経営とまちづくりの専門家による講演 「なぜ地方に働きがいのある会社が必要か」

更新日 2022.06.232022.06.21オピニオン

opinion_220620_main.jpg

2022年版 各地域における「働きがいのある会社」優秀企業のメディア向け発表会において、経営とまちづくりの専門家として活動し、内閣府地域活性化伝道師や各種政府委員なども務めている木下斉氏にご講演いただきました。

※本記事は2022年5月25日に開催した2022年版 各地域における「働きがいのある会社」優秀企業(以下、地域優秀企業)発表イベントの抄録です。

※同日に開催された木下氏×株式会社現場サポート 福留氏×GPTWジャパン代表 荒川によるトークセッションの様子はこちら:働きがいを地方創生につなげる組織づくりのヒント

木下 斉氏
1982年東京都生まれ。高校生時代からまちづくり事業に取り組み、2000年に「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。09年、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。全国各地の地域再生会社への出資、役員を務める。著書『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』等多数。

生産性の高い働き方ができる環境を整えることが日本の重大テーマ

今、日本では人口減少が進んでいますが高齢者は増えているのが現状です。一方、子どもや生産年齢人口は急激な勢いで減少しています。働きがいのある職場づくり、生産性の高い働き方ができる環境をどう整えるかが重要なテーマです。性別も年齢も関係なく活躍できる環境が求められています。

すでに90年代には日本の生産年齢人口がピークを迎えており、2000年代、2010年代と減少し、1000万人以上がピークから減っている状況です。政策的には生産年齢人口から外れる上の世代の方々にも社会参画を続けてもらうことで、どうにか全体の労働力を確保しようとしていますが、生産年齢人口が減ることは、国にとって、また我々の生活面において、さらには社会保障面でも少なからず大きな影響を与えています。「若くて優秀な人材を…」という話がよく出るのですけれども、そう簡単に雇用するのは難しいのが現状です。

明治から昭和にかけて日本は「人余り」の国でした。人を大切に扱いながら働いてもらうというよりは、「働かせてやっている」というスタンスが長く続いていた国でもあります。増加し続ける人口をどう扱うかという方が社会問題だったわけです。

しかしながら現在は、いかにもって気持ちよく働いてもらうか、やりがいのある仕事をつくっていくのかが経営側に求められています。大きく局面が変わりましたが、そこに気づいている会社と気づいていない会社があるのも事実です。私も全国で仕事しているのでよくわかるのですが、気づいている会社とそうでない会社の格差が広がっています。

opinion_220620_01.png

東京であろうと地方であろうと働きがいのある企業に人は集まる

都心から地方に移住して働くことに関心がある人もいますが、東京に集まってくる構図は変わっていません。地方に関心がある方が感じる不安は働き口についてです。2018年の調査によると4割以上の方が、「納得できる仕事に就けるか不安」に感じています。いきなり地方に移住するのは怖いということで、思いとどまる方がかなりいるということです。

また、東京の企業は若くて優秀な人材の取り合いですから、就業環境や福利厚生、会社の目的性なども含めて高める努力をしています。地方は中小企業も多く、経営者が固定的で、同族企業も多いため、会社をよくする競争に遅れている企業も存在します。

若い世代は、会社の労働条件、やりがい、地域への貢献、社会的意義、自身の長期的なキャリアを踏まえて、インターネットで念入りに調べてエントリーする方が多いです。そのため、東京であろうと地方であろうと先進的な働き方が認められる会社に、優秀な若い人材が集まるようになりました。20年前の日本とは全く違う環境になっています。

魅力的な働き口を増やすことが地方活性をする上で非常に重要です。いくら移住者に金銭的なメリットを提供したとしても、それは一過性のものでしかありません。肝心なのは民間企業、地場企業の働きがいを向上させていくことだと私は考えています。

県民所得が高い県においても、若い女性が県外流出する理由

東京一極集中の話が出てくる中でもう一つ改善の余地があるのは、ジェンダーの問題です。現在、あらゆる年代で男性よりも女性の方が地方から東京に集まってくる傾向にあります。特に、23歳、24歳の女性が全国から東京に集まってきています。これは、ただ単に東京のほうが給料や生産性が高いからではありません。愛知や三重、富山など県民所得が比較的高いところでも同じです。

つまり女性が地元での雇用に魅力を感じていない状況があります。やはり、働きがいのある仕事、やりがいのある仕事があるから、東京に出ていく人がとても多いわけです。逆にいうと、やりがいよりも自宅からの近さなどが仕事選択において重要だという方は地元に残っています。

富山県は女性の社会進出が進んでいると言われていますが、実態としては昭和型の社会進出です。富山県庁が調査をしたところ、共働きが多く県民所得が高いのですが、女性が家事をしながら働いているため疲弊していることが見えてきました。女性の社会参画が進んでいると思われていましたが、実は負担を押し付けていたことが明らかになり、現在改善に向けて議論と働きかけをしているところです。女性のキャリアアップ志向に応える仕組みづくりや、女性管理職登用についても指針を出していく取り組みをしています。

愛知県の企業の場合も、昔ながらの伝統的な会社経営をしているところが多く、女性のキャリアアップの機会がある環境ではないと、若い方々がシビアに見て判断しています。経営者層がいくら「うちの地域はこうだから」という話をしても、どんどん出て行くわけです。そのことをきちんと見つめようという時代にようやくなってきたと感じています。

地域に素晴らしい企業が生まれ競争すれば、地域の未来が明るくなる

これから必要な取り組みは、働きがいのある魅力的な企業を賞賛して、地域に素晴らしい会社があることを発信していくことが考えられます。素晴らしい会社が1社でもあれば、地域の活性化につながるし、地域の未来を支えることにも繋がります。ある意味ダムのように、地元から若者が出ていかないように堰き止めてくれるわけです。

報酬が高いとか、会社の規模が大きいとかそういうことだけではなく、トータルで評価されていることが共有されることが必要だと思います。また、それが世の中に広く知られることで、若い方々に働きがいのある会社が地域にも存在するという情報を届けることができます。評価される企業には良い人材がどんどん集まり、周辺の企業もそれに習うことで魅力的な企業が増えていくと、プールされる人材の数も増えます。ある会社でキャリアを積んだ方が、また別の会社で活躍するという具合に、地域の産業を強くしていくことも考えられます。

複数の企業が連携して、産業を強くしていくことができると、人口減少の中でも魅力的な地域になります。ヨーロッパ諸国、特にフランスなどが典型的ですが、第2次世界大戦からずっと人口が減少しているのです。ところが首都よりも、地方の産業基盤があって国際的な競争力がある産業、ワインとかチーズとかそういうもので成功しています。所得も高く、やりがいを感じられるって仕事が残っている地域は、大都市の平均所得の高い所得を記録しているのです。

日本もこれから成熟の過程に入ります。働きがいを高めることが、地域の産業を育てていくことに繋がると、地域の活性化そして、日本全体の活性化へと繋がっていくと私は思っております。

一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事 木下 斉氏 プロフィール

opinion_220620_profile.jpg

1982年東京都生まれ。高校生時代からまちづくり事業に取り組み、2000年に「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。09年、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。全国各地の地域再生会社への出資、役員を務める。著書『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』等多数。

本内容は2022年5月時点の情報です。

「働きがいのある会社」を
目指しませんか?

GPTWは世界約60ヶ国・7,000社以上の導入実績を活かし、企業の働きがい向上や広報をサポートします。

  • 自社の働きがいの現状を可視化したい
  • 働きがい向上の取り組みを強化したい
  • 採用力・ブランド力を向上させたい