インナーブランディングとは?定義や目的、進め方や成功事例を解説

更新日 2024.08.082024.07.09コラム

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主に組織開発の分野で、「インナーブランディング」という言葉を耳にすることが増えてきました。
終身雇用制度が崩壊し、人材の流動化や多様化が進んでいる近年、人材流出防止に取り組む企業が増えています。また、企業が成長を続けるにあたって、従業員を管理・統制するのではなく、社内でビジョンやミッションを共有することが重視されるようになっています。
このような背景から、「インナーブランディング」は多くの企業の注目を集めています。
本記事では、「インナーブランディングとは何か」から「有効な手法・成功事例」まで、順を追ってご紹介します。

インナーブランディングとは

インナーブランディングの定義

そもそも、私たちが耳にする「インナーブランディング」という言葉は、どのような意味で使用されているのでしょうか。
「インナーブランディング」とは、企業理念や価値を定義し、自社の従業員に対して共感と行動変容を促す活動を指します。「インターナルブランディング」や「インナーマーケティング」とも言われますが、同じ意味で使われている言葉です。

インナーブランディングの具体的な施策としては、社内外への広報活動や社員研修などの教育活動に加えて、報酬制度や人事評価制度などの制度改革も含まれます。社内報や日報といった、昔から日本企業で親しまれている発信方法は勿論、組織の理念浸透のためのイベントやワークショップまで、幅広い手段があります。

インナーブランディングは、あらゆる役職・年次の社員が企業理念への理解を深め、組織のカルチャーやアイデンティティに親しむことで、「組織が理想の姿に近づく」ことを目指しています。

インナーブランディングとエクスターナルブランディングの違い

「ブランディング」という言葉からは、「対消費者でブランドバリューを訴える」という意味を想起する人も多いかもしれません。

しかし、「ブランディング」には、上記のイメージに該当する「エクスターナルブランディング」と、社内に対して働きかけ、従業員の意識を高める「インナーブランディング」の二つが存在します。

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これまでは、社外の消費者に向けて、企業・製品の価値を伝え、根強いファンを獲得する「エクスターナルブランディング」が主流でした。
しかし、企業が掲げるビジョンやブランドイメージが社内で浸透していない状態で「エクスターナルブランディング」に注力しても、本末転倒です。
働く一人ひとりが「組織が何を目指していて、自分自身の仕事とどのように関わっているのか」理解し、理念やビジョンが浸透した状態であるからこそ、企業として説得力のあるメッセージを発信できるのです。

インナーブランディングの目的

インナーブランディングの目的は、組織内の従業員に対して企業のブランド価値やビジョン、ミッションを浸透させることです。

これにより、従業員の企業に対するエンゲージメントを高め、一貫したブランドメッセージの発信を促します。従業員が企業の価値観や目標を理解し共感することで、日々の業務においてブランドの一貫性が保たれ、顧客に対しても統一されたブランドイメージを提供することができます。

また、従業員のモチベーションやチームワークの向上にも寄与し、結果として企業の競争力を高めることにつながります。インナーブランディングは、企業全体のパフォーマンス向上とブランドの長期的な成功を支える重要な戦略です。

インナーブランディングが注目されている理由

戦後、急速な経済復興を遂げる中で安定した労働力を確保する必要があったことから、長らく日本企業において終身雇用制度が当たり前となっていました。
しかし、近年少子高齢化が進む中で、労働力人口の減少が深刻化し、多様な雇用形態や柔軟な働き方が求められるようになりました。労働力人口の減少が深刻化し、多様な雇用形態や働き方が一般化したほか、グローバル化や技術革新による市場の変化に迅速に対応するため、企業としても中途採用を強化するようになったのです。
雇用の流動性が高まることによって、特に世代や専門性・職種が異なる人々が集まる職場においては、終身雇用制度が中心だった時代のような「在籍年数に頼った価値観の共有」は難しくなっています。
これらのような背景から、「組織が目指す姿・存在意義を共有し、一体感を生む」インナーブランディングが注目を集めています。

インナーブランディングのメリット

インナーブランディングに取り組むことによって、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものを3点に絞ってご紹介します。

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①従業員のエンゲージメント向上・離職率低下

インナーブランディングは、従業員の企業に対する理解と共感を深め、エンゲージメントを向上させます。従業員が企業のビジョンやミッション、価値観を理解し、それに共鳴することで、自身の役割や目標が明確になり、日々の業務に対する意欲が高まります。エンゲージメントの高い従業員は、仕事に対する満足度が高く、創造力や生産性も向上します。また、従業員が企業の一員であることを誇りに思うことで、ポジティブな職場環境が形成され、チームワークや協力関係が強化されます。

エンゲージメント向上により従業員の離職率が低下することも分かっています。

厚生労働省の雇用動向調査結果によると、いずれの産業においても、従業員のエンゲージメントが高い企業(「働きがいのある会社」認定企業)は、全体平均と比較して離職率が低くなる傾向があることが分かります。

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エンゲージメント向上は、従業員の仕事に対する熱意や満足度を高め、組織へのコミットメントを強化します。これにより、従業員のモチベーションが向上し、所属組織でのキャリアを長期的に考える傾向が強まるため、結果として離職率の低下に繋がります。

インナーブランディングを通じて、安定した人材確保と組織の生産性向上を図ることも出来るのです。

②一貫したブランドメッセージの発信

インナーブランディングは、企業内の全従業員が統一されたブランドメッセージを理解し、外部に発信する能力を高めます。従業員が企業のブランド価値やビジョンを共有することで、顧客に対して一貫性のあるメッセージを伝えることが可能となります。これは、ブランドの信頼性を高め、顧客との長期的な関係構築に寄与します。さらに、ブランドメッセージの統一は、マーケティングや営業活動においても効果的であり、企業の市場でのポジションを強固にします。従業員が日常の業務においてブランド価値を体現することで、企業全体のブランド力が向上し、他社との差別化が図れます。

③組織文化の形成と強化

インナーブランディングは、企業の組織文化の形成と強化に重要な役割を果たします。従業員が企業の価値観や行動指針を理解し、それに基づいて行動することで、統一された組織文化が育まれます。強固な組織文化は、企業全体の一体感を高め、従業員同士の信頼関係を築く基盤となります。

では、組織文化が明確になることによって、どのような変化が生まれるのでしょうか。

まず、組織文化が強い企業は、他社との差別化が進み、競争力向上に繋がるでしょう。例えば、世界最大規模のコーヒーチェーンであるスターバックスは、従業員に対して企業のミッションやビジョンを共有し、全員が一体となって顧客に優れたサービスを提供することを目指しています。結果として、高い従業員満足度と顧客サービスの質を維持し、競合他社との差別化に成功しています。

また、組織文化が明確になることで、新規採用の際にもブランド理念に共感する人材を見極めやすくなります。ブランド理念への理解度が高い人材を採用できることで、入社後のミスマッチを防ぐこともできるでしょう。

関連記事:組織文化とは?4つのタイプや改革のステップ、企業事例を紹介

インナーブランディングのデメリット

インナーブランディングに取り組むメリットは大きい反面、勿論幾つかのデメリットも想定されます。

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➀実施コストとリソースの負担

インナーブランディングの実施には、時間やコスト、リソースが多く必要です。特に、中小企業やリソースが限られているベンチャー企業にとっては、全従業員に対する教育やトレーニングプログラムの実施、コミュニケーションツールの整備、ブランドメッセージの一貫性を保つためのモニタリングなどが、大きな負担となります。また、これらの取り組みには専門的な知識やスキルが必要となるため、外部コンサルタントの助言や内部の専門チーム立ち上げが必要になる場合もあり、さらにコストがかかります。結果として、インナーブランディングの実施が他の重要な業務の予算や時間を圧迫する可能性もあります。

➁従業員の反発やモチベーション低下

インナーブランディングの導入に対して、一部の従業員から抵抗が生じることがあります。従業員が、発信されるブランド価値やビジョンに共感できない場合、逆にモチベーションが低下し、生産性にも悪影響を及ぼすと想定されるのです。特に、長期間にわたり従来の価値観や業務スタイルに慣れている従業員にとっては、新たなブランディングが負担となり、ストレスや不満の原因になることがあります。また、インナーブランディングの実施が一方的な押し付けと感じられた場合、従業員の自主性や創造性が損なわれ、全体的な職場の雰囲気が悪化するリスクもあります。これにより、離職率の上昇やチームワークの低下が発生する可能性があります。

➂短期的な成果の見えにくさ

インナーブランディングには長期的な視点で取り組む必要があり、短期間ではその効果が見えにくいというデメリットがあります。従業員の意識や行動が変わり、企業全体のブランド力が向上するまでには時間がかかります。このため、短期的な成果を求める経営陣やステークホルダーにとっては、インナーブランディングの投資効果を理解しにくい場合があります。また、途中で方向性や施策を見直す必要が生じることもあり、持続的なコミットメントと柔軟な対応が求められます。これにより、計画の一貫性を保つことが難しくなり、結果として期待される成果が得られないリスクも存在します。

長期的な視点が求められ、一定のコストもかかるインナーブランディングは、推進していく上で困難にぶつかることもあります。
一方で、従業員との間で粘り強く継続的なコミュニケーションを取ること、社内から寄せられたフィードバックを施策に活かすことによって、デメリット以上の効果を得ることが出来るでしょう。

インナーブランディングの進め方5ステップ

「インナーブランディングとは」について理解を深めた上で、次は「どのように取り組むのか」という点が気になるのではないでしょうか。
ここからは、具体的な施策の進め方を5つのステップに分けてご紹介します。

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ステップ1:現状分析と目標設定

インナーブランディングの第一歩は、現状分析です。企業の現状を把握し、従業員のエンゲージメントやブランド認識のレベルを評価します。従業員へのアンケート調査やインタビュー、組織内のコミュニケーションの評価などが含まれます。この分析を基に、インナーブランディングの目的や目標を設定します。目標は具体的かつ測定可能であることが重要なので、例えば「従業員のエンゲージメントスコアを半年で20%向上させる」といったレベルで設定する必要があります。

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ステップ2:ミッション・ビジョン・バリューの明確化

次に、企業のビジョン(ありたい姿)・ミッション(使命)・バリュー(価値観)を具体的な言葉で表現します。
ビジョン・ミッション・バリューは、従業員が日常業務において共感し、実践できるものである必要があります。企業のストーリー・大切にしていることを従業員が理解し、自身の行動に結び付けることで、一貫性のあるブランド体験を提供できます。
経営陣だけでなく外部の専門家にも頼ることで、強力かつ魅力的なものにすることが出来るでしょう。

関連記事:ミッション、ビジョン、バリューとは?違いや組織浸透について解説

ステップ3:コミュニケーション戦略の構築

ビジョン・ミッション・バリューを明確にした後、それを従業員に浸透させるためのコミュニケーション戦略を構築します。従業員が自由に意見を交換し、フィードバックを提供できる環境を整えるのです。
効果的なコミュニケーションには、定期的な社内ニュースレターやミーティング、ワークショップなどが含まれます。
また、企業内の全レベルで双方向のコミュニケーションを促進するためのプラットフォーム(イントラネットや社内SNSなど)を活用することも重要です。

ステップ4:ビジョン・ミッション・バリュー浸透に向けたトレーニング

インナーブランディングの成功には、より従業員がビジョン・ミッション・バリューを理解し、実践できるようになるためのトレーニングと教育が欠かせません。これには、新入社員向けのオリエンテーションプログラムや、既存社員向けの継続的なトレーニングセッションが含まれます。
実際の業務にどのように反映させるか・意識するかを具体的に学ぶ機会を提供することで、従業員は自信を持ってブランドの一員として行動できます。
また、リーダーシップトレーニングを実施し、管理職が模範となるよう促すことも重要です。

ステップ5:評価と改善

最後に、インナーブランディングの進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて改善します。評価には、従業員のフィードバックやエンゲージメントスコアの測定、ビジョン・ミッション・バリューの理解度調査などが含まれます。これらのデータを基に、どの施策が効果を上げているか、どの部分に改善が必要かを分析します。評価結果をもとに、コミュニケーション戦略やトレーニングプログラムを見直し、より効果的なアプローチを継続的に模索します。このプロセスは、インナーブランディングの持続的な成功を保証するために欠かせません。

これらのステップを通じて、インナーブランディングは計画的かつ効果的に進めることができます。継続的な努力と改善を重ねることで、企業全体のブランド力を強化し、従業員のエンゲージメントとパフォーマンスを向上させることができます。

インナーブランディングの手法

インナーブランディングの方針・戦略を立てた上で、具体的な打ち手案はいくつか考えられます。特に、前述の「ステップ3:コミュニケーション戦略の構築」や「ステップ4:ビジョン・ミッション・バリュー浸透に向けたトレーニング」の中身に該当するものです。以下では、その中の代表例をお伝えします。

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➀社内イベントの開催

社内イベントは、従業員同士の交流を深め、企業のビジョンや価値観を共有するための有効な手段です。例えば、全社的なミーティングやチームビルディング活動を定期的に開催することで、従業員が企業の方向性や目標を理解しやすくなります。また、こうしたイベントではブランドに関する成功事例やストーリーを共有することができ、従業員がブランド価値に対する理解と共感を深める機会となります。社内イベントは、従業員のモチベーションを高め、一体感を醸成するために重要です。

➁ビジョン・ミッション・バリューの浸透プログラム

ビジョン・ミッション・バリューを従業員に浸透させるための教育プログラムは、インナーブランディングにおいて欠かせません。新入社員向けのオリエンテーションや、既存社員向けの継続的な研修プログラムを通じて、従業員に確実に理解させることが重要です。具体的な事例や実践的なワークショップを交えることで、従業員が自分の役割をビジョン・ミッション・バリューと結びつけやすくなります。これにより、日常業務において一貫したメッセージを発信することができます。

➂社内コミュニケーションツールの活用

イントラネットや社内SNSなどのコミュニケーションツールを活用することで、従業員間の情報共有と意見交換を促進します。これらのツールは、ビジョン・ミッション・バリューを日常的に強調し、従業員が常に最新の情報を得られる環境を提供します。また、双方向のコミュニケーションを促進することで、従業員が自発的にブランドについて議論し、理解を深めることができます。

➃管理職・リーダー向けトレーニング

管理職やリーダー向けのトレーニングを実施し、彼らがブランドの模範となるよう促します。リーダーがビジョン・ミッション・バリューを体現することで、他の従業員にもその行動が伝播しやすくなり、組織全体でのブランド一貫性が保たれます。リーダーシップトレーニングでは、ビジョン・ミッション・バリューを実践する具体的な方法や、従業員をどのように指導するかについて学びます。

➄ストーリーテリングの活用

企業の歴史や成功事例、顧客の声などを、ストーリー仕立てで社内共有します。感情に訴えるストーリーを通じて、従業員がブランドに対する共感を深め、自分の役割に誇りを持つことを促します。ストーリーテリングは、抽象的なメッセージを具体的で理解しやすい形にするための効果的な手法です。特に、従業員自身が関わったプロジェクトや成功体験を共有することで、日常業務にどのように影響するかを実感しやすくなります。

➅社内アンケートとフィードバック

定期的に、働きがいやエンゲージメントについて調査するアンケートを実施し、従業員の意見やフィードバックを収集します。従業員の声を反映した改善策を講じることで、ブランドに対する共感と信頼を高めます。また、フィードバックの結果を、透明性をもって共有することも重要です。従業員が自分の意見が反映されていると感じることで、エンゲージメントが高まり、ブランド価値に対する理解と実践が進みます。アンケート結果は、ビジョン・ミッション・バリューの浸透度や従業員の満足度を把握するための重要な指標となります。

➆表彰制度の導入

ビジョン・ミッション・バリューに沿った行動をとる従業員に対して、報奨や表彰を行うインセンティブ制度を導入します。これにより、企業の価値観に基づく行動を促進し、従業員のモチベーションを向上させます。インセンティブ制度は、具体的な成果を上げた従業員を公に認めることで、他の従業員にも良い刺激を与えます。例えば、ブランドの価値向上に貢献したプロジェクトのリーダーやチームを表彰することで、ビジョン・ミッション・バリューが日常業務にどのように反映されるかを明確に示すことができます。

➇社内メディアの活用

社内ニュースレターや社内報などのメディアを活用して、好事例を定期的に発信します。これにより、従業員がブランドについて常に最新の情報を得られるようにし、意識を高めます。社内メディアは、ビジョン・ミッション・バリューの浸透を促進し、従業員の関心を引き続けるための重要なツールです。具体的な事例やインタビューを通じて、ビジョン・ミッション・バリューがどのように実践されているかを伝えることで、従業員の理解を深めます。

➈顧客からのフィードバック活用

従業員が直接顧客と接する機会を増やし、顧客からのフィードバックを共有します。顧客の声を聞くことで、従業員はブランドの重要性を実感し、顧客満足度向上に向けた行動が促されます。例えば、カスタマーサポート部門や営業チームとの連携を強化し、顧客とのコミュニケーションを積極的に取り入れることで、自社の発信するメッセージが現場でどのように受け入れられているかを理解します。

➉ワークショップやブレインストーミングセッション

ブランドに関連するテーマで定期的なワークショップやブレインストーミングセッションを開催します。従業員が自社に対する理解を深め、新しいアイデアや改善点を積極的に提案できる場を提供することで、ブランド強化を図ります。これらのセッションでは、従業員が自由に意見を交換し、創造的な解決策を見つけることが奨励されます。

インナーブランディングの企業事例

実際の現場では、インナーブランディングはどのように実践されているのでしょうか。
ここからは、4つの企業事例をご紹介します。

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➀経営方針を浸透させる「ミートアップ」

コンサルティング業のA社では、全社方針の浸透と相互交流を目的とした「ミートアップ」を行っています。
各部門の戦略決定の時期に合わせて合宿形式で行われており、全社員が参加する重要なイベントです。ここでは全社方針についての議論を行うだけではなく、企業理念を改めて確認する他、メンバーとトップ間での対話、部門間の交流も行います。
また、A社の社員は1,000名近くの規模であるため、複数回に分け、1開催あたり50名程度での実施としています。このようにすることで、議論がしやすく、また、各回参加者同士が議論や食事を通じて深く交流できるため、相互理解が深まります。各部門が独立して動くのではなく、共通のビジョンに向けて全社で連携し、お互いの理解を深めるために、この「ミートアップ」は最も重要な場となっているのです。
開催場所も、地方に複数の会場を用意しており、その土地ごとにユニークなアクティビティを実施しています。理念浸透だけでなく交流の機会としてアクティビティを設けることで、メンバー同士が互いの距離感を縮め、仕事の場では見られない相手の個性や新たな一面を知ることが出来ます。

➁バリューを体現する取り組みを称賛する「表彰制度」

情報通信業のB社では、バリューを体現することで実現できた事業インパクトのある取り組みや、業務改善の取り組みを賞賛する表彰を、半期ごとに実施しています。
表彰内容は、「業績に大きく貢献した個人・チームを称える賞」「業務の改善活動を通じて、事業や組織に大きく貢献した個人・チームを称える賞」といったものだけでなく、「みんなの活躍を支えた立役者である個人・チーム」や「チームの成果を引き上げたリーダー」など、多岐に渡る観点で評価・賞賛するものとなっています。

表彰ノミネート者はマネージャー層からエントリーを募っていますが、推薦する際のエントリー項目として、「B社のバリューを体現した行動」について記入を求めています。これによって、企業として大切にしていることと、表彰対象者との一致が図れるのです。
また、表彰式では単に受賞者の発表をするだけではありません。一部の賞については、ノミネートされた社員が対象となった取り組みの内容をプレゼンテーションし、その場に参加している全従業員が投票をして順位を決定する、といった参加型の表彰式になっています。

➂理念について伝える「役員プレゼンテーション動画」

サービス業のC社では、理念の理解浸透や業務での実践促進するために、役員が理念について3分ほどでプレゼンテーションする様子を一発撮りし、定期的に社内SNSで配信しています。
アーティストが楽曲を歌う様子を一発撮りして配信するYouTube動画をオマージュした企画で、ともすれば堅くなりがちな「理念浸透」を、役員が遊び心を持ってリードする取り組みです。
「役員が理念をどう解釈しているか」と、それにまつわるエピソードを全社へ配信することによって、社員が自分自身の解釈とすり合わせ、日々多忙な中でも理念に立ち返るきっかけを作っています。

➃役員メンバーと誰でも・何でも話せる「相談タイム」

飲食業のD社では、全メンバーが公平に役員全員と直接話せる時間を設けています。
毎週同曜日・同時間帯・30分単位で枠が設定され、全メンバーが誰でも公平に、役員に対して企画提案や事業の進捗・相談など何でも直接話せる場です。新規事業や企画を持ち込み、承認されればスピード感持って推進できるだけではなく、日ごろ感じていることを忌憚なくぶつけることもでき、想いを分かち合う場となっています。
2021年に始まって以降決して形骸化することなく、毎週予約が埋まるほど活発に運営されており、社内の信用・信頼が深まる機会になっています。
役員・メンバーが共に自組織・事業に対し向き合うだけでなく、この取り組みを契機として、多くの事業やコミュニケーション、新しいキャリアも生まれています。

インナーブランディングに有効な「働きがい認定・ランキング」

ここまで、企業が持続的に成長する上で注目されている「インナーブランディング」の定義や実際の事例についてご紹介してきました。

インナーブランディングは、企業のビジョンや価値観を従業員に浸透させ、一体感を醸成するための重要な施策です。この取り組みを強化するためにGreat Place To Work®の「働きがい認定・ランキング」の取得は極めて有効です。働きがい認定・ランキングは、従業員の満足度やエンゲージメントを客観的に評価し、一定水準以上の企業を認定・表彰する制度です。

「働きがい認定」は最短2か月で取得可能で、すぐに「インナーブランディング」の取り組みにも活かせます。ご関心のある方は是非、以下より詳細をご確認ください。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 馬場 千寿

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事業会社での研修担当含むバックオフィス部門、教育NPOでの探究学習支援・オンラインプログラム開発等を経て、
リクルートマネジメントソリューションズに中途入社。
現在は公開型研修サービス・リクルートマネジメントスクールにて、研修商品の新規開発・ブラッシュアップ、提携先パートナーとのコミュニケーション等を担当。

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