タイミー緒方氏と議論!働き方における価値観の多様化と働きがいを高める組織づくりとは ~静かな退職 調査結果を踏まえて~
更新日 2024.03.252024.03.25対談
Great Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)は、2024年2月8日に2024年版日本における「働きがいのある会社」ランキングベスト100の記者発表会を実施しました。中規模部門において12位に選出された株式会社タイミーの執行役員 緒方仁暁氏に、働きがいを感じられる組織づくりの取り組みをうかがい、その内容を受けてGPTW Japan代表の荒川陽子とのトークセッションを実施しましたので、ダイジェストでお届けします。
●選出企業一覧はこちら
2024年版 ベスト100選出企業一覧
※本記事は2024年版日本における「働きがいのある会社」ランキングベスト100記者発表会の抄録です。
※GPTW Japan代表 荒川によるランキング傾向についての解説はこちら:2024年版「働きがいのある会社」ランキングベスト100発表・傾向解説 ~働き方の新しいトレンド「静かな退職」について~
平均年齢30歳、代表26歳の若い組織「株式会社タイミー」
司会:これより「働き方における価値観の多様化と働きがいを高める組織づくりとは」というテーマでトークセッションをおこないます。まずは、緒方様より株式会社タイミーについてご紹介いただけますでしょうか。
緒方:株式会社タイミーは「タイミー」というアプリを展開し、スポットワークのマッチングサービスを提供しています。毎年事業も成長し、従業員も増えている状況で、2024年1月時点で1048名まで増えました。平均年齢は30.1歳、代表も26歳と非常に若い組織です。タイミーは「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」というミッションを掲げて事業を展開しています。従業員の行動に影響を与えているバリューは「理想ファースト」「やっていき」「バトンツナギ」「オールスクラム」の4つ。バリューに沿った行動を大切にしています。
働き方の多様性のひとつのカタチ「静かな退職」
司会:続いて、荒川さんに質問です。仕事に意義を見いだせないまま働く状態「静かな退職」に関する調査結果を踏まえ、今企業の中で何が起きているのか教えてください。
※関連記事:「静かな退職」に関する調査2024年 調査結果
荒川:まず感じるのは、働き方の多様化です。過去の日本企業、日本社会は比較的画一的でした。新卒の一括採用があり、終身雇用があることを前提として働くスタイルで、男性の正社員が一生懸命働いて、奥さんは専業主婦という画一性があったと思います。時代が変わり、ある意味仕事は最低限食べていけるだけやればいいと考える人も増えてきている。これも多様性だと思っています。
緒方:仕事で熱狂したいと思って入ったのに、少しずつそれが失われたり、期待していたものと違う一面が見えてきたりということもあると思います。企業としては、熱狂の渦をつくり続けたほうがいいんじゃないかと思いますね。
タイミーの「貢献意欲の高さ」はいかにして育まれるのか
荒川:「静かな退職」と絡めていきますと、タイミーさんの素晴らしい点は、貢献意欲の高さです。「静かな退職」を選ぶ人は、貢献意欲が少ない傾向にあります。タイミーではどのようにして貢献意欲を高めているのでしょうか。
※詳しい調査結果はこちら:表示
緒方:ミッション・ビジョン・バリューへの共感を入社時から重要視していることが、大前提としてあります。タイミーというサービスを通じて何をしたいのかを聞いて入社を決めていただいています。みなさんは、タイミーについて調べた上で受けてくれているので、「解決したい社会課題がある」「タイミーでこんなことをしたい」などの話を引き出すことを意識していますね。また、日頃のコミュニケーションツールとして、Slackを利用しているのですが、基本的にやりとりを隠すことなくオープンにしています。日頃から役員とのコミュニケーションも頻繁にありますし、スタッフ同士のコミュニケーションも活発です。
司会:これは荒川さんに聞きたいのですが、従業員のコミュニケーションにおいて、企業はどのようなことを意識する必要があると思われますか。
荒川:上司部下の信頼関係が非常に重要だと思います。上司がきちんと部下の仕事に興味を持ち、強みや今後のキャリアを踏まえた上で仕事をアサインし、「なぜその仕事をアサインするのか」を説明する。そのプロセスにおいてフィードバックもかけていく…これらを部下の期待を超えるレベルでやることが信頼関係を築く上で重要なのではないかと思います。
緒方:私は上司と部下が大事な目標をしっかりと一緒になって設定をすることと、評価をする最後のタイミングだけではなく、その間のコミュニケーションが大事だと考えています。そして、最後にフィードバックをする。タイミーが最も強化したいサイクルの一つです。また、成果や職務能力だけではなく、4つのバリューを体現できているかを評価しています。コミュニケーションやフィードバックも「このバリューができているよね」など、日ごろからバリューと絡めているのが特徴的なのかなと。あとは表彰制度ですね。四半期に一度、バリュー賞といって、バリューに基づいたエピソードを表彰します。多くのエピソードから選ぶのですが、毎回壮絶な戦いです。
荒川:タイミーさんのように、ミッション・ビジョン・バリューにこだわる企業はとても多く、素晴らしいことだと感じています。チャレンジする機会を意図的に埋め込んでいる企業さんも増えていますね。今よりも高いポジション、高いレベルにチャレンジするのは勇気がいることなので、上司に背中を押してもらえるかどうかが大事です。
緒方:当社も平均年齢が若いので、20代の役職者も多くいます。27歳で部長とか、支社長もいます。どんどんチャンスを与えると同時に、役員全体でどれだけフォローできるかが大事です。一方で、目の前の役割も大切にしており、現場での貢献も見える化しています。現場の課題に対して、どれだけ貢献したのか、工夫したのかが、スタンプを押すことで自動的に集計され、節目で表彰される制度もあります。
働きがいのある会社は「静かな退職」を選ぶ人にとって居心地が悪い
司会:タイミーさんのような取り組みが広がり、「静かな退職」が減ることで組織にどんな影響が広がると思いますか。
荒川:「静かな退職」を選んでいる人は、貢献意欲がなく成長も望んでいません。我々はGiftwork®と呼んでいるのですが、「お互いの期待を超える働き方」が増えていくといいと思います。Giftwork®あふれる会社は、「静かな退職」を選んだ人からすると居心地の悪い会社になります。
※ 関連記事:Giftwork®とは?
緒方:私は「静かな退職」がない職場は、従業員が熱狂を持って仕事に集中できている招待だと思います。それは例えば、お客様を喜ばせたり、サービスを磨いたりすることだと思いますが、そうした本質的なことを、熱狂的で意識の高い人たちとできることが大きい。自然と売上も上がると思いますし、個々人の貢献度も上がっていくのではないでしょうか。
熱狂を持ったタイミーのカルチャーをより濃くしていく
司会:最後に企業規模が大きくなり続けているタイミーさんがこれから取り組んでいきたい施策があれば教えてください。
緒方:制度設計を整えたいと思っています。当社の平均年齢は30歳くらいですが、この辺りからライフステージが変化する従業員が増えてくるはず。長期でも働きやすい環境をしっかりとつくっていきたいのがまず一つです。もう一つが、従業員がやりがいとともに、成長を求める傾向が強いと感じているので成長機会を充実させることです。そして、ワーカーさん(※タイミーの働き手)の声をしっかりと従業員に伝えて、熱狂を持ったカルチャーをもっともっと濃くしていきたいと思っています。
荒川:タイミーさんのお話では、「熱狂」という言葉が何度も出てきました。いかにして一人ひとりのやりがいを高めるか、考えられているのが素晴らしいと思います。しかも、タイミーさんの場合は、企業規模が拡大するなかで実現されていますから、難易度は5倍、10倍になっているはず。おそらく緒方さんも名前と顔が一致しない方もいる、という世界観のなかにいらっしゃると思います。いかに求心力を持ちながら、役員の皆さんだけではなく、中間管理職の人たちを巻き込みながら信頼関係を築いて、難しいチャレンジをしていくのか。ぜひそのエピソードを成功事例として教えていただきたいと思っています。
株式会社タイミー 執行役員 緒方 仁暁様 プロフィール
Great Place to Work® Institute Japan 代表 荒川 陽子 プロフィール
※ 本記事は2024年2月時点の内容です。