アルムナイ採用とは?意味やメリット、実施のポイントを解説
更新日 2024.07.032024.07.02コラム
企業の採用戦略として注目されている「アルムナイ採用」とは、以前その企業に勤務していた元従業員(アルムナイ)を再雇用することを指します。人材の獲得競争が激しい昨今おいて、アルムナイは企業文化や業務に精通しているため、迅速な戦力化が期待できることなど、多くのメリットがあります。本コラムでは、アルムナイ採用のメリット・デメリットに加え、活性化するためのポイントと事例について解説していきます。
アルムナイ採用とは
アルムナイ採用とは
そもそも「アルムナイ」とは、学校や大学などの教育機関を卒業した後の卒業生(卒業者)のことを意味し、転じて人事分野では企業における定年退職者以外の退職者を指す言葉として使われています。
「アルムナイ採用」とは、何らかの理由で自社を退職した人を再び雇用する採用手法のことです。アルムナイは既にその企業の文化や業務に精通しているため、社内での迅速な適応が期待されます。また、アルムナイ採用は企業にとって採用コストの削減や、信頼性の高い人材確保の手段となります。
アルムナイ採用の実施には、まずアルムナイとの継続的な関係構築が重要です。近年ではソーシャルメディアの普及により、企業と元従業員とのつながりが維持しやすくなりました。また、アルムナイネットワークを構築し、定期的なイベントや交流の場等を設けることで、アルムナイとのつながりの維持・強化を企図します。
アルムナイ採用は、もともとは主に海外の企業や、日本国内では外資系企業において注目されることが多かった制度です。転職がポジティブな文脈で捉えられることが増えてきた昨今、日本企業においても、アルムナイネットワークを構築し、企業と退職者がコンタクトを取り続ける仕組みを作っているケースが徐々に増えてきています。
リファラル採用やカムバック採用との違い
「リファラル採用」や「カムバック採用」といった似た概念もありますが、両者とはやや意味合いが異なります。
リファラル採用とは、自社従業員のネットワークを使って採用する手法を指します。この手法では、従業員や外部の関係者からの推薦によって新しい人材の採用を企図します。アルムナイ採用においても、在籍している従業員の推薦によって採用となるケースもありますが、リファラル採用においては特に対象者をその企業の退職者に限らないため、その点が異なります。
一方で、カムバック採用は、その企業の退職者を再雇用する制度である点は、アルムナイ採用と同様です。しかし、一般にカムバック採用では結婚、育児、介護、配偶者の転勤などといったやむを得ない理由で退職した従業員の再雇用を指して、転職や独立による退職者を含まず、アルムナイ採用とは区別して使うケースがあります。
アルムナイ採用が注目されている理由
昨今、アルムナイ採用が注目されている背景には以下のような背景があります。
労働人口不足による人材獲得競争の激化
ここ何十年と言われて久しいことですが、日本では少子高齢化が深刻化しており、労働人口減少は避けられない状況です。内閣府「高齢社会白書」によれば、今後も生産年齢人口(15~64歳)はさらに減少していき、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)になると予測されています(下図)。
現在でも多くの企業が人材の獲得に苦慮しており、たとえ採用できたとしても、価値観のアンマッチや育成リソースの不足などといった理由で、早期に離職となってしまうケースも少なくありません。優秀な人材の獲得と定着は、今後さらに難しくなっていくとみていいでしょう。
こうした状況の中で、既に企業文化や業務プロセスを理解しているアルムナイの採用は、非常に効果的な手段となります。アルムナイは既に企業の内部事情を理解しているため、迅速に業務に適応できる即戦力として期待されます。また、再雇用されるアルムナイの多くは、企業に対して一定の信頼と愛着を持っており、長期的な視点で貢献してくれる可能性も高いです。労働人口不足の中で、アルムナイ採用は人材獲得の効率を高め、企業の競争力を維持するための重要な戦略として位置付けられています。
人材流動性の高まりによる、転職・退職に対するイメージの変化
現在の労働市場では、人材の流動性が高まり、転職や退職に対するイメージが大きく変わってきています。以前は「終身雇用」が一般的で、一度就職した企業で定年まで働くことが理想とされていました。しかし、グローバル化や技術革新が進む中で、キャリアアップや自己成長を求めて転職することが一般化し、ポジティブな行動として認識されるようになりました。むしろ優秀な人材ほど、会社に依存しないキャリア形成を求め、積極的に転職を含めた様々な可能性を模索するケースも増えています。このような人材の流動性の高まりと、転職や退職に対するネガティブなイメージの希薄化は、一度その企業を退職した後でも双方気まずくなることなく継続的な関わりを持ったり、再度その企業にジョインしたりすることを後押ししているといえます。
人的資本経営の考え方の広まり
近年、人的資本経営の考え方が広まり、企業における人材の価値が再評価されています。人的資本経営とは、従業員一人ひとりの能力や経験、知識を重要な資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる考え方です。
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この考え方の下では、従業員のエンゲージメントやキャリア開発に重点が置かれ、従業員が企業に対して長期的に貢献できる環境を整えることが求められ、アルムナイ採用とは親和性が高いです。実際に、経済産業省が作成した「人材版伊藤レポート2.0」において、中長期的な人材ポートフォリオのギャップに対するアプローチの一つとして、「アルムナイとの持続的な関係構築」が挙げられています。
アルムナイ採用のメリット
アルムナイ採用が企業にもたらすメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
自社にマッチした即戦力人材が採用できる
アルムナイ採用の最大のメリットの一つは、自社にマッチした即戦力人材を採用できることです。元従業員は既に企業の文化や業務プロセスを理解しており、新たに適応する時間やコストが不要です。彼らは以前の経験を活かしてすぐに貢献できるため、業務の立ち上がりが早く、即戦力としての期待が高まります。また、元従業員であれば企業のミッションやビジョンに共感しているケースが多いため、組織内での摩擦が少なく、スムーズにチームに溶け込むことができます。
さらに、アルムナイの過去の業績やパフォーマンスを企業側は把握しているため、リスクの低い採用が可能です。アルムナイのスキルセットや適性が明確であるため、適材適所での配置が容易になり、組織の効率性が向上します。
つまり、アルムナイ採用は企業にとって信頼性の高い人材獲得手段となり、業務の効率化と生産性の向上にも寄与します。
採用・教育コストを抑えることができる
アルムナイ採用は採用・教育コストを大幅に抑えることができます。新規採用の場合、求人広告の掲載費用、面接の時間と労力、そして新入社員研修などの初期教育に多くのリソースが必要です。一方、アルムナイを再雇用する場合、これらのコストが大幅に削減されます。アルムナイは既に企業の文化や業務プロセスを理解しているため、再教育の必要性が低く、即戦力として迅速に業務に取り組むことができます。
さらに、彼ら彼女らは既存のネットワークや人間関係を活用できるため、新しい環境への適応もスムーズです。このように、アルムナイ採用は企業の採用プロセスを効率化し、コストを削減する効果があります。また、教育期間が短縮されることで、早期に高いパフォーマンスを発揮できるため、全体的な業務効率の向上にも寄与します。
結果として、アルムナイ採用は企業のリソースを最適化し、経済的な利点をもたらす有効な手段となります。
新たな知識と視点により、組織の強化・活性化につなげることができる
アルムナイ採用は新たな知識と視点の獲得につながる重要な機会を提供します。アルムナイが企業を離れて他の組織で経験を積むことで、新しいスキルや業界知識、異なるビジネスプラクティスを学びます。これらの新しい知見を持ち帰ることで、企業内部に新たな視点や革新的なアイデアを導入することができます。例えば、アルムナイが他社でのプロジェクト管理手法や最新の技術トレンドを学び、それを再び自社に適用することで、業務効率の向上や新しいビジネスチャンスの発掘に寄与することなどが考えられます。また、異なる企業文化や働き方を経験したことで、多様な働き方やコミュニケーションスタイルを受け入れ、組織の柔軟性を高めることができます。
このように、アルムナイ採用は単なる人材補充にとどまらず、組織の知識基盤を拡充し、競争力を強化する重要な手段となります。企業はこれを活用して、変化する市場環境に対応するための新たな知見を獲得し、持続的な成長を促進することができます。
企業ブランディングにつながる
アルムナイ採用は企業ブランディングに大きく寄与します。アルムナイが再び企業に戻るという事実は、その企業が魅力的な職場であることを示す強力な証拠となります。これは、企業が良好な職場環境や健全な企業文化を持ち、一度離れても再度働きたいと感じる場所であることを外部に示します。特に、競争が激しい市場において、優秀な人材を引きつけるためには、企業のブランディングが重要です。アルムナイ採用の成功事例を通じて、企業はその魅力と信頼性を強調し、新規採用活動においても有利に働くことができます。
また、アルムナイが企業のアンバサダーとして、外部でポジティブな企業イメージを発信することも期待できます。これにより、潜在的な採用候補者やビジネスパートナーからの信頼を得ることができます。
結果として、アルムナイ採用は企業のブランド価値を高め、持続的な成長と発展を支える重要な要素となります。
アルムナイ採用のデメリットとその対処法
アルムナイ採用が企業にもたらすデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。推進の際の注意点として、認識しておけるとよいでしょう。
人事・賃金制度の整備が必要となる
アルムナイ採用のデメリットの一つは、人事・賃金制度の整備が必要となることです。アルムナイを再び雇用する際には、彼ら彼女らが持っているスキルや経験を適切に評価し、公正な給与や待遇を提供する必要があります。しかし、アルムナイと既存従業員の間で賃金や待遇のバランスを取ることは難しい課題です。例えば、アルムナイが外部での経験を経て新しいスキルを習得して戻ってくる場合、そのスキルに見合った給与を支払わなければなりませんが、これが既存従業員との不公平感を生む可能性があります。
このような問題を解決するためには、再雇用時の評価基準を明確にし、アルムナイのスキルや経験を客観的に評価できる制度を構築することが求められます。具体的には、再雇用時のポジションや役割に応じた給与レンジを設定し、それに基づいて給与を決定する方法が考えられます。また、再雇用後のパフォーマンスを定期的に評価し、必要に応じて昇給や昇進を行う仕組みも重要です。
さらに、アルムナイが戻ってきた際に既存従業員が感じる不公平感を軽減するためには、透明性の高いコミュニケーションが不可欠です。企業は再雇用のプロセスや評価基準を全従業員に対して明確に説明し、理解を得る努力をする必要があります。これにより、アルムナイの再雇用が公正かつ適切であることを従業員全体が認識し、不満や摩擦の発生を防ぐことができます。
こうした人事・賃金制度の整備は、企業全体の人材管理にとっても重要であり、長期的な視点での人材育成と組織の健全な発展に寄与するものです。従って、アルムナイ採用を成功させるためには、企業は柔軟かつ公正な人事・賃金制度を確立し、透明性の高い運用を行うことが必要です。
企業文化の硬直化につながりうる
アルムナイ採用のもう一つのデメリットは、企業文化の硬直化につながりうる点です。アルムナイを再雇用することは、その従業員がすでに企業の文化や価値観に適応しているため、短期間での即戦力として期待されます。しかし、アルムナイばかりを再雇用することが常態化してしまうと、新しい視点や多様な考え方が組織に取り入れられにくくなり、企業文化が硬直化するリスクにつながります。
企業文化の硬直化は、組織のイノベーションや柔軟な対応能力を低下させる要因となります。特に、急速に変化する市場環境においては、新しいアイデアや異なる視点が重要であり、それが競争力の源泉となります。しかし、アルムナイばかりが再び集まる環境では、過去の成功体験や既存の慣行に固執しがちで、新しい取り組みに対する抵抗感が強まる可能性があります。
この問題を回避するためには、アルムナイ採用と同時に多様な人材の採用も積極的に行うことが重要です。外部から新しい視点や経験を持つ人材を採用することで、組織に新たな風を吹き込み、企業文化の活性化を図ることができます。また、社内で異なるバックグラウンドを持つ従業員同士の交流やコラボレーションを促進する仕組みを導入することも効果的です。
さらに、再雇用されたアルムナイに対しても、企業の文化や価値観を再確認し、進化させるための研修やトレーニングを提供することが求められます。これにより、アルムナイが過去の経験に固執することなく、新しい環境に適応し、柔軟な思考を持つことができます。
企業文化の硬直化を防ぐためには、アルムナイ採用のメリットを享受しつつ、多様な人材の採用と組織内の多様性を維持するバランスを取ることが不可欠です。これにより、企業は持続的な成長と革新を実現することができるでしょう。
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既存従業員の理解を得る必要がある
アルムナイ採用を進める際のデメリットとして、既存従業員との調整が必要となる点が挙げられます。アルムナイが再び企業に戻る際、既存従業員はそれに対して様々な反応を示すことがあります。例えば、再雇用されたアルムナイが以前の同僚や上司であった場合、新たな上下関係や職務分担に戸惑いや不満を感じることがあります。このような状況は、チームのダイナミクスに影響を及ぼし、業務の効率や士気に悪影響を与える可能性があります。
既存従業員との調整を円滑に行うためには、まず再雇用のプロセスを透明にし、公正な基準に基づいて行うことが重要です。企業はアルムナイの再雇用に関する情報を適切に共有し、既存従業員に対してその背景や理由を明確に説明することが求められます。これにより、既存従業員が再雇用の決定を理解しやすくなり、不満や摩擦の発生を抑えることができます。
また、再雇用されたアルムナイが適切にチームに再統合されるよう、入社後のオリエンテーションやトレーニングを充実させることが重要です。これにより、アルムナイが新たな職場環境に迅速に適応し、既存従業員との協力関係を築くためのサポートが提供されます。さらに、チームビルディング活動や定期的なミーティングを通じて、コミュニケーションを促進し、相互理解を深める取り組みも有効です。
企業は、再雇用の際に既存従業員の意見や感情を尊重し、適切なフィードバックを提供することも忘れてはなりません。従業員の声を聞くことで、潜在的な問題を早期に発見し、対策を講じることができます。例えば、再雇用による役職や職務の変動に対して、柔軟に対応するための職務再編や昇進機会の提供などが考えられます。
既存従業員との調整をしっかりと行うことで、アルムナイ採用の成功確率が高まり、企業全体の調和と生産性を維持することができます。これにより、アルムナイの再雇用が企業にとって持続可能な成長を支える要素となるでしょう。
アルムナイ採用を活性化するための4つのポイント
ここからは、アルムナイ採用を活性化するためのポイントを紹介していきます。
アルムナイ採用を制度化し退職者を受け入れる社内体制を整える
アルムナイ採用を活性化するためには、アルムナイ採用を正式な人事戦略として位置付けて制度化し、退職者を受け入れるための社内体制を整えることが必要です。制度化することで、アルムナイが再び企業に戻るプロセスが明確になり、採用の一環として正式に取り扱われます。具体的な取り組みとして、アルムナイ専用の再雇用プログラムを設計し、アルムナイがどのようなプロセスで再び企業に戻ることができるかを明確にします。再雇用の際の評価基準や選考プロセスを透明化し、公正な再雇用手続きを確立することが求められます。また、再雇用に際しての適切な給与や待遇の見直しも重要です。これにより、アルムナイが企業に戻る際の不安を軽減し、スムーズな再雇用を実現します。
社内体制の整備とともに、現従業員にもアルムナイ採用の意義を理解してもらうことも重要です。これには、社内での啓蒙活動やトレーニングを通じて、アルムナイが再雇用された場合のメリットや期待される役割を周知することなども含まれます。これにより、アルムナイが戻りやすい環境を作り出し、再び企業で活躍する機会を提供することが可能となります。
制度化と体制の整備を通じて、アルムナイ採用のプロセスをスムーズかつ効果的に実施し、企業の成長と発展に貢献することが期待されます。
イグジットマネジメントに注力する
アルムナイ採用を活性化するためには、退職時のイグジットマネジメントに注力することも不可欠です。イグジットマネジメントとは、従業員が退職する際に企業が行う一連の管理プロセスを指します。このプロセスを通じて、退職者に対する丁寧な対応を行い、企業とのポジティブな関係を維持し、将来的に再雇用の可能性を高めることができます。具体的には、退職面談を通じて従業員の退職理由や将来的なキャリアプランを詳しく聞き出し、退職者が企業に対して感じている課題や不満を理解することが重要です。これにより、企業は内部の問題点を把握し、改善のための具体的なアクションを取ることができます。また、退職する従業員に対して感謝の意を示すことも忘れてはいけません。これにより、退職後も企業に対する好意的な感情を持ち続けてもらうことにつながります。
イグジットマネジメントをしっかりと行うことで、退職が企業にとっての損失ではなく、新たなつながりを築く機会とすることができます。これにより、アルムナイ採用の可能性が広がり、企業にとって有能な人材を再び確保するための重要な戦略となります。
定期的に交流できるネットワークを設ける
アルムナイ採用を活性化するためには、企業とアルムナイが定期的に交流できる仕組みを設けることが重要です。具体的には、アルムナイ向けのイベントやセミナーを開催する、ニュースレターやSNSを通じて情報発信を行うなどの方法があります。これにより、アルムナイは企業の最新情報や動向を常に把握できるため、再び企業に戻る際のハードルが低くなります。
また、対面イベントやオンラインプラットフォームの活用を通じて、アルムナイ同士の交流を促進することも有益です。これにより、アルムナイが互いにサポートし合い、企業に対するポジティブなイメージを共有することができます。
さらに、企業はアルムナイのキャリア進展を支援するためのプログラムや、継続的な教育・トレーニングの機会を提供することも考慮すべきです。アルムナイは常に自身のスキルセットをアップデートし、企業にとっての有用性を維持することにつながります。また、研修プログラムを通じてアルムナイとの関係を強化し、彼らのキャリア開発をサポートすることで、企業に対するロイヤルティ向上にも寄与します。
こうした継続的な交流の場を提供することで、アルムナイとの関係を強化し、再雇用の機会を増やすことができます。
雇用形態の多様性を担保する
アルムナイ採用を活性化するためには、雇用形態の多様性を担保することが重要です。現代の労働市場では、多様な働き方が求められており、企業はそれに応じた柔軟な雇用形態を提供する必要があります。これにより、アルムナイが再び企業に戻る際の選択肢が広がり、再雇用のハードルが低くなります。具体的には、フルタイムだけでなく、パートタイムやリモートワーク、フレックスタイム制度など、さまざまな働き方を選べるようにすることが求められます。これにより、アルムナイが自身のライフステージやキャリアプランに合わせて、最適な働き方を選択できるようになります。
また、プロジェクトベースの短期契約や業務委託等も検討することで、アルムナイが自身の専門性を活かして企業に貢献できる機会が増えるでしょう。企業が多様な雇用形態を提供することで、アルムナイは柔軟な働き方を実現できるため、再雇用に対する抵抗感が減少します。雇用形態の多様性を担保することで、企業は急な人材ニーズにも迅速に対応しやすくなります。
雇用形態の多様性を担保することは、企業がアルムナイの再雇用をスムーズに行うための重要な要素です。これにより、アルムナイ採用の活性化が促進され、企業は持続的な成長と競争力の維持を図ることができます。
アルムナイ採用に取り組んでいる企業事例
最後に、GPTWが発表している働きがい認定企業が取り組んでいるアルムナイ採用の取り組み事例をご紹介します。
A社
この企業では、会社の枠を越えた人材育成への貢献を目指し、2018年からアルムナイネットワークの導入をスタートしました。ネットワークを通じて、会社の最新情報や、アルムナイに限定した再雇用や業務委託の求人情報などの提供を定期的に行っています。また、アルムナイ向けキャリア支援サービスとして、独自のAI型人事システムを用いて、個性に応じた新たな環境での適応や、今後のキャリアについてサポートを行っています。現在では、約500名のアルムナイがネットワークに登録をしており、実際に再雇用に至ったケースも多くあります。
アルムナイ採用を成功させるためには、まずはアルムナイネットワークの母集団形成が重要です。当事例で特に優れているのは、企業側にとっては採用強化、アルムナイ側にとっては自身のキャリア形成と、相互にメリットのある長期的なパートナーシップを築くことに成功している点です。企業側にとってだけではなく、アルムナイ自身にもメリットを感じられるものでなくては、アルムナイネットワークに登録し続けるインセンティブが働きづらいです。A社においては、この点の設計がうまく機能していると言えます。
B社
この企業では、起業やキャリアアップのための退職を“卒業”と呼び、最終出勤日にはカフェスペースに集合して花束贈呈をするなど、卒業を祝う式を行っています。Facebook上でアルムナイネットワークを作っており、継続的にアルムナイパーティに招待し、自社との関係継続を図っています。
B社事例におけるポイントは、従業員の退職をポジティブに捉えて、退職者が前向きな形で企業を去ることができるよう、工夫されている点です。そうすることで、退職した後でも企業への愛着を感じ、再度企業に戻りやすい状況をつくることができています。
働きがいのある会社を目指して、アルムナイにとって魅力のある会社づくりを
アルムナイ採用は、企業の持続的な成長や、未来を見据えた中長期的な人材戦略として有効な手段となりえます。しかし、ただ制度として導入されているというだけでは不十分で、ここまで述べてきたようなポイントも参考にしながら、導入・運用を検討してみてください。
また、制度・運用面のみならず、アルムナイ採用の成功には、アルムナイにとって愛着や魅力を感じられる企業であり続けることが大前提であると言えます。よいカルチャーづくり・働きがいのある組織づくりも同時並行で追及していくことが、これからの時代により求められていくことになるでしょう。Great Place To Work®の「働きがいのある会社」調査では、組織の働きがいの現状を確認することができ、一定水準を超える結果となった場合には「働きがい認定」が取得可能です。「働きがい認定」を取得すれば、アルムナイにとって退職後も「良い会社である」との認識が残り続け、よりアルムナイ採用も円滑になることでしょう。ぜひ我々のサービスを活用しながら、従業員にとって働きがいのある会社づくりを目指していただければと思います。
Great Place To Work® Institute Japan コンサルタント 岡部 宏章
2021年にGreat Place To Work(R) Institute Japanに参画し、営業を担当。「働きがいのある会社」調査の提供や、認定・ランキングの普及に努める。