シニアの働きがいを高めるカギは「仕事の意味実感」

更新日 2023.10.052023.10.03レポート

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Great Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)は、「働きがい認定企業」(2021年7月~2022年9月調査実施)の中から、特にシニア(管理職を除く55歳以上)の働きがいに優れた企業を各企業規模部門別に選出しました。

●選出企業一覧はこちら
2023年版 シニアランキング選出企業一覧

その調査結果を踏まえ、GPTW Japan代表の荒川がシニアランキング上位企業の特徴を紐解き、シニアの働きがいを高めるヒントについて解説いたします。

※本記事は2023年版 日本における「働きがいのある会社」シニアランキング 記者発表会の抄録です。

シニアの働きがい傾向を働きがいの5要素から分析

2023年度版の日本における「働きがいのある会社」調査で、認定企業に選ばれた企業の中から、シニア層(管理職を除く55歳以上)の方々にとって働きがいがあると評価された企業を、大中小の各部門の上位5社を選出し、「シニアランキング」として発表しています。本年度、大規模部門の1位はディスコで、昨年に引き続き2年連続での受賞となりました。中規模部門の1位はサイバーリーズン、そして小規模部門の1位はクラウドストライクとなりました。各部門2位以下と選出理由は2023年版 シニアランキングページにてご覧いただけます。

ここからは、シニアランキングの傾向分析を紹介します。まず、「働きがいのある会社」ランキングでは、調査結果において一定の基準を満たす企業を「認定企業」としています。ここでは便宜上、基準を満たせなかった企業を「不認定企業」と表現させていただきます。認定企業と不認定企業を比較しながら、ランクインしている企業の特徴を抽出することで、日本の課題であるシニア層が活躍するためのヒントをお伝えできればと思います。

※参考記事:「働きがいのある会社」認定・ランキングの評価方法

対象となるシニアの属性から説明します。1万360名のデータを元に分析しますと、雇用形態は正社員が多く、性別は男性が74%、勤続年数は21年以上が多くを占めています。

続いてシニア層がどのような要素をもとに働きがいを感じるのかの調査です。アンケートで確認している信用、尊重、公正、誇り、連帯感という5要素のうち「誇り」が相対的に高いことがわかりました。一方で、「公正」は相対的に低い傾向にあります。以下の表にある黒の棒グラフが全回答者で、赤がシニアの回答者です。

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ランキング上位企業のシニアは仕事に意味・価値を感じている

シニアの「誇り」については、認定企業と不認定企業のどちらも高い傾向にあります。年齢別に見てみると、認定企業と不認定企業ともに、25歳以下の若年層のスコアが高く、そこから35歳から44歳くらいまで下がり、そこからまた上がっています。認定企業だけを見た場合、25歳以下の水準に匹敵するくらいシニア層の誇りのスコアが上がっていることがわかりました。不認定企業の場合は、そこまでの伸びはありません。

report_231003_02.pngこの差に寄与している要因を調べると、「私の仕事は、会社の中で『単なる職務』ではなく特別な意味を持っている」という設問において顕著な差がありました。シニアランキングにランクインしている企業では、25歳以下と比べても8ポイント高く、不認定企業は逆に低い結果が出ています。仕事の意味・価値を感じられることが、シニアランキングのランクイン企業において非常に特徴的であり、重要なポイントだと考えています。

シニアの働きがいを高める上で着目すべき設問

report_231003_03.pngシニアが感じる意味・価値をどうしたら高められるのか調べるために相関分析をしました。他の設問との相関が高い「相関係数0.8以上」の中で、「地位や立場に関わらず公平に扱われている」や「特別に認められる機会がある」という設問が、仕事の意味・価値にインパクトを与えるのではないかと考えています。

つまり、この設問に関わる施策をすることにより、シニアが仕事の意味・価値を実感し、働きがいが高まるという構造だと考えています。

シニアも組織貢献、社会貢献をしたいと願っている

ここで一つ、シニアの方の仕事の意味・価値が高まった事例を私の書籍から抜粋して、ご紹介します。

「自分だからこそできること」にフォーカスし、自分の仕事を通じて組織にどれだけ還元できるのかが働きがいを高めます。シニアだからといって、シニアだけが集まる組織を組成するのではなく、様々な年代がいる組織の中で自分の強みを組織に還元し、地位や立場に関わらず公平に扱われ、そして認められることで、貢献実感を持つことができます。これが働きがいにつながるのです。

こちらの事例で紹介している山田さんは、私が新卒入社したリクルートマネジメントソリューションズの営業統括部長でした。今は営業プロフェッショナル職として、ポストにつかずに働いています。紆余曲折を経て、やりがいを持って働くことができた事例を書籍にも載せているので、興味がある方はぜひお読みください。

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出典:荒川陽子「働きたくなる職場のつくり方」(かんき出版)

最後に、ランクイン企業の事例を紹介して終わりたいと思います。2023年版シニアランキング大規模部門にて3位を獲得したアッヴィ合同会社は、仕事の意味実感を高める施策として、ERG(Employee Resource Group)活動を設立しました。優先的に取り組むテーマを設定し、そこに従業員を集め、それぞれのテーマにおいて必要な取り組みを考える活動です。

その中で、「GENERATIONS」のチームは、さまざまな世代の人たちがそれぞれの違いを共有し、理解し合い、多様な働き方を促進しています。これにより、誰もがチャレンジできる職場を作っています。シニアが認められ、自分の力を発揮できる環境が整っているようです。

傾向分析をまとめると、シニアランキングのランクイン企業では、自分自身の仕事や会社組織に対する誇りが高いです。そして、仕事に特別な意味を感じています。これが「誇り」においても非常に重要であり、シニアの活躍のキーワードになると考えています。

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Great Place to Work® Institute Japan 代表  荒川 陽子 プロフィール

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2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。コロナ禍をきっかけに働き方と生活のあり方を見直し、小田原に移住。自然豊かな環境での子育てを楽しみつつ、日本社会に働きがいのある会社を一社でも増やすための活動をしている。著書に「働きたくなる職場のつくり方」(かんき出版)。

本記事は2023年9月時点の内容です。

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