リスキリングとは?意味や導入のメリット、働きがいとの関係を解説

更新日 2024.08.272024.08.22コラム

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技術の進歩や産業構造の変化が急速に進み、仕事の内容や求められるスキルも日々変わり続けています。この変化に対応するため、今「リスキリング」が注目されています。
政府や官公庁もリスキリングを推進しており、多くの政策や支援プログラムが打ち出されています。2022年には、岸田政権が掲げる政策「新しい資本主義」において、リスキリング支援に注力することが表明され、話題となりました。実際に、厚生労働省は職業訓練や教育機関との連携を強化し、リスキリングの機会を拡充しています。
企業にとっても、従業員のリスキリングを促進することで競争力を維持し、イノベーションを推進することが可能です。また、働く一人ひとりにとっても、将来の可能性を広げ、自律的なキャリア形成のきっかけとなるでしょう。
本コラムでは、リスキリングの意味や重要性、効果的な取り組み方、成功事例などを紹介し、一歩踏み出すためのヒントを提供します。

リスキリングとは

リスキリングの意味

リスキリングは、「特定の新しいスキルや能力を習得すること」を指します。

技術革新や市場の変化を踏まえて、「既存のスキルセットを持つ労働者が再教育を受け、新たな職務や業務に対応する」ことが主な目的です。

例えば、製造業の労働者がプログラミングやデータ解析のスキルを学び、業務改善や自身のキャリア形成に繋げることも、リスキリングの一例です。

リカレント教育や生涯学習との違い

リスキリングと同様に、個人のスキルや知識を向上させるための取り組みとして「リカレント教育」、「生涯教育」といったキーワードも注目を集めていますが、それぞれの概念には明確な違いがあります。

リカレント教育は、特定の期間ごとに職業教育や再教育を行うことを意味します。これは労働市場の変化に対応するため、職業キャリアの各段階で定期的に教育を受けることを奨励する概念です。大学を卒業した後に数年ごとに専門性を高めるためのコースを受講するようなケースが典型的です。また、リスキングを主導するのは企業である一方で、リカレント教育は「個人が主体となり取り組む」ことが特徴です。

また、生涯教育は、個人が一生を通じて継続的に学習を行うことを指します。これは職業能力の向上だけでなく、個人の自己啓発や趣味、生活の質の向上を目的とする広範な教育活動を含みます。生涯教育は学校教育や職業訓練だけでなく、趣味や文化活動を通じた学びも含まれます。

概要 タイミング その他の特徴
リスキリング 既存のスキルを持つ人が、新たな業務に対応できるよう再教育を受けること 企業主導で従業員に機会提供し、職場での業務改善や、自分自身のキャリア形成に繋げる
リカレント教育 学校教育から離れた後も、必要なタイミングで再び教育を受け、就労と教育のサイクルを繰り返すこと 就業後、数年ごとに専門性を高めるため場に参加する 個人として、今後自身にとって必要となる知識を身に着けたり、教育機関で学び直す
生涯教育 自己啓発や趣味といった範囲も含め、生きがいや生活の質向上に繋がる学習に取り組むこと 一生を通じて継続的に行う 個人として、学校教育や職業訓練だけでなく、趣味や文化活動を通じた学びも含む

まとめると、リスキリングは新たな職務に必要なスキルの習得に焦点を当て、リカレント教育は定期的な職業教育の実施を強調し、生涯教育は個人の生涯にわたる幅広い学習を包含するものです。これらの概念はそれぞれ異なるニーズに応じた教育アプローチを提供し、個人と社会の発展に寄与しています。

リスキリングが注目されている背景

近年リスキリングが注目されている背景には、急速な技術革新とデジタル化が大きく影響しています。特に、人工知能(AI)やロボティクス、ビッグデータ活用の進展は多くの職業に変革をもたらし、従来のスキルセットでは対応できない新たな職務や業務が増加しています。

2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)では、「リスキリング革命」が主要なテーマの一つとして取り上げられました。この会議では、次の数年間で約10億人が新たなスキルを必要とするという見通しが示されています。これに対応するため、企業、政府、教育機関が協力して大規模なリスキリングプログラムを推進する必要性が強調されました。

ダボス会議において、世界経済フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブは、「第4次産業革命」による技術の進展が労働市場を急速に変化させ、多くの仕事が消失する一方で、新たな職務も創出されると指摘しています。これに伴い、既存の労働者が新しい職務に適応するためのスキルを獲得することが急務であるとも述べました。

また、企業のリーダーたちも、リスキリングが競争力を維持するための戦略として重要であると認識しており、多くの企業がリスキリングプログラムに投資を始めています。これにより、労働者は技術の進展に伴う変化に迅速に対応できるようになり、企業は競争力を保ち続けることが可能になります。

さらに、新型コロナウイルスのパンデミックもリスキリングの必要性を加速させました。多くの企業がリモートワークやデジタル化を進めた結果、労働者は新しい働き方に対応するためのデジタルスキルを習得する必要性が高まりました。

このように、リスキリングが注目される背景には技術革新、労働市場の変化、そしてパンデミックによる急速なデジタル化があり、これらに対応するための効果的な戦略としてリスキリングが求められています。

リスキリングが必要な理由

上記のような世界的な背景に加えて、今、日本でもリスキリングが求められている理由がいくつかあります。

まず、日本は先進国の中でも特に人材投資(企業が自社の従業員を資本と捉え、その価値を最大化するための投資を行うこと)が進んでいないことが分かっています。人材投資(GDP比)は、諸外国と比較して最も低く、さらに近年低下傾向にあります。
こうした状況から、国をあげて「新たなスキル習得」「職業能力の向上」に繋がるような取り組みを検討することが急務となっているのです。

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出典:厚生労働省「第27回中央訓練協議会 資料7 経済産業省における人材育成施策」

また、特に日本においては「少子高齢化」の影響も大きくなっています。若い働き手が減り、シニア人口が増えることによって、「人生の中で仕事をする期間が長くなっている」「多様な人材が働き続けられる環境が求められている」とも考えられます。

高齢者だけでなく、女性や障害者、外国籍人材といった多様な人材の活躍が進むと同時に、働き手一人ひとりのキャリア観も多様化しています。個人にとっては「自律的なキャリア形成に向けた学び」という観点、企業にとっては「優秀な人材の確保」という観点から、「働き手が新たなスキルを身につける」ための取り組みが一層求められるでしょう。

関連記事:<調査レポート>人材価値を高めるための取り組みに前向きな経営層の7割が「取り組みが自社の業績に好影響」と回答

リスキリングではどのような学びが必要なのか

リスキリングにおいて必要な学びは、どのようなものが想定できるのでしょうか。

企業の抱える課題や方針次第ですが、近年の社会情勢・市場の変化に合わせて、ニーズが幾つかの分野に集中する可能性も考えられています。その例を下記でご紹介します。

1.デジタルスキル

デジタルスキルには、プログラミング、データ分析、サイバーセキュリティ、そしてAI・機械学習の理解と応用が含まれます。技術が急速に進化する現代において、これらのスキルは不可欠です。

デジタルスキルを高めることにより、新しい技術やシステムに迅速に対応し、企業の競争力を高めることが可能となります。

2.ソフトスキル

デジタルスキルや語学、財務・会計のような「訓練を通じて習得できる、技術や専門知識」を「ハードスキル」と呼ぶ一方で、仕事の基礎となり、業務を進める上での言動や他者との協働に関わる能力を「ソフトスキル」と総称します。

ソフトスキルの代表的な例としては、クリティカルシンキング・問題解決能力といった思考スキル、コミュニケーション能力・チームワークといった対人スキルが挙げられます。これらのスキルは、職場での協働を円滑にし、効率的な問題解決や創造的なアイデアの発展に寄与します。

さらに、組織やプロジェクトを束ねる立場である場合、マネジメントスキルも重要です。変化する職場環境において、チームを効果的に導くリーダーシップスキルや、プロジェクト管理の知識は欠かせません。

ソフトスキルを身につけることで、チーム全体のパフォーマンスを向上させ、目標達成を効率的に進めることができます。また、個々人の専門知識だけでは対処できないような、複雑なビジネス現場の課題解決にも繋がるでしょう。

3.サステナビリティに関する知識

持続可能なビジネスプラクティスや環境保護に関する理解は、現代の企業にとって価値ある要素です。環境意識の高まりとともに、企業が社会的責任を果たすことが求められ、そのためには従業員もサステナビリティに関する知識を持つことが必要です。

リスキリングが企業にもたらすメリット

これらにより、企業は急速に変化する市場環境において持続可能な成長を実現することが可能になります。

代表的な3つのメリットを、以下でご紹介します。

1.競争力の維持・向上

急速に進展するデジタル化やAI技術の発展に伴い、現代のビジネス環境では新たなスキルが不可欠です。従業員が最新の技術やトレンドに対応できるようになることで、企業は市場の変化に迅速に適応できます。これにより、革新的な製品やサービスを提供し続けることが可能となり、競争力を維持・向上させることができます。例えば、プログラミングやデータ分析、サイバーセキュリティのスキルを持つ従業員が増えることで、新しいビジネスチャンスを捉えやすくなります。

2.従業員の定着

従業員に対してキャリア成長や自己実現の機会を提供することで、所属企業に対する満足度が高まるだけでなく、自身のスキルアップを実感できるとモチベーションも向上し、離職率が低下します。これにより、企業は優秀な人材を長期間にわたり維持することが可能となります。リスキリングの機会を提供することで、従業員が自らのキャリアに対してポジティブな姿勢を持つようになり、自組織に対する愛着も強化されます。

3.生産性向上

新たなスキルや知識を習得した従業員は、業務をより効率的に行うことができます。特にデジタルスキルやデータ分析のスキルは、業務プロセスの最適化に大きく貢献します。例えば、新しいソフトウェアやツールを活用することで、従来の業務が自動化され、時間やコストの削減が実現します。これにより、企業全体のパフォーマンスが向上し、より少ないリソースで高い成果を上げることが可能となります。

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リスキリングと働きがいの関係

リスキリングは従業員の働きがいに直結する重要な要素です。リスキリングの提供は、以下の点で従業員にメリットを生みます。

まず、「キャリア形成の機会」です。リスキリングを通じて新たなスキルや知識を習得することは、従業員にとってキャリアの発展と自己実現の機会を意味します。現代の労働市場では、技術の進化が早く、従来のスキルが短期間で陳腐化することが少なくありません。リスキリングは、従業員が継続的に成長し、自身の市場価値を維持・向上させるための手段となります。このような成長機会は、従業員にとって大きなモチベーションとなり、働きがいを感じる重要な要素です。

次に、「仕事の充実感」です。新しいスキルや知識を習得することで、従業員はより高度で挑戦的な業務に取り組むことができます。これにより、日々の業務に新たな刺激と興味を見いだすことができ、単調な業務からくる退屈感を軽減します。新しい挑戦があることで、従業員は仕事に対する達成感を感じやすくなり、結果として働きがいが向上します。

上記のような点によって、従業員は「自身の能力に対する自信」を深めます。この自己効力感の向上は、仕事に対する積極性や意欲を高め、業務パフォーマンスの向上につながります。自己効力感が高い従業員は、困難な状況にも前向きに対処し、成果に繋げやすくなるのです。

また、それだけでなく、「所属企業との信頼関係構築」にも繋がります。企業がリスキリングの機会を提供することは、従業員に対する投資であり、企業の成長と従業員の成長が共に重視されていることを示します。これにより、従業員は企業に対する信頼感と忠誠心を持ちやすくなり、長期的な視点で働く意欲が高まります。

このように、リスキリングは「従業員本人の自信」と「企業との関係構築」に繋がっており、それらは働きがいを大きく向上させる要素となります。

関連記事:なぜ「働きがいのある会社」はイノベーションを起こせるのか

リスキリングを進めるためのステップ

ここまでで、「リスキリングとは」や「リスキリングのメリット」という点をご紹介してきました。
では、企業内でリスキリングを効果的に進めるためには、どのようなステップが必要になるのでしょうか。以下にて、5つのステップに沿ってご紹介します。

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1.必要となるスキルの分析・目標設定

まず、企業全体や各部門のニーズを明確にし、リスキリングの目標を設定します。

企業をあげてリスキリングに取り組む際、ゴール状態や必要となるスキルを定義することなしでは、本質的な施策とすることは出来ません。技術の進展や市場の変化により、どのようなスキルが必要とされるかを把握し、それに基づいてリスキリングの対象スキルを決定するのです。

また、市場環境だけでなく、自社の事業の方向性を踏まえた時に求められるスキルを見極めること、階層や職種ごとに求められるスキルを定義することも必要になります。

例えば、デジタルスキルの強化が必要であれば、具体的にどの技術やツールに焦点を当てるべきかを明確にします。

更に、リスキリングによって期待される成果を、定量的に設定することも重要です。定量的な目標を設定することで、施策の評価・改善にも繋げやすくなるでしょう。

2.施策の検討・設計

次に、従業員の異なるレベルや役割に応じ、適切な施策を検討します。

リスキリングの施策を検討・設計する際には、従業員の異なるレベルや役割に応じた適切なアプローチが求められます。まず、個々の従業員が持つスキルセットや経験を十分に考慮し、それに応じたトレーニング内容や学習手段を選定することが重要です。

学習プログラムの形式についても多様な選択肢が考えられます。従来の対面研修に加えて、オンラインのライブ研修やeラーニング、ワークショップ、メンター制度など、さまざまな形式を組み合わせることで、従業員にとって最適な学習環境を提供することが可能となります。例えば、オンラインのライブ研修では、リアルタイムで講師とやり取りしながら学べるため、対面研修に近い効果が期待できます。また、eラーニングは、従業員が自分のペースで学習できる柔軟性を提供します。ワークショップは実践的なスキルを身につけるための場として有効であり、メンター制度は経験豊富な先輩社員から直接指導を受けることで、より深い理解とスキル向上を図ることができます。

さらに、学習の進捗状況を適切に評価し、フィードバックを行う仕組みも重要です。定期的な評価を通じて、各従業員がどの程度スキルを習得しているかを把握し、必要に応じて追加のトレーニングを実施することで、効果的なリスキリングを実現します。また、従業員が学んだスキルを実際の業務に応用できるよう、実践の場を設けることも重要です。これにより、学んだ内容を定着させ、業務の効率化や品質向上に直結させることができます。

3.施策の実施

リスキリングの施策を効果的に実施するためには、検討・設計したプログラムを円滑に展開し、従業員がスムーズに取り組めるようにサポートすることが重要です。まず、導入初期には従業員が新しい学習環境に慣れるように、必要な情報やツールを提供し、学習方法やスケジュールを明確にします。これにより、従業員は自身の学習進捗を把握しやすくなり、モチベーションを維持しながら取り組むことができます。
従業員の学習をサポートするツールとしては、例えば下記のようなものが挙げられます。

LMS
(Learning Management System)
学習状況を分析して、学習効果の向上を目指す/「学習管理システム」とも呼ばれる
コーチングサービス 個人の設定した目標に向けて、1on1等を通じて動機付けをし、達成を支援するサービス

4.評価と改善

リスキリングの施策の効果を評価し、改善点を特定することは非常に重要です。まず、学習成果を定量的に測定し、設定した目標と比較して達成度を確認します。これにより、どの程度の成果が得られたかを客観的に把握できます。また、従業員からのフィードバックも収集し、施策の改善に役立てます。従業員の意見や感想を取り入れることで、現場のニーズに合った内容や方法に調整することが可能です。

評価結果を基に、リスキリングのコンテンツ内容や実施方法を継続的に改善していくことが重要です。例えば、特定のスキルの習得が難航している場合は、補助教材の追加やトレーニング方法の変更を検討します。また、オンラインと対面の研修形式を適宜組み合わせることで、より効果的な学習環境を提供することができます。

このような継続的な評価と改善を通じて、リスキリング施策の質を向上させ、従業員のスキルアップを促進します。最終的に、企業全体の生産性と競争力を高めることが期待されます。

5.文化の醸成

最後に、リスキリングを推進する企業文化を醸成することが重要です。学び続けることが奨励される環境を整え、従業員が積極的にリスキリングに取り組む姿勢を育むことを目指します。これには、リーダーシップの役割が非常に大きいです。経営陣がリスキリングの価値を深く認識し、自ら率先して学び続ける姿勢を示すことで、従業員の意識向上を図ります。

具体的には、リーダーがリスキリングの重要性を強調するメッセージを発信し、従業員の学習活動を積極的にサポートすることが求められます。また、成功事例を共有し、リスキリングの成果を称賛することで、学びの文化を強化します。例えば、リスキリングを通じて新しいスキルを習得し、業務に活用した従業員を表彰することが有効です。

このようにして、全社的にリスキリングを奨励する文化を築くことで、従業員一人ひとりが自己成長に対する意欲を持ち続け、企業全体の競争力向上に寄与することが可能となります。

「リスキリング」と一言で言っても、扱うスキルや実際に施策として行う内容は、ケースバイケースであると言えるでしょう。

しかし、どのような環境・前提であっても、上記のような5つのステップを押さえることで、より効果的な取り組みにすることができると考えられます。

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リスキリングを進めるためのポイント・注意点

上記でご紹介したステップを押さえて取り組んでいたとしても、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。日々多忙な中、企業内でリスキリングを進める際、どのような点に注意を払う必要があるのでしょうか。

代表的な例を、下記でご紹介します。

1.従業員のニーズ・モチベーションの把握

リスキリングを成功させるためには、従業員のニーズやモチベーションを理解することが不可欠です。

実際にリスキリングに取り組む企業が陥るケースとして、「従業員にリスキリングの必要性が浸透しておらず、自発的な学習に繋がらない」「社内制度を設けても、一部の人しか活用していない」といったものが考えられます。

これらの状況を打破するためには、各従業員がどのようなスキルを習得したいのか、どのようなキャリアパスを描いているのかを把握し、それに合わせたカスタマイズされた学習機会を提供することが必要です。

2.実践機会の提供

リスキリングの効果を最大化するためには、実際にやってみる・経験を積む場を提供することが重要です。単に理論を学ぶだけでなく、実際の業務やプロジェクトで新たなスキルを活用する機会を設けることで、学習内容の定着を図ります。

例えば、「新しいプログラミング言語を学んだ従業員に対して、実際の開発プロジェクトに参加させることで、学んだスキルを実務で試す機会を与える」「データ分析のスキルを習得した従業員には、データに基づく意思決定を行うプロジェクトに参加させる」といった対応が出来るでしょう。

実践機会を提供することで、従業員は新しいスキルであっても、自信を持って業務に活用できるようになります。

3.処遇・報酬との連動 

リスキリングの取り組みが上手く進まない要因として、「従業員が現職での多忙さを理由に、リスキリングの優先順位を下げている」という点も挙げられます。

企業として必要なスキル・専門性の獲得を目指す上では、取り組みの重要性や意味を従業員に丁寧に説明することも勿論大切ですが、リスキリングに十分なインセンティブが働くよう、配慮する必要もあります。

「リスキリング後に期待するポジションやミッションを予め伝えておく」「市場価値を意識し、リスキリング後に想定される報酬水準を明確化する」といったことができると、その後の処遇やキャリアに対する不透明感が払しょくされるでしょう。

「リスキリングを進めるためのステップ」と併せて、上記のようなポイントを押さえることで、企業内で効果的な取り組みを進めることが可能になります。

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リスキリングの企業事例

ここまでで、「リスキリングとは何か」「実際に進めていく上でのポイント」などについてお伝えしてきました。

では、実際の企業では、どのようにリスキリングが推進されているのでしょうか。以下で、幾つかの事例をご紹介します。

1.資格取得の後押し

人材サービス業のA社では、会社が必要と認めた資格の受験費用(上限あり)および資格の年間登録料の実費 (業務遂行に必要な資格である場合のみ)を負担しています。

対象となる資格は、自社サービスの顧客となる業界に関わるものから、会計のようなビジネスの基礎知識に該当するもの、行政書士や司法書士といった国家資格など多岐にわたり、その種類も40を超えています。

対象資格は毎年各事業部長陣へヒアリングし、適宜追加・削除を行うなど、常に自組織の従業員に必要なスキルをアップデートし、資格取得を後押ししています。

2.独自のラーニングプラットフォーム

製薬企業であるB社では、従業員一人ひとりが自分の成長を自分で考え、キャリア形成できるように支援しています。業界のリーディングカンパニーとして、変化の大きい社会に適応し続けるために、「自発的に学び続け、成長し続ける」文化の構築に注力しているのです。

従業員は既存のスキルを更に向上させ、また新しいスキルを習得することで、社内のキャリアをより良いものにすることができます。そのためには、「一人ひとりが、自分の能力開発にオーナーシップを持つ」よう促すことが大切です。

B社はこうした方針を踏まえて、あらゆる階層・職種の従業員が自律的に活用できるような、幅広い学習プログラムを提供しています。場所や時間、アクセスするデバイスを限定せず、コンテンツを検索・使用できる、独自のデジタル・ラーニング・プラットフォームを提供し、自発的に学習できる環境を整えています。

このプラットフォームにおいて特徴的なのは、それぞれの職務や興味に応じた学習をサポートする仕組みです。一般的なeラーニングとは異なり、AIを搭載しているため、ユーザーの興味・レベルに当てはまるコンテンツを次々と知らせてくれるのが強みです。

また、英語版も含めると1万を超える教材コンテンツがあり、形式も対面研修・オンラインのライブ研修、動画や読み物など、多様です。アプリ版もあるため、通勤時間や仕事・家事の合間に効率よく学ぶこともできます。

更に、次世代リーダー育成を目的とした選抜型研修も用意し、「自社らしいリーダーの育成」にも繋げています。

3.社内研修制度

IT企業のC社では、選択型で自由に利用できる、社内研修制度を運用しています。

全100種類ほどの研修コンテンツを用意し、「どの階層・職種の従業員には、どのような研修が適しているか」も分かるよう、社内に周知しています。

一部の階層別研修には受講の条件が設けられていますが、基本的には誰でも好きな研修を受講できる環境を用意し、公平にスキル習得ができる環境を作っています。

4.未経験者の採用と育成

eラーニング事業や研修事業、DX推進事業を展開するD社では、「採用・育成」という観点で、リスキリングの機会を提供しています。

D社は特にAI活用の領域を強みとしていますが、AI・機械学習の未経験者についても、積極的に採用を行っていることが特徴です。

研修事業を行い、人の教育に関わる企業として、「未経験者であっても、専門性を見つけ活躍できること証明したい」というポリシーと自信から、このような戦略を取っています。

採用された従業員は、まず入社後の数カ月間集中的に学習し、その後学習の成果を確認するテストを受検します。その中でも9割に近い人が合格し、入社してから2~3か月後には専門領域の研修登壇ができるようになる、という実績があります。  

このように、「未経験者の採用・育成」という点で、リスキリングの後押しを行う企業もあるのです。

リスキリングを後押しする「働きがい認定・ランキング」

本コラムでは、企業が持続的に成長する上で注目されている「リスキリング」の意味や実際の事例についてご紹介してきました。

世界的に注目されているキーワードですが、リスキリング自体が目的化してしまっては本末転倒です。大切なのは、「リスキリングを通じてどんな負を解消したいか、何を実現したいかを明らかにし、従業員にとっても企業にとってもプラスの変化に繋げること」だと言えるでしょう。

リスキリングの取り組みにおいて、組織への影響度を確認する意味でも、「働きがい認定」の取得は極めて有効です。働きがい認定は、従業員の満足度やエンゲージメントを客観的に評価し、企業の働きやすさを示す指標となります。

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株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 馬場 千寿

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事業会社での研修担当含むバックオフィス部門、教育NPOでの探究学習支援・オンラインプログラム開発等を経て、
リクルートマネジメントソリューションズに中途入社。
現在は公開型研修サービス・リクルートマネジメントスクールにて、研修商品の新規開発・ブラッシュアップ、提携先パートナーとのコミュニケーション等を担当。

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