サーベイ活用のポイントとは?組織の改善活動につなげる理想的なステップを解説
更新日 2023.05.122023.04.17コラム
昨今、様々なサーベイの導入・実施を進める企業が増えてきています。一方で、その結果を上手く活用して改善活動までつなげていくことに課題感を感じているという声も多く耳にします。本コラムでは、エンゲージメントサーベイをより活用していくためのポイントと、その理想的なステップについて紹介していきます。
サーベイとは
サーベイ(survey)とは一般的に、物事の全体像を把握するために広い範囲でおこなわれる調査のことを言います。
企業でよくおこなわれるのが従業員を対象にしたサーベイであり、従業員の満足度やエンゲージメント(会社と従業員の間の信頼関係や結びつき)の現状を把握し、向上させることを目的におこなわれます。
サーベイの種類
いわゆる組織向けのサーベイというのは世の中に数多あります。よく言われるのが、「従業員満足度調査」や「エンゲージメントサーベイ」といったものです。両者はよく混同されがちですが、「従業員満足度調査」は制度や待遇といった就労・報酬条件や、仕事や職場に対して従業員がどれくらい満足しているのかを可視化するものである一方で、「エンゲージメントサーベイ」はそれらに加えて従業員の会社に対しての信頼度合いや仕事に対しての意欲がどれくらいあるのか、などもみていきます。
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その他にも、企業のコンプライアンス(=法令遵守)について従業員の意識を調査する「コンプライアンス意識調査」や、従業員のストレス状況を把握する「ストレスチェック」といったものもあります。実施の目的に応じてサーベイを使い分けている企業も多いです。
エンゲージメントサーベイが注目されている理由
近年、エンゲージメントサーベイへの注目度は非常に高まっています。特に日本においては生産年齢人口も低下をしていく中で、従業員一人ひとりの生産性をいかに高めるかというのは企業の至上命題になりつつある状況です。そうした状況に対応するために、優秀な人材を自社に留め、より多くの成果を上げるための努力が必要とされています。エンゲージメントを向上させることは離職防止や生産性向上に繋がるとして、多くの企業で注目されるようになりました。
また、ヒトを資本として捉えその価値を最大化することが中長期的な企業価値向上につながるとする「人的資本経営」という考え方も広く言われるようになってきています。
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先述の通りエンゲージメントサーベイは、自組織の現状を様々な設問項目から確認し、会社と従業員の結びつきの強さを可視化するものです。制度や待遇への満足度だけではなく、会社への信頼や仕事への意欲も含めた現状把握をしていくことの必要性から、エンゲージメントサーベイを活用した組織の改善活動や、あるいは集計結果の一部を対外向けの開示情報として活用していく例も増えてきています。
エンゲージメントサーベイを実施する会社は増えてきているものの、残念ながらその結果をきちんと活用できている会社ばかりではないという実態もあります。ここでは、エンゲージメントサーベイ活用のよくある失敗例を紹介していきます。
失敗例① 結果が放置されてしまう
まずよくありがちな例として、サーベイを実施して終わりになってしまうということです。担当者が忙しくサーベイ結果を活用した取り組みまで着手できない、あるいは好ましくないサーベイ結果を現場にフィードバックするのがはばかられるなど、放置されてしまう要因はいろいろと考えられますが、いずれにせよサーベイは取って終わりでは意味がありません。結果を現場に共有して初めて、現場は自組織の課題感や改善の必要性を認識することができます。
また、サーベイ結果をないがしろにしてしまうことは、回答に協力してくれた従業員の不満や不信感につながります。回答者は、会社がよくなってほしいという期待を持っているからこそ、日々の業務で忙しい中でもサーベイ回答に協力をしてくれるわけですので、きちんとその結果を共有しましょう。
失敗例② 取り組みを現場任せにしてしまう
サーベイ結果のデータを人事部から各現場の管理職に渡し、課題特定やその後のアクションプランの設定と実行を現場任せにしてしまう例もよくあります。もちろんそれだけでそれぞれの管理職が自組織の改善に取り組めることもあると思いますが、多くの場合は日々の業務も忙しい中で、どうしても優先順位は下がってしまいます。
また、サーベイ結果を受け取ったものの、具体的にどう進めたらいいのか困ってしまうケースも多いはずです。特にサーベイの活用に慣れていない会社ほど、現場の管理職を巻き込み対話を重ねながら、会社一体となって取り組みを進めていくことが肝要です。
失敗例③ 一度実施して満足してしまう
サーベイを実施して課題点を洗い出し、アクションプランを実行することができたとしても、そこで満足してしまってそれ以降サーベイを行わなくなってしまうというケースもあります。予算や工数の問題などがあるのかもしれませんが、1度しかサーベイを実施していないと、取り組みの結果どの程度改善したのか効果測定ができません。
また、組織には慣性が働くため、従来の風土や習慣を一度に変化させようとするのは難しいものです。仮に一度改善していたとしても元に戻ってしまうことも往々にしてあります。たとえば年に1回など、定期的にサーベイを実施して定点観測を行い、効果測定も含めた改善活動のサイクルを回すことができるのが理想です。
理想的なエンゲージメントサーベイ活用の6つのステップ
続いて、理想的なエンゲージメントサーベイの活用を進めるための具体的なステップを紹介します。取り組みの進め方は各社各様であると思いますが、一例として参考にしてみてください。
① 事務局による結果の読み取り・分析
まずは事務局(人事部など、サーベイ実施を取りまとめている部署・チーム)が調査結果に対して強みとなった点と課題となった点を整理し、その背景や原因の仮説設定を行いましょう。その際、部署や役職、年齢層といった属性ごとの傾向についても分析ができるとよいでしょう。そしてこのステップは、遅れれば遅れるほどこの後の工程にも影響が出てしまいますので、高度な分析をして時間をかけるというよりも、可能な限り早く取り組むことが理想です。
② 結果の経営層及び管理職層への共有
その後、できる限りタイムリーに経営層及び管理職層に結果を共有しましょう。共有する際には、どうしてもネガティブな面に目が行きがちですが、ポジティブなデータについてもしっかりと伝えましょう。全てのデータを逐一深掘りする必要はありません。会社にとって注目する必要のあるデータは何なのか、それに対しどうしていきたいかという方向性を確認します。組織改善の取り組みにおいて、経営層や管理職層のコミットは必要不可欠です。まずは経営層と管理職層が一枚岩となって意識を合わせることが重要です。
③ 従業員へのフィードバック
サーベイ結果を従業員にも共有します。全てのデータを開示する会社もあれば、ポイントを絞って共有する会社もあります。重要なのは、単にデータの羅列としてフィードバックするのではなく、どの点が強みとなったのか、一方で課題は何だったのかなど、目を向けるべきデータにフォーカスして共有することです。
またそれに加えて、今後会社としてはどのような取り組みを進めていく方針なのかということも従業員に発信できるとよいでしょう。またフィードバックの際、日々の業務で忙しい中回答をしてくれたことの従業員への感謝も忘れてはなりません。
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④ 重点取り組みテーマ・アクションプランの設定
次に、各職場レベルに分けて、重点的に取り組むべきテーマやそのアクションプランを設定します。会社や各職場で何を課題として認識し、どう取り組んでいくべきかということを、現場の管理職が中心となってディスカッションしましょう。職場単位によって人数が多くなりすぎてしまう場合は、複数開催にしたりディスカッショングループを分けたりするなどして、1人あたりの話ができる時間が少なくなりすぎないよう留意できるとよいです。
ディスカッションの進め方についても、以下に一例として紹介します。
1) フィードバックされた結果に対する解釈の共有
参加メンバーそれぞれがフィードバックされたデータに対して、どのように見て、どう感じたのかを率直に意見交換します。サーベイ結果に対するメンバーの認識のずれを顕在化させることが目的です。ただ、率直な意見を表明するのはメンバーからすると勇気が要ることです。場合によっては、なかなか意見が出ないこともあるかもしれません。参加者同士で、互いの意見を否定から入らない、批判しないということが大事です。
また、職場の中で発言力が強い人(管理職やリーダーなど)はできるだけ最後の方で発言するようにするなどの工夫も考えられます。
2) 目指したい方向性のすり合わせ
次に、顕在化した解釈の違いを一旦受け止めたうえで、自分たちの職場が目指したい方向性をすり合わせていきます。このステップでは特にファシリテーター(または管理職やリーダー)の力量が問われます。ここにおいても、先述した通り互いの意見に対して否定から入るなどすることなく安心して意見を言える場の雰囲気を作れるかが重要です。
また、全員の意見が完全に一致しない場合も考えられますが、最終的にはその意見の違いも踏まえたうえで方向性を決定する必要があります。そこでは意見が取り入れられなかったメンバーが今後意見を言わなくなってしまわないように、意見を言ってよかったと感じられるよう感謝の意を示すことが大事です。
3)アクションプランづくり
アクションプランを決めていくうえで重要なのは、「~したい」という願望ではなくきちんと行為のレベルまで落とし込まれていること、そして設定したアクションの主体者と具体的な期限まで設定することです。
また、中長期的目標だけでなく短期的目標も設定できるとなおよいです。往々にしてこうした組織改善の取り組みは、すぐに大きな効果を発揮するのは難しいです。たとえ小さなことであっても、早いタイミングで目に見える成果が出せる(ポジティブな効果実感が得られる)ことは、改善活動を継続的に進めていくうえでの鍵となります。
⑤ 設定したアクションプランの定期的な進捗確認
上記でも述べた通り、組織改善の取り組みは一朝一夕に効果が出るわけではありません。事務局と各現場の管理職が連携しながら各職場で取り組みを進めやすいようなフォローアップと、取り組みの進み具合を定期的に確認していく必要があります。日々の業務もある中でどうしても優先順位が下がってしまうケースも多々あります。そのような中でも決めたアクションプランをきちんと遂行できるよう、事務局から各現場の管理職へ必要な支援をしてきましょう。
⑥ サーベイの再実施・取り組みの効果測定
課題に対して改善が見られているかどうかを数値で確認します。実施後はまた①のステップ(事務局による結果の読み取り・分析)に戻り、次なる課題解決に向けたサイクルを回していきます。エンゲージメントサーベイの実施頻度としては、年に1回、最低でも隔年に1回のペースで実施できるとよいでしょう。あまりに実施頻度を高くしてしまうと、現場の負荷が大きくなりすぎてしまいますし、逆に頻度が少なすぎても取り組みの効果をタイムリーに測ることができません。両者のバランスを取りながら、自社にとって効果的だと思える頻度で実施しましょう。
まとめ
ここまで、エンゲージメントサーベイ活用のポイントについてお伝えしました。
エンゲージメントサーベイを導入していても、「結果をうまく使いこなせていない」、「どう活用したらいいかわからない」といった声をよく耳にします。先述した通り、エンゲージメントサーベイとは組織の状態を可視化するものです。そして当然、現状を測っただけでは組織はよくなりません。むしろその後の改善活動こそが本番です。ぜひ本記事も一つの参考としていただければ幸いです。
Great Place To Work®が提供する「働きがいのある会社」調査は、社員が働きがい(エンゲージメント)を持って働いている会社の多くに共通する5つの要素―信用・尊重・公正・誇り・連帯感―を測るサーベイです。自社の働きがいの現状を数値で可視化できるのはもちろん、スコアが一定水準だった場合は「働きがいのある会社」認定・ランキングに選出され、人的資本開示にも活用できます。経営や人事に携わる方は、ぜひご検討ください。
また、エンゲージメントサーベイだけではなく、実施後のアクションプランを考えていく「働きがいワークショップ」も提供しています。人・組織領域の専門的なトレーニングを積み、企業の働きがい向上について知見を持ったトレーナーが進行を担当し、参加者がエンゲージメント向上について主体となって考え、明日から「一歩」が踏み出せるように運営を行います。ご興味があればお問い合わせください。
Great Place To Work® Institute Japan コンサルタント 岡部 宏章
2021年にGreat Place To Work(R) Institute Japanに参画し、営業を担当。「働きがいのある会社」調査の提供や、認定・ランキングの普及に努める。