環境変化が激しい中でも「働きがい」を高め続けるためにランキング1位企業が今取り組んでいること(後編)
更新日 2022.04.192022.04.19対談
働きがいのある会社ランキングの大規模部門・中規模部門・小規模部門1位の3社の代表とGPTWジャパン代表の荒川陽子が、環境変化が激しい中で「働きがいのある会社」はいかにつくられるのかディスカッションをしました。前編・後編の2回に分けてお届けします。ぜひ前編とあわせてご覧ください。
※本記事は2022年3月10日に開催した【GPTW事例セミナーVol.6】働きがいのある会社」ランキング1位企業が語る事例セミナーのパネルディスカッション抄録です。
<記事のポイント>
✔「従業員の自律性」と「会社としての一体感」をいかに醸成するか
✔「働きがのある会社」1位企業3社の取り組みの工夫とこだわり
「従業員の自律性」と「会社としての一体感」をいかに醸成するか
荒川 次のテーマは「多様な価値観を認め合う会社づくりの中で、『従業員の自律性』と『会社としての一体感』をどのように醸成していくことが大切でしょうか」です。個性と自律性を尊重することと一体感の醸成は二律背反するところもあると思うのですが、どうすれば統合できるとお考えですか。
小出様 共有化する部分と多様性を認める部分の振れ幅がどうか、という問題だと思います。共有化する部分がないとバラバラな化学反応を起こしてしまいますし、化学反応を認めるためには多様性を認めたほうが良いです。そのバランスは、企業ごとに異なると思います。企業の生い立ちや置かれている環境、成熟度によっても違うと思いますうのですよね。
揺るぎないコアバリューがある前提で、多様性を認め合い、尊重し合うことに関しては、企業によって濃淡が異なって良いのではないかと思います。その上で、柔軟性や自律性を組み合わせることが、重要になってくるのではないかと考えています。
荒川 企業の置かれている状況によってバランスは異なるけれども、一体感をつくるためには、カルチャーという要素が欠かせないということですね。
三村様 私が重要だと考えているのは二つです。一つは時間と情報の共有。もう一つは価値観の共有です。時間と情報の共有という観点ですと、年1回のオフサイトミーティング、四半期に1回のオールハンズミーティング、2週間に1回の絆ミーティング、それに加えて、文化部ですとか、社員の有志が回しているいろんなカジュアルなイベントを実施し、会社で流れている情報を共有し、孤立感や情報の断絶を起こさない工夫をしています。
また、社員と社員の接着剤として、コアバリューの大切さを改めて感じています。どうしてもコアバリューは額縁に入った訓示みたいになりがちですが、社員のみんなの日々の行動に生かしてほしいという思いが強いんですよね。浸透しづらいコアバリューに関しては、90分のミニオフサイトミーティングに全社員に参加してもらい、徹底的に深掘りしています。
荒川 会社としても支援しながら、一体感をつくっているのですね。石井さんはどのように考えていますか。
石井様 実は、採用段階で「この企業理念に共感できなかったら入社しないでください」と伝えています。入社した後も、企業理念の価値を追求し続ける集団だから「違う」と思ったら、いつでも別の道を選んでくださいと強く伝えています。あつまるは価値観の合う従業員が集まっているので、自然と一体感が生まれています。もちろん、仕事をする上での能力や働き方の部分は多様性を認めていますが、仕事観や価値観は徹底してそろえています。
荒川 共感する仲間と組織運営していくことが、あつまるさんのこだわりということですね。
「働きがのある会社」1位企業3社の取り組みの工夫とこだわり
荒川 ではここからはセミナー参加者からの質問にお答えいただきます。では三村さんから。「コンカーでは社員のコンディションを知るためにアンケートを行うと伺いましたが、アンケート疲れはありませんか?」とのことです。
三村様 アンケート疲れを経験しているので、心がけていることが二点あります。一つがアンケートで聞く内容を最大限少なくすること。パルスチェックの設問も徹底的に絞り込んだので8つしかありません。5分もあれば回答できます。もう一つはアンケートのスケジュールを明確に示すこと。年間スケジュールを出して、その通りに実施しています。
アンケートの結果に対して、会社がアクションをしていることを社員に伝えることも大事です。何かしらの改善活動に結びついて、働きがいが向上したり、働きやすくなったり、ポジティブな影響をもたらすことが伝われば前向きに捉えてくれると思います。
荒川 GPTWの調査もやったらやりっぱなしではなく、結果に対してリアクションすることが重要ですね。もう一つの質問です。「マネージャーの評価軸にエンゲージメントは含まれますか?」。
三村様 そもそも、エンゲージメントの低いマネージャーは管理職として最低限の条件を満たさないと考えています。現場のエースを管理職にしても必ずしもうまくと限らないのは、部下に興味がない人間もいるからです。そういう人はエンゲージメントが低いですし、部下に愛情を持てないので、間違いに気づいたら降格を含めて早めに判断するようにしています。
荒川 なるほどステップダウンや職責の変更もするのですね。石井さんにも質問がありまして「講演の中で出てきた超個人面談とはどのような面談でしょうか?」とのことです。
石井様 超個人面談は10年後以降の人生にフォーカスしてディスカッションする面談です。「20年後、30年後、人生どうする?」みたいに話すものですね。
荒川 それは上司と部下が話すのですか?
石井様 そうです。幹部の20人は私が担当し、その他の従業員は幹部が担当しています。
荒川 そこまでの長期ビジョンを話す目的はなんでしょうか?
石井様 そもそも採用する時点で、一生の付き合いをする覚悟なので、従業員の人生を応援するためにも、ビジョンや生い立ちを知って、アドバイスできる関係を築きたいと考えています。またビジョンの磨き合いをすることで、社員同士の信頼関係もより強固になるのです。
荒川 なるほど。石井さんの理念や会社経営の考え方からいろんな施策に落とし込まれているなという感じました。では続いて小出さんに質問です。「コンフィデンシャルな経営戦略会議も全社員にフルオープンにされていますか」。
小出様 グッドクエスチョンですね。答えとしてはシンプルで、私どもはニューヨーク証券取引所に上場している関係で、出せる情報と出せない情報があります。当たり前ですが、決算前の決算情報やM&Aのリストも共有できません。ただ、それ以外の経営課題などの情報は共有しています。
荒川 ありがとうございます。では最後にもう一つの小出様に質問です。「オールハンズミーティングなど何千人もの従業員が参加する場として開催するのは難しいと思いますが、最も留意していることは何でしょうか」。
小出様 例えば、東名阪の社員には各拠点に集まってもらうこともありますが、集まれない人もいるので、メトロ(都市部)vsローカル(地方)のようにならないように十分配慮しています。具体的には、リモートで参加する社員はSlackを使ってリアルタイムで質問したり、絵文字で反応したりできるような仕組みをいかして、会場にいるようなライブ感を感じられるようにしていますね。
荒川 ありがとうございます。3社3様の想いのこもった取り組みを行い、力強いカルチャーづくりを行い、それが施策に落とし込まれていることがよくわかりました。こちらでディスカッションは終了です。本日は御三方ともお忙しい中ありがとうございました。
株式会社セールスフォース・ジャパン 代表取締役会長兼社長 小出伸一 様
株式会社コンカー 代表取締役社長 三村 真宗 様
株式会社あつまる 代表取締役社長 石井 陽介 様
Great Place to Work® Institute Japan 代表 荒川 陽子
※ 本内容は2022年3月時点の情報です。