テレワークが進む今、ソーシャルディスタンスを超えて働きがいを高めるには?

2020.07.20

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2020年版 日本における「働きがいのある会社」若手ランキングの発表の場で、同ランキング中規模部門3位のサイボウズ株式会社青野社長とGPTWジャパン代表荒川の対談を実施しました。『従業員は新たな働き方への関心が高まっている』『従業員がアフターコロナの企業に求めること』『働き方改革はニューノーマルでどう変わる?』という3つのテーマについて、サイボウズ社の事例をもとに語り合います。

緊急事態宣言が解除されても、会議のために出社することはやめた

GPTWジャパン代表 荒川陽子(以下 荒川) 「100人いたら100通りの働き方がある」という考えのもと、一人ひとりが希望の働き方を実現している御社。離職率も年々低下し、直近ではわずか約3.8%だとお聞きしています。その背景には働きがいを高めるためのヒントがあるはず…ということで、代表の青野さまに対談の機会をいただきました。今日はよろしくお願いします。

サイボウズ代表取締役社長 青野 慶久氏(以下 青野) よろしくお願いします。

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荒川 では早速、1つ目のテーマです。こちらのスライドは当社が最近実施した独自調査の結果ですが、「テレワークを経験して、それまでの慣習について感じたことを教えてください」という質問について、実に76.9%の人が「毎日出社する必要がない」と回答しています。御社ではテレワークがすでに浸透しているかもしれませんが、社員同士が物理的に離れている状況で連帯感や一体感をつくり出す難しさを経験してこられたのではないでしょうか。

青野 10年ほど前から当社は「在宅勤務したい人はどうぞ」という感じでやってきました。最初の1人、2人くらいの頃は「あの人、会社にこないね」という不満もありますが、次第に「私も試してみようかな」という人が増えていくのですね。やがて「在宅勤務もいいね」という人が増えて、不満も減っていく。ただ、そこに行き着くまでに数年はかかったかな。

荒川 定着するまでに時間がかかるのですね。

青野 そうですね。在宅勤務は当たり前の働き方として浸透しましたし、今回の新型コロナウイルスの感染予防のために全社員を在宅勤務にしても特に問題はないだろうと思っていました。ですが、意外とそうではなかった。これまで私やベテランの人間は毎日出社して、会議をするときは会議室に集まり、在宅の人はリモートで参加してもらっていたのですが、声が聞き取りにくいなど想像以上に参加者間で情報格差が生じていた。今回、全員リモート参加に切り替えたら、声は聞きやすいし、全員の顔は見られるし、断然こっちの方がいいなと。「これで働きやすくなりました」と社員に言われて、「働きにくい原因をつくっていたのは自分たちだったんだなぁ」と反省しましたね。

荒川 新型コロナウイルスへの対応で、働き方改革のステージが上がったわけですね。

青野 そうです。ただ、テレワークが当たり前になるまで一気に改革することは難しくて、少なくとも3年から5年はかかると認識されておいたほうがいいですね。

荒川 御社はテレワークを主体とした働き方になっていくのですか。

青野 少なくとも会議をするために会社に来ることはないかもしれませんね。ちなみにサイボウズのオフィスにはバーカウンターとキッチンがあるのですよ。会議のためではなく、みんなで集まってワイワイするために会社に行くという時代が近づくかと思います。

荒川 テレワーク中心だからこそ、リアルで集まりたくなる仕掛けも必要かもしれませんね。

青野 お酒を飲みながら、ワイワイガヤガヤしてね、そういうところから連帯感が生まれたりしますから。

荒川 最初からそういう狙いがあってつくったのでしょうか。

青野 いや、私も最初に聞いたときはびっくりしました。キッチンをおいて、冷蔵庫をおいて…っていう話を聞いたとき、「何を言っているんだ?」って思いましたよ。でも今は「なるほど。連帯感をつくるためにはむしろ必要だな」と考えるようになりました。

荒川 バーは必要なものだったのですね。

若手のチャレンジを引き出すために「典型的な日本企業の反対のこと」をやれ

荒川 では次のテーマに移りたいと思います。こちらは先ほどと同じ調査で、「今後恒常的なテレワークをする場合に、会社に期待すること」を質問した結果です。

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圧倒的に高いのはワークライフバランスですが、注目したいのは「新しいことや改善にチャレンジする機会」です。御社では新しいチャレンジをどう引き出しているのでしょうか。

青野 日本の企業のよくない点は、若手に「どんどん新しいことにチャレンジしろよ」っていうのに、提案を持っていくと「それは前例があるのかね」「費用対効果はどうなんだね」とかいろいろ細かいところを詰めて若手のモチベーションを奪うところですね。だから、この逆をすればいいんです。若手から出てきた提案を引っ張り上げてチャレンジさせる。当社には、「ファイヤースターター」という企画があります。企業理念に合致すれば、どんな企画でも言ってくれと。グループウェア上で提案をシェアして、みんなの「いいね!」をいっぱい集めたら、どんどん進めようじゃないかと。去年面白かったのは、「インフルエンザの予防接種を個人が負担するんじゃなくて、会社で負担したらどうだろう」という提案です。確かにそのほうが感染リスクも低くなるし、みんなで生産性高く働けますよね。

荒川 上司にチャレンジしようよって言われてもどうしたらいいかわからなかったり、雑談の中で発言しても聞き流されたり、そういうことが多くの企業で起こっていると思います。チャレンジを推奨、促進する仕組みをつくることが重要ですね。

青野 意見を集めるプラットフォームがあるといいですね。サイボウズでは誰かが発信した意見が、全社で共有されます。面白い提案は、火がついたように社内に伝播していきます。ITツールの活用とそれをオープンにすることも大事ですね。

自分のキャリアを自分で決められることがやりがいにつながる

荒川 それでは最後のテーマです。

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「働き方改革はニューノーマルでどう変わるか」。今回のテレワークを含めて、「働きやすさ」の部分は一歩進んだと認識していますが、一方でやりがいはどうでしょうか。青野さんはどうお考えですか?

青野 「働く職種を自分で選べる」「働く仲間を自由に選べる」など、人事裁量をメンバーに渡していくことができれば、やりがいが高まると思っています。サイボウズはどの部署に所属するか自分で起案することができます。本人が起案するので意図しない異動はありません。

荒川 自分で選べるわけですね。

青野 営業がプロモーションをやりたいと起案したこともありますし、開発がお客さまのほうに出ていく仕事がしたいと起案したこともあります。日本の人事はそこまで思い切って権限を渡せていないですよね。でも、キャリアをデザインしていくのは自分の仕事なのだと示していかないと。そうすると自発性が出て、自立心が湧いて、やりがいに繋がります。

荒川 キャリアを自分で考えるのはもちろん、さらに突っ込んで自分で選ぶことを実現させているのですね。

青野 最近は加速しすぎまして。部署の仕事を知らない新入社員にも配属先を選ばせたりしていて、やりすぎたなと思いましたけれどね。

荒川 混乱している様子が頭に浮かびます(笑)。

青野 無理やり選ばせるのは間違いだったかなと。ただ、スタンスはこんな感じですね。

荒川 一人ひとりに権限が与えられるのは素晴らしいと思います。一方で、組織の全体最適はどう担保されていますか。

青野 もし、誰もやりたくない仕事があるのなら、その理由を考えた方がいいです。予算が異常に少ないとか、非効率な仕事をさせられるとか何かしら原因があるはず。つまり、メスを入れるべき仕事も炙り出されるのです。

サイボウズも2005年の段階ではブラックなITベンチャーだった

荒川 なるほど。そうやって100人100通りの働きがいを喚起する施策を、試行錯誤で作り上げてこられたのですね。終了時刻が迫ってきたので質疑応答に移りたいと思います。

質問者 新型コロナの影響で新入社員と顔を合わせることが難しく、連帯感を醸成できない企業が少なくないと思います。一方でサイボウズでは新人も生き生きと働いているように感じました。その秘訣を教えてください。

青野 当社は入社式から研修まで、全てオンライン化しました。オンラインであれば、在宅勤務の人も参加できます。入社式では何百人もの先輩が新人たちを歓迎しました。また、社員の連帯感が上がらないという場合にぜひ試してほしいのは、マネジメントが「何かしてあげなきゃ」と背負うのではなく、社員の言葉を拾って、彼ら自身に投げかけることです。「連帯感が上がらないと思うならどうしたら上がるのか、予算もつけるから考えてみて」って聞いてみるのですよ。

荒川 なるほど。

青野 そうするとね、「任された感」が生まれるし、「貢献した感」や「感謝された感」も生まれます。自分たちは現場のことなんて何にもわかっていないのだから、新人のことなんてわかるはずがない。それなら、彼らに解決策を見つけてもらうしかないから、信頼して任せるのがいいですよね。

荒川 私は「予算もつける」っていうところがポイントだと思いました。「アイディアを出せ」っていうだけだとしんどいですが「予算を渡すから」と言われると可能性が広がりますよね。最後に一言、新しい働き方にチャレンジしているみなさまに応援メッセージをお願いいたします。

青野 今でこそ当社はこうした場に呼んでいただけるようになりましたが、2005年の段階ではブラックなITベンチャーでした。在宅勤務がしたい人や働く時間を自分で選びたい人がいたら、その人の意見を取り入れるなど、一つ一つ積み重ねていくと、意外とできることが増えてきたのです。今はテクノロジーも進化していますし、やりながら学習もできますので、一つ一つの課題と向き合っていただきたいと思います。今日はありがとうございました。

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久氏

松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)副会長などを歴任。

Great Place to Work® Institute Japan 代表 荒川 陽子

2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。

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