最新調査から見る「働きがい」の傾向/アンケート調査から見えてきた「静かな退職」の職場への影響とは?

更新日 2025.03.052025.03.05レポート

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Great Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)は認定・ランキング参加企業のアンケート結果を点数化し、一定レベルを超えた会社を「働きがい認定企業」として毎月1回発表しています。さらに、認定企業のうち特に働きがいの水準が高い上位100社を「働きがいのある会社」ランキング ベスト100として毎年2月に発表しています。

●選出企業一覧はこちら
https://hatarakigai.info/ranking/japan/2025.html

2025年版のランキングの結果を踏まえ、GPTW Japan代表の荒川が、ランキング発表と傾向解説を行うとともに、日本における「静かな退職」に関する最新の調査結果を発表しました。
※本記事は2025年版 日本における「働きがいのある会社」記者発表会の抄録です。
※静かな退職に関する調査2025年の調査レポートはこちら:https://hatarakigai.info/library/report/20250304_3849.html

「働きに見合った報酬」「仕事に行くことが楽しみ」のスコアが上昇

2年連続で「働きがいのある会社」調査に参加した企業のスコア変化を分析したところ、昨年と今年のスコアの違いに、いくつかのポイントが見えてきました。ポイントは3つです。

  • 1つ目:スコアの変化は大きくはないものの、低下した企業よりも改善した企業が多い。着実なスコア改善の傾向が見られる。
  • 2つ目:最もスコアが改善した設問は、「働きに見合った報酬が支払われている」。各社の賃上げ努力が従業員に伝わった。
  • 3つ目:世界的に見ても、日本は「仕事に行くことが楽しみ」という設問のスコアが低い。しかし、今年はそのスコアが若干上昇した。

続いてスコア変化について見てみます。前回の調査では、スコアが低下した企業が36.1%と最も多かったのですが、今回は、スコアが変化なし、もしくは2ポイント以内の増減に収まった企業が多数という結果になりました。

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特に大規模部門(1,000名以上)では、相対的にスコアが低めだった企業のスコアを上げる努力が実を結んだ傾向が見られました。

昨年と今年を比較し、スコアが改善した設問は?

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まず、報酬に関する設問です。賃上げの取り組みが従業員に浸透していることがうかがえます。「経営・管理者層の期待していることが明確になっている」という設問も改善しました。また、「質問しやすい環境が整っているか」といった設問も改善しています。経営層が従業員と積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を強化している証拠だと考えられます。

続いて、「仕事に行くことが楽しみである」という設問です。今年はわずかにスコアが向上した点が重要なポイントです。この設問について、過去4年間のデータを振り返ってみました。

4年前のスコア:44% 今年のスコア:48%

4年間で4ポイント上昇しており、じわじわと底上げが進んでいることが分かります。日本企業の取り組みが少しずつ前進し、エンゲージメントや働きがいが向上している証拠だといえるでしょう。

静かな退職に関する独自調査

「静かな退職(QuietQuitting)」は、2022年にアメリカで生まれた概念です。この言葉を日本語訳して「静かな退職」と呼んでいます。仕事に対する意欲や熱意を持たず、必要最低限の業務のみをこなす働き方を指します。

GPTW Japanでは昨年も静かな退職に関する調査を行い、これにより「静かな退職」を実践する人の実態が見えてきました。今回は、「静かな退職」が組織の「働きがい」に与える影響について企業で働く男女を対象に調査を行いました。

まず、「静かな退職」実践者がどの程度いるかを調査しました。メディアでの取り上げ回数やインターネットでの検索件数が増えているため、実践者も増えているのではないかと考えましたが、結果としては微増でした。

前回調査(2024年12月):2.4% 今回調査(2024年12月):2.8%

とはいえ、静かな退職の実践者を年代別に見ると、30〜34歳を除き、全体的に割合が増加しています。今後より増えていくことが示唆されます。

「静かな退職」の認知度は?

「静かな退職」の認知度は20代の認知度が比較的高いという結果になり、若い世代ほどこの概念を知っている人が多い傾向が見られました。役職別で見ると、一般従業員や中間管理職では認知が進んでいる一方、経営層では知らない人が多いという結果が得られました。

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「静かな退職」を実践している人がいる場合、上司はどのように対応しているのかという点も調査しました。一般的な仮説として、「意欲が低い部下に対しては、マネジメントの時間を減らすのではないか?」と考えていましたが、調査結果は意外なものでした。結果として、77.9%の管理職が「静かな退職を実践している部下」に対して、通常の部下と同等か、それ以上の時間をかけていることがわかりました。

この結果から見えてくるポイントは以下です。

  • 管理職・中間管理職は「静かな退職」を認識しつつも、公正にマネジメントしようと努力している。

  • 一方で、経営層・役員は「静かな退職」による管理職の負担増加を認識していない可能性がある。

中間管理職が「静かな退職」を解決しようとしても、異動・配置、評価制度などの権限が限られているため、思うように対処できません。「静かな退職」の対策を現場任せにすると、中間管理職の負担が増大する危険性があります。経営層は管理職の負担増をしっかりと認識し、適切な支援を考える必要があるという示唆が得られました。

「静かな退職」が職場に与える影響

「静かな退職」を実践する本人たちが、どのような影響を感じているのかを調査しました。

収入やスキルの向上に対しては一定の不安を抱えているが、職場で孤立することについては、それほど不安に思っていないという結果になりました。「静かな退職」を選択する人が、キャリアやスキルアップよりも、自分の働き方を優先していることを示唆しています。

さらに、「静かな退職は職場にも影響を与えない」と考えている人が比較的多いという結果が出ました。つまり、「自分がこの働き方を選択しても、特に周囲に影響はない」という認識を持っている実践者が多いのです。

一方で、上司層の認識は大きく異なり「静かな退職は職場に影響を与える」と考えていると分かりました。特に「職場に影響がない」と答えた割合は、静かな退職の実践者に比べて、上司層では大きく減少していました。つまり、上司は「静かな退職は職場に悪影響を及ぼしている」と強く感じているということです。

また、職場への不満や連帯感についての認識にも、大きなギャップがありました。特に「連帯感」の部分では、上司層と実践者の意識の差が顕著でした。管理者層は「職場の連帯感を高めたい」と考えているのに対し、静かな退職を実践している人は、「孤立すること」に対して特に不安を感じていないということです。この「認識のギャップ」が、マネジメントの難しさを生む要因になっていると考えられます。

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静かな退職に関する調査まとめ

今回の調査結果を踏まえ、企業が取り組むべき課題は以下の通りです。

  • 「静かな退職」に関する経営層の認識を高める

  • 「働きがいのある会社」をつくるための、職場の連帯感向上施策を強化する

  • 中間管理職の負担を軽減し、適切なマネジメント支援を行う

  • 従業員のエンゲージメント向上のための施策を強化する

経営層のみなさまには、「静かな退職」を単なる個人の問題として捉えるのではなく、組織全体の課題として取り組んでいただきたいと考えています。

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Great Place To Work® Institute Japan 代表  荒川 陽子 プロフィール

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2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。コロナ禍をきっかけに働き方と生活のあり方を見直し、小田原に移住。自然豊かな環境での子育てを楽しみつつ、日本社会に「働きがいのある会社」を一社でも増やすための活動をしている。著書に「働きたくなる職場のつくり方」(かんき出版)。

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