メンター制度とは?目的や立場別のメリット・デメリット・いらないと言われる理由を解説

更新日 2024.12.242024.12.24コラム

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新入社員や、若手従業員の指導役として先輩従業員が成長を支援するメンター制度。従業員を教育する制度として非常に多くの企業で導入されています。

一方で、メンター制度の詳細や導入方法などがわからず、なかなか一歩が踏み出せずにいる経営者や、企業の採用・教育担当の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、メンター制度の概要や他の類似制度との違いに触れつつ、立場別のメリット・デメリットや具体的な導入方法などを網羅的にわかりやすく解説します。メンター制度を成功させるポイントや、実際の成功事例なども紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

メンター制度とは何か

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メンター制度は、若手従業員の成長を支援するために、企業内で先輩従業員がサポート役を担う制度です。まずは基本的なメンター制度の概要、メンターとメンティーの定義について解説します。

メンター制度の概要

メンター制度とは、新入社員や若手従業員が先輩従業員から直接支援・指導を受ける仕組みのことを指します。メンター制度は、組織全体の成長を促進することを目的としています。

メンター制度では、在籍年数や年齢が近い先輩従業員がメンターとして選ばれる傾向にあり、新入社員・若手従業員と在籍期間や立場が近く、相談しやすいのが特徴です。

メンターとなる先輩従業員は、新人社員や後輩となる従業員に対して日々の業務だけでなく、キャリアに関する相談や、人間関係の悩みに至るまでさまざまな課題や不安の解消をサポートします。

また、メンター制度は新人マネージャーを対象に実施されるケースもあり、マネジメントスキルの向上や、リーダーとしての資質を磨くための教育手法として活用されています。

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メンターとメンティーの定義

メンター制度では、相談役となる先輩従業員を「メンター」、支援を受ける新入社員や若手従業員を「メンティー」と呼びます。

メンター制度では、前述したように在籍年数や年齢が近い先輩社員がメンターに選ばれるのが一般的ですが、適任者であればこの限りではありません。

メンターは新入社員が抱える職場や業務上の悩みに対して精神的な支援をするのが主な役割です。定期的に面談を通じて質問や悩みに答えたり、メンティー自身の問題解決能力を育んだりできるよう、質問を投げかけながらメンティー自身が答えを見つけられるよう支援します。

このように、メンターがメンティーを指導し、サポートや助言を行うことを「メンタリング」といい、人材育成手法のひとつとして多くの企業で採用されています。

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メンター制度の導入目的

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企業がメンター制度を導入する主な目的を2点解説します。

新入社員や中途採用者の定着率向上

メンター制度を導入する目的の1つは、新入社員や中途採用者の定着率向上です。

近年、多くの企業で社員の早期離職が課題となっています。厚生労働省の統計によると、令和3年度3月卒業者の就職後3年以内の離職率は、高卒者で38.4%、短大等卒業者で44.6%、大卒者で34.9%となっています。いずれも入社後3年以内に3〜4割が離職しているという結果です。

メンターが新入社員や若手従業員の相談役として寄り添い、職場環境への適応を支援することで、早期離職率の低下や定着率の向上といった効果に繋がることが期待されています。

また、メンター制度の導入によって個別対応によるサポート体制が構築されるため、社員一人ひとりが自分に適した成長の機会を見つけやすくなる側面もあります。

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従業員の成長とキャリア育成の促進

メンター制度のもう1つの目的は、従業員の成長とキャリア育成を促進することです。

メンター制度は、メンターがロールモデルになりつつ、メンティーが自主性を発揮するきっかけを作り出すことに重きをおいた仕組みです。そのため、メンターの支援を受けたメンティーは自分の課題を振り返り、その課題を自ら解決する力が養われます。

このような自主性・自立性の高い従業員は、自らのキャリアパスを能動的に考え行動に移す力を持っているため、企業にとっても貴重な人材となります。成長意欲のある従業員が育つことで組織全体の底上げが期待できるでしょう。

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メンター制度と他制度の比較

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人事制度にはメンター制度と混同されやすい用語がいくつか存在しており、明確な違いがわからないという人も少なくありません。ここでは、メンター制度とその他の制度の違いについて解説します。

メンター制度とOJTの違い

OJT(オンザジョブトレーニング)は、実務を行いながら要点を指導する教育手法です。OJTは業務遂行能力の向上に特化しているのに対し、メンター制度はキャリア形成や精神的な支援も含め、メンティーの成長を包括的に支援する点が異なります。

OJTはあくまで実践的な知識やスキルを習得させることを主目的としているため、先輩となる従業員や上司が後輩や部下に付いて、実務と並行してやり方を指導したり、実際にやらせてみてトレーニングを行ったりするのが一般的です。

メンター制度とエルダー制度の違い

エルダー制度はOJTの一環として行われる研修制度で、主に新入社員を対象に先輩従業員が教育を行う仕組みです。「エルダー」は「年長者」や「先輩」を意味しており、企業によっては「OJTリーダー制度」や「ブラザー制度」などと呼ばれることもあります。

一見するとメンター制度によく似ていますが、エルダー制度も実務を通じて業務に直結した指導を行うため、自己成長を促進するメンター制度とは異なり、OJTに近い性質の教育制度といえます。

メンター制度とコーチングの違い

コーチングとは、対象者の自主性や能力を引き出し、目標達成のモチベーションを高めるためのコミュニケーション手法です。

コーチングは指導者が対象者に気づきを与えるという点ではメンター制度に似ていますが、支援方法や目的が異なります。

メンター制度は対話をするのに対し、コーチングは質問を重ねる方法で支援を行います。また、メンター制度はキャリア形成や個人的な成長を目的としていますが、コーチングは特定の目標を達成することを支援する点が異なります。

メンター制度とティーチングの違い

ティーチングとは、知識や問題の解決方法を直接教えることで目標達成を支援する手法です。

明確に定まっている業務プロセスや解決方法を直接指導するため、短期間で特定の知識やノウハウを伝えられるのが特徴です。ティーチングはその性質上、複数の従業員を同時に指導するようなシーンに適しています。

ティーチングは指導者が目標達成の方法や道筋を直接的に示すのに対し、メンター制度はメンティー自身で解決策を見つけ出せるよう支援する点が異なります。

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【立場別】メンター制度のメリット

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企業側のメリット

企業側から見るメンター制度のメリットは以下の4点です。

  • 従業員の指導力向上が期待できる
  • 社内コミュニケーションを活性化させる
  • 風通しの良い社内環境に繋がる
  • 離職率の低下が期待できる

それぞれ詳しく解説します。

従業員の指導力向上が期待できる

メンター制度を導入することで、メンターに任命した従業員の指導力向上が期待できます。

メンターは新入社員や若手従業員の不安や悩みに耳を傾け、メンティー自らが答えを導き出せるよう適切なアドバイスを行いますが、この過程はメンター自身の成長の機会にもなります。

メンターとしてのこのような経験は、将来管理職になる際に求められる人材育成・マネジメント・コミュニケーションなどのスキルに応用可能だからです。

社内コミュニケーションを活性化させる

メンター制度を導入することで、社内コミュニケーションが活性化する可能性があります。

新入社員の成長をサポートするためには、新入社員の上司や先輩従業員ともコミュニケーションを取る必要があるからです。メンター制度の導入により、関係者全員が部署の垣根を超えて「新入社員の成長」という共通の目標を持つようになります。結果的に従業員間の連携が深まり、社内全体のコミュニケーションの活性化に繋がります。

このように、メンター制度は企業文化をよりオープンで協力的なものに変える可能性を秘めているのです。

風通しの良い社内環境に繋がる

メンター制度は、風通しの良い社内環境の構築にも繋がります。

メンター制度では異なる部署の先輩従業員がメンターとして選ばれるケースが多く、新入社員の所属部署との交流が生まれやすいためです。

また、こうした横断的な交流があることで、関わった従業員全員が自分の所属部署以外の動向や価値観、日常的な業務の進め方を知る機会にもなり得ます。このような交流は社内の風通しを良くすることに加え、協力的な組織風土を形成することにも繋がるでしょう。

離職率の低下が期待できる

メンター制度を導入することで、離職率の低下も期待できます。

メンター制度を推進する過程でメンターとメンティーの信頼関係が深まり、新入社員の離職理由に多い孤立感や不安感を払拭しやすくなるからです。

加えて、他部署の先輩従業員と交流する機会にもなるため、新入社員の視野が広がり、職場や組織に対する理解を促すことにも繋がります。結果的に、組織へのエンゲージメント(愛社精神)が高まり、離職率の低い環境を実現できるでしょう。

メンターとしてのメリット

指導を行う側であるメンターとして得られるメリットは以下の4点です。

  • 責任感が強くなる
  • 管理職になったときに経験が役立つ
  • コミュニーケーションスキルの向上が期待できる
  • 仕事に対するモチベーション向上に繋がる

それぞれ詳しく解説します。

責任感が強くなる

メンターに任命された従業員は、責任感が強くなる傾向にあります。新入社員を指導する役割を担うことで、先輩としての自覚が生まれるからです。

特に、入社23年程度の若手従業員にこの傾向が強く、自然と「どうにかメンティーを育てあげよう」という責任感が芽生えます。また、年齢やキャリアの近い従業員を指導するにあたり、相手に寄り添った対応を求められるため、仕事に対する姿勢にもポジティブな変化が期待できます。

管理職になったときに経験が役立つ

メンター制度で得た経験は、将来管理職になった際にも大いに役立ちます。管理職に昇進すると、部下の育成が重要なミッションになり、メンターに近い役割を求められるからです。

特に、キャリアが浅いうちからメンターとして新入社員を育成する経験をしておくと、人材育成の視座を育めるため、マネジメントスキルの向上が期待できます。

このように、メンター制度は新入社員を育成するとともに、管理職候補を養成する手段としても有効です。

コミュニーケーションスキルの向上が期待できる

メンターとして新入社員を支援する過程で、コミュニケーションスキルの向上も期待できます。

メンティーに適切なアドバイスをするには、傾聴力・伝達力・共感力・動機づけなど、さまざまなコミュニケーションスキルが求められるからです。

このようなスキルが向上することで、メンター本人を取り巻く人間関係や、部署内・組織内におけるコミュニケーションも円滑になる可能性があります。このようなスキルは職場を含むあらゆる人間関係においても役立つため、人としての成長を実感できるでしょう。

仕事に対するモチベーション向上に繋がる

メンターの役割を担うことで、メンター自身の仕事に対するモチベーション向上に繋がる可能性があります。

メンター制度は、企業である程度の経験を積んだ先輩従業員が、指導者として新入社員に業務を教えます。そのため、新入社員が抱える不安や悩みにも共感しやすく、何よりもそれを乗り越えてきた経験があるため、メンティーを励ましながら寄り添うことができます。

自分の指導によって新入社員が成長していく様子を間近で見られるため、やりがいを感じてモチベーションの向上に繋がりやすいのです。

メンティーとしてのメリット

指導を受ける側であるメンティーとして得られるメリットは以下の3点です。

  • 不安や悩みの相談ができる
  • 企業理解を深められる
  • 職場環境に馴染みやすくなる

それぞれ詳しく解説します。

不安や悩みの相談ができる

新入社員にとって、新しい環境や慣れない仕事に適応するのは、精神的にも肉体的にも大きなストレスがかかるものです。このような状況下で不安や悩みを抱える新入社員にとって、仕事や職場のことを気軽に相談できるメンターの存在は心強い支えになります。

不安や悩みを解消するための相談相手がいることで、メンティーはストレスを軽減し、安心して職場に馴染めるため、早期離職を防ぐ効果も期待できます。

企業理解を深められる

メンティーにとってのメンター制度は、企業理解を深める機会にもなります。

新入社員は、自分が所属する企業の全体像を把握するのが難しい傾向にあります。自分の業務や役割に集中してしまうことで、業務上関わる人も限られるからです。

一方、メンター制度では他部署の先輩がメンターとなるケースが多く、新入社員にとっては自部署以外の従業員と交流を持つ貴重な機会になります。このような交流を通じて、企業全体に対する理解が進み、自身の役割や業務の意義を把握する助けにもなるでしょう。

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職場環境に馴染みやすくなる

メンター制度があると、メンティーはより職場環境に馴染みやすくなります。

学生から社会人になると、学生生活ではあまり関わらなかった層を含め幅広い年代、立場の人々と関わることになります。そのため、学生時代の友人のような関係を築くのは難しく、新しい環境で孤立感を抱くことも少なくありません。

しかし、立場や年代の近いメンターとの関係を構築することで、職場環境に馴染みやすくなります。職場環境にうまく慣れることができれば、自然と周囲とのコミュニケーションも生まれるはずです。

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【立場別】メンター制度のデメリットと対策

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メンター制度によって多くのメリットを得られるものの、メンター制度を運用する上でデメリットも存在します。ここからは立場別のデメリットとその対策を解説します。

企業側のデメリット

メンター制度における企業側のデメリットは以下の3点です。

  • メンターの生産性が低下することがある
  • 相性が悪いと従業員の離職に繋がってしまう
  • メンターによって成果が変わることがある

    それぞれ詳しく解説します。

    メンターの生産性が低下することがある

    メンターとして選任された従業員の負担が大きいと、通常業務における生産性が低下する場合があります。

    メンターになったからといって通常業務が減るわけではなく、単純にメンター業務が上乗せされた場合、必然的に通常業務にかけられる時間が減るからです。生産性が低下した業務の内容によっては、他部署と連携している業務や企業全体の効率に影響を及ぼす恐れがあります。

    このような事態に陥らないよう、業務の繁忙期を避けてメンター期間を設定する、メンター期間中はメンター自身の業務量を減らすなど、負担を軽減できるような配慮や仕組みが必要です。

    相性が悪いと従業員の離職に繋がってしまう

    メンターとメンティーの相性が悪かった場合、不満が高まることで双方の離職に繋がってしまう恐れがあります。

    人間関係の悪化は一般的にも特に多い離職理由のひとつであり、メンター制度においても例外ではありません。

    対策として、メンターとメンティー双方のパーソナリティをできるだけ把握しておくことや、慎重にペアリングを行うことが挙げられます。また、制度運用中に第三者が両者の関係を定期的にチェックし、問題があれば必要に応じてメンターの交代を検討できるような体制を整えておくと安心です。

    メンターによって成果が変わることがある

    担当したメンターによって、メンティーの成長度合いや成果が変わることがあります。どれだけ業務実績の高い先輩従業員だったとしても、その従業員がメンターとして優れているとは限らないためです。

    メンターとなる従業員の能力やコミュニケーションスキルには個人差があるため、メンター制度に安定的な成果を期待するのは難しいかもしれません。

    このようなギャップを少しでも軽減する方法として、研修やフィードバックなどによるメンターの能力・スキルの底上げが有効です。専任したメンターにメンティーのサポートを丸投げするのではなく、メンターを教育・養成する観点も重要です。

    メンターが感じるデメリット

    メンター制度におけるメンター側のデメリットは以下の2点です。

    • 通常業務以外の負担がかかる
    • メンターの評価に繋がらないことがある

    それぞれ詳しく解説します。

    通常業務以外の負担がかかる

    メンターは通常業務以外の負担がかかりがちです。

    通常の業務にメンター業務が上乗せされる場合は単純に業務量が増加しますが、通常業務が軽減されても精神的な負担を感じる場合があります。特に、1人のメンターが複数のメンティーを担当する場合はなおさら時間的な余裕がなくなり、業務全体に支障をきたす可能性があります。

    メンター業務の質を担保するためには、メンターが通常業務と両立できるよう、周囲の同僚や上司のサポートが欠かせません。あわせて業務量を調整するなど、負担を軽減できるよう工夫が必要です。

    メンターの評価に繋がらないことがある

    人事評価に人材育成に対する基準がない企業では、メンターを務めても自身の評価に繋がらない可能性があります。

    メンター業務を担当することで負担が増加するにも関わらず、それが評価に反映されなければメンターを務める従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。結果的にメンターを経験していない従業員もメンター業務や人材育成に携わろうという意欲を失うことにもなりかねません。

    このような負のスパイラルに陥らないよう、組織全体でメンター業務の重要性を共有するとともに、メンター業務に対する評価項目を追加するなど人材育成を後押しするような環境や制度構築をすることが大切です。

    メンティーが感じるデメリット

    メンター制度におけるメンティー側のデメリットは以下の3点です。

    • メンターと相性が悪いとストレスが溜まることがある
    • 指導力がないメンターでは成長に繋がらないことがある

      それぞれ詳しく解説します。

      メンターと相性が悪いとストレスが溜まることがある

      人によって価値観や仕事観、人間性などはさまざまなため、メンターとメンティーの相性が悪いとお互いにストレスが溜まってしまう恐れがあります。

      特に、同時期に入社した従業員がメンターと良好な関係を築いているのを目にすると、自分のメンターに対して不満を感じることもあります。このような場合はストレス要因になるだけではなく、新入社員の教育・サポートそのものがうまくいかなくなる可能性もあるため、相性は重要です。

      適切な対応ができれば速やかに問題解決できるため、メンティーがメンターに不満を抱いたら気軽に相談できる環境を整えておくことが大切です。

      指導力がないメンターでは成長に繋がらないことがある

      メンターの指導力には個人差があるため、担当するメンターによってはメンティーが期待するレベルの成長に繋がらない場合があります。新入社員が複数いる場合は、同期との間で他のメンターの話が共有されることで、不公平感を抱くケースもあるでしょう。

      対策として、メンター選任時に適切な基準を設けることや、メンターの能力を高める事前研修を行う方法などが挙げられます。能力的な個人差はありつつも、メンター間の差をできる限り埋められるようバックアップし、メンティーたちが平等なサポートを受けられる環境を整えることが重要です。

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      メンター制度を導入する際の具体的な手順

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      メンター制度の作り方や具体的な導入手順を以下6つのステップで解説します。

      • 目的の設定と明確化
      • メンター制度の運用方法・ルールの決定
      • 対象者の選定とマッチング
      • 事前教育と研修の実施
      • メンタリングの実施
      • 振り返りと改善への取り組み

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      1.目的の設定と明確化

      メンター制度を導入するにあたって、まずは目的を明確にすることが重要です。

      企業によって抱えている人事課題は異なるため、現場で働く従業員のヒアリングや人事データなどを確認し、自社の実態に即した目的を設定する必要があります。具体例としては、離職率の低下や若手従業員のキャリア育成などが考えられます。

      メンター制度導入の目的を明確にすることで施策の内容がぶれにくくなり、実施中の効果測定や改善しやすくなるでしょう。

      2.メンター制度の運用方法・ルールの決定

      メンター制度をスムーズに運用するために、あらかじめ運用方法やルールを決めておく必要があります。例えば以下のようなものです。

      • メンターとメンティー間での守秘義務
      • 問題発生時の相談窓口
      • メンタリングの実施期間・頻度
      • メンタリングの具体的な内容・方法

      また、上記の運用方法やルールを盛り込んだマニュアルや資料などのツールを作成しておくことで、関係者間で共通認識を持てることに加えて、トラブルの予防や迅速な対応が可能になります。

      3.対象者の選定とマッチング

      メンター制度の効果を最大限に高めるためには、適切な対象者の選定と、メンターとメンティーの相性を考慮したマッチングを行うことが重要です。

      メンターを選定する際は、その人の人柄・経験・能力などを考慮して、適性の高い人物を選定しましょう。事前にアンケートやヒアリングなどを行い、できるだけ個別の情報を収集しておき、ミスマッチが起きないよう慎重にマッチングするのが理想です。

      一方で、どんなに念入りに準備をしても、ミスマッチを完全に無くすことはできません。問題が発生したときに素早く対処できるよう、リカバリー策も用意しておきましょう。

      4.事前教育と研修の実施

      メンター制度をより効果的に運用するため、メンターおよびメンティーに対して事前研修を実施します。研修の中で以下のような役割や運用ルールなどを伝えておくのもひとつの方法です。

      • メンター・メンティー双方の役割・期待度について
      • メンタリングの実施機関や頻度について
      • メンター・メンティー間で話し合った内容の守秘義務について
      • 問題発生時の対処方法や相談窓口の設置について

      上記のような内容を双方に伝えておくことで、トラブルや制度運用時の混乱を防止できるでしょう。加えて研修でお互いがメンタリングに必要なスキルを把握・習得することで、より実効性の高いメンタリングを実現できる環境が整います。

      5.メンタリングの実施

      準備が整ったら、実際にメンタリングを開始します。スムーズにメンタリングを進める具体的なポイントは以下の通りです。

      • メンターとメンティー双方に進捗フォローを行う
      • 定期的にメンター・メンティー双方から報告を上げてもらう
      • メンター同士の意見交換の場を設け、成功例や課題の情報共有を行う
      • 上司がメンターに協力し、職場全体でメンティーの育成を支援する環境を作る

      事前にルールやマニュアルを整備し、しっかりと研修を行っていれば概ね問題なく進行できるでしょう。ただし、問題が発生した際に速やかに対処できるよう、定期的な報告で常に状況を把握しておくことが求められます。

      6.振り返りと改善への取り組み

      メンタリング期間が終了したら、実施内容を振り返ります。

      具体的には、メンターとメンティーへのヒアリングやアンケートを通して、良かった点・反省点・改善点などの情報を収集します。複数のペアがある場合は、合同報告会を開催してそれぞれの内容や結果を共有するのもひとつの方法です。

      それぞれの成果や課題、気づきをまとめ、今後の運用に向けた課題・改善点を整理しましょう。このような振り返りと改善への取り組みを繰り返すことで、メンター制度の内容が徐々自社に合った効果的なものへとブラッシュアップされていきます。

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      メンター制度はいらないと言われる理由とは?

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      メンター制度を導入することで、従業員の育成が効率的に進む事例が多いものの、中にはメンター制度を導入しない方が良いという意見もあります。そこで「メンター制度はいらない」と言われる主な理由を確認しておきましょう。

      メンター制度とOJTが混在してしまうことがある

      メンター制度がいらないとされる理由のひとつに、OJT(オンザジョブトレーニング)との混在が挙げられます。

      OJTは、現場の業務を通じて新入社員に知識やスキルを習得させる教育手法で、多くの企業で採用されています。OJTとメンター制度を並行するケースでは、それぞれの違いが曖昧になったり、教育内容が重複してしまったりすることがあり、結果的に「OJTがあるのだからメンター制度はいらないのではないか」という意見が出るのです。

      OJTとメンター制度はそれぞれ実施の目的や内容、メリットなどが異なります。それぞれの違いを正しく理解し、自社にとって最適な教育のあり方をしっかり検討することが大切です。

      メンター以外の従業員が支援しなくなる

      メンター制度を導入したものの、メンター以外の従業員が支援しなくなることも「メンター制度はいらない」とわれる要因です。

      メンターはメンティーの育成や支援をするのが役割ですが、周囲の理解が足りないとメンターだけに新人教育の責任が集中してしまいます。また、他の従業員が「自分には関係がない」と考えて支援を避けたり、業務効率の低下をメンター制度のせいにしたりといった不満が発生するおそれもあります。

      このような事態を防ぐためにも、新人教育の目的や重要性を全従業員に周知し、メンティーを組織全体でサポートするといった意識を持つことが重要です。

      メンター制度に対するインセンティブがない

      教官やインストラクターなど、人材育成に携わる担当者には、追加報酬や補助金が支給されることがあります。

      しかし、メンター業務は通常業務の一環として扱われる傾向にあり、上記のような特別な補助金や金銭的な見返りがないのが一般的です。そのため、メンターに任命された担当者にとっては、ただ単に負担が増える結果となってしまい、メンター制度に否定的な意見が発生する場合があります。

      従業員教育は、将来的な事業の継続や拡大には欠かせない重要な経営課題といえます。ただし、担当者には少なからず業務的・精神的な負担がかかるのも事実です。これらを鑑みて、企業側はメンターに対して適切な評価を行い、場合によっては、報酬や手当の支給を検討することも求められるでしょう。

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      企業がメンター制度を運用する際のポイント・注意点

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      企業がメンター制度を運用する際に、押さえておくべきポイントと注意点を解説します。

      制度を実施するにあたってメンターとメンティーの相性を確認しておく

      メンター制度を実施するにあたって、メンターとメンティーの相性には細心の注意を払いましょう。双方の相性がメンター制度成功の鍵を握っているといっても過言ではないためです。

      最適なペアリングができるよう、事前のヒアリングや適性検査などを通じて、可能な限りそれぞれのパーソナリティを把握しておく必要があります。

      ただし、どんなに念入りに情報収集を行ったとしても、すべてのマッチングミスを防げるとは限りません。どうしても相性が合わないと判断された場合は、メンターとメンティーの組み合わせを変更することも検討しましょう。

      メンターへのフォローアップを意識する

      メンター制度の運用においては、メンティーだけでなくメンターに対するフォローアップも重要なポイントです。メンターは通常業務と並行してメンティーの支援を行うケースが多く、支援方法や信頼関係の構築について悩みを抱えがちなためです。

      メンターの負担を少しでも軽減できるよう、事務局との面談やメンター同士の情報交換会を企画しましょう。メンターが抱える不安や問題を共有・解決できる場を設けることで、メンター自身が安心して役割を果たせるようになるため、制度の効果向上が期待できます。

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      メンター制度の成功事例

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      ここからは、実際にメンター制度を導入した企業の成功事例を3つご紹介します。

      メンター2名体制でのフォローアップ

      ある企業では、メンターを2名体制にすることで高い効果を実現しています。

      この取り組みは、新入社員がいち早く会社やメンバー間のコミュニケーションを取れるようになることで、社外との連携やスムーズなコミュニティへの参加を目的としています。

      メンターは同じチームから1名、業務上の連携が多い他チームから1名の計2名が任命され、新入社員がチーム内外からサポートを受けられる環境を整えています。

      また、全社的な理解と協力を得られるよう、入社時のオンボーディングでも全従業員に共有していている他、経営層・上司・同僚など、あらゆる方面からサポートしてもらえるよう体制を強化しています。

      社員相互のメンタリング制度

      ある企業では、リモートワークが普及したことによる、従業員間の相談機会が減少しているという課題がありました。そこで「クロスメンター制度」を導入しました。

      クロスメンター制度とは、有志で登録したメンターに対して、メンタリングを必要としている従業員が定期的なメンタリングをリクエストするというものです。この制度は3カ月を1スパンとしているものの、希望に応じて期間中の終了や延長も可能となっています。

      この制度がうまく機能したことで、メンティーの問題解決の一助になっているのはもちろん、メンターの中から公的なコーチング資格取得希望者も出てきており、双方にとって良い成長の機会となっています。

      メンターによる月に一度の育成面談

      ある企業では、従業員一人ひとりの成長を見逃さず、誰かが誰かの成長をサポートできる状況を作り出すことを目標としていました。そこで全従業員を対象に月に一度のメンターによる育成面談を実施しています。

      一人ひとりの働く理由や将来的なビジョンを描くサポートを行うため、面談のテーマは業務だけに留まらず、プライベートを含むさまざまな話題に広がっています。例えば、個人の価値観や生活スタイルに基づいた目標設定を行うことで、仕事と生活に繋がりが生まれ、両面での充実感が得られたケースもあります。

      この育成面談導入後は、従業員のモチベーションが向上したことに加え、離職率の大幅な低下にも成功しています。

      【ホワイトペーパー】働きがいを向上させるための施策事例15選

      「働きがい認定」として認められた企業が実際に取り組んでいる施策から学んでみませんか?この資料では、働きがいを高めるうえで企業が直面しやすい5つの組織課題とそれらの課題に対する具体的な施策事例について紹介します。

      効果的なメンター制度の導入と運用にも「働きがい認定・ランキング」

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      メンター制度は、単なる従業員育成の枠を超え、企業全体のエンゲージメント向上やブランド価値の強化にも繋がる可能性を秘めています。従業員一人ひとりが自社に誇りを持ち、働きがいを感じることで、離職率の低下やチームの生産性向上を実現できるでしょう。

      加えて、第三者機関から「働きがい認定」を受けることで、従業員は自社の強みや組織カルチャーの良さを再認識できるようになります。従業員のエンゲージメント向上やインナーブランディング施策として、「働きがい認定」を活用してみてはいかがでしょうか。

      インナーブランディングに効く!「働きがいのある会社」認定

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      編集ライター 湯浦 孝恵

      社会保険労務士事務所にて労務関係業務に携わる。経験を活かしたコラム記事を多数作成。2024年現在編集ライター歴約10年。数多くの企業の人事・労務コンテンツを作成。

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