの期待役割がきちんと伝わっているか、目標を達成するためのスキルが備わっているか、または備えるための成長支援ができるか、そのような観点から適切に目標設定とそのコミュニケーションができていたかを点検するとよいでしょう。

●例2:自身の仕事に意味を感じられていない場合

自分自身の仕事に意味を見いだせていない場合も、モチベーションが低下する原因となります。自身の仕事が注目されたり評価されたりすることが少ない場合や、顧客や社会への貢献が見えづらい場合などに、意味を見いだせなくなることがあります。部下の仕事がどのような意味があり、顧客や社会への貢献につながっているのか、具体的に言葉にして伝えてあげることが大切です。また、些細なことであっても部下の仕事上での工夫や改善に向けた取り組みを見つけ、見ているということを伝え、認めてあげることも重要です。

●例3:新しいことにチャレンジできていないと感じる場合

同じ仕事を継続している場合、マンネリ感が生じることがあります。同じ仕事をミスなく継続していくことも素晴らしいですが、本人の成長のためにもチャレンジできる機会をできる限り与えてあげられるとよいでしょう。些細なミスも許されないという雰囲気があると、部下はなかなかチャレンジがしづらくなります。致命的なミスは当然避けなければなりませんが、新しくチャレンジする分野においては失敗を恐れず取り組めるよう上司として背中を押してあげられるとよいでしょう。失敗を許容する風土を作っていくことが重要です。

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モチベーションを引き出すコーチング

前述のようにはっきりと課題が明らかになればよいですが、そうではない場合もあるでしょう。部下のモチベーションがあまり高くないように見えるが、原因がわからない。質問をしても部下が本音を話してくれない。そもそもどのような会話を部下とすればよいのかわからない。そのような状況に陥らないためにはどうするべきでしょうか。部下と良い関係を作り、目標の達成に向けて部下の行動を促していくにはコーチングが有効です。マネジャーが優秀なコーチとなることができれば、部下の素質や才能、経験、知識を彼ら自身がうまく活用し、自発的な行動を促すことができます。ここでは少しだけコーチングのポイントをご紹介します。

コーチングとは

「コーチング」とは、コーチが対象者との対話を通じて、その人がもっている能力を最大限に引き出し、目標達成やパフォーマンスの向上につながるよう行動を促すことです。なお、よく「教える」こと(ティーチング)と混同されがちですが、この2つは異なります。ティーチングは何かの知識や方法を教えることですが、コーチングは、自らが考え答えを引き出すことを促すことです。

部下とのコミュニケーションにおいて有効なコーチングスキル

傾聴

部下に「話させる」ことが重要です。上司の立場では、つい伝えたいことが多くなり自分ばかりが話してしまってはいないでしょうか。コーチングの観点では、部下の話を聞くことが大切です。話の内容を否定したり、勝手にアドバイスしようとしたりせず、じっくり相手の思いに寄り添うことが求められます。

質問

問い詰めるのではなく、相手の気づきを引き出すように質問することが重要です。上司が部下に質問する場合、上司にそのつもりがなくても相手は責めて問いただされていると感じてしまうかもしれません。「なぜできなかったんだ?」「なぜそんなことをしてしまったんだ?」そのように聞かれると、部下は萎縮してしまい創造的で積極的な行動をする機会を奪ってしまうでしょう。「なぜ」ではなく「何」を使い、「うまくいかなかったのは何が足りなかったのだろう?」というように投げかけるとよいでしょう。また、例えば会社に対する不平不満が出たときは「何か私にできることはありますか?」と聞くことで、隠れている要求を引き出すことができれば、それもひとつの部下の「行動」を促す機会にもなります。

承認

部下が達成したことや最後までできたことを認めるなど、相手が到達した何かをそのまま口にして伝えることにより、部下が達成感を持つように導くことです。いわゆる「賞賛」とは少し異なり、何らかの到達点までこられたことや、部下が取った行動によって起こった変化そのものを事実として伝え、認めるため、相手にとってより受け取りやすいものとなります。人は自分が行った行動を通して成長を実感し、変化を理解し、そこから達成感を抱きます。達成感はやる気や自発性を促し、仕事のプロセス自体を楽しむことにつながります。

コーチングについて少しだけご紹介しましたが、部下とのコミュニケーションをより良くしたいとお考えの方はぜひ深く学んでみることをおすすめします。

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まとめ 部下のモチベーションをあげられる上司を目指そう

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今回のコラムでは、部下のモチベーションが低いと感じたときに上司が考えるべき点について整理してみました。今まさにそのようなお悩みを抱えている方にとって参考になれば幸いです。なお、もし部下とより良い関係を作りたい、部下の働きがいを高められるマネジャーになりたいという方には、リーダー向け研修のご用意もありますのでご関心があればぜひご覧ください。とりあげました内容は一部例ではありますが、ぜひコラムの事例をご参考に皆様の環境に応じて試してみていただきたいと思います。

Great Place To Work(R) Institute Japan シニアコンサルタント 岩佐 真裕子

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保険会社にて、営業・企画などを経て、Great Place to Work® Institute Japan に参画。
大手企業を中心に各社の調査実施のサポート、分析、経営層への提言や働きがい向上支援を行う。さらに、調査データの分析研究やグローバルでの調査プロジェクト対応などにも幅広く携わっている。

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