女性にとって"働きがい"を感じるのは、こんな会社
更新日 2022.05.182022.05.18メディア掲載
Great Place to Work® Instituteは、世界約60カ国で従業員意識調査を行い、調査結果をもとに「働きがいのある会社」認定・ランキングを発表しているアメリカの機関である。その日本法人であるGreat Place to Work® Institute Japanは、3月に「働きがいのある会社」女性ランキングを発表した。女性にとって働きがいとは何か? 代表取締役社長の荒川陽子氏とエッセイストの小島慶子氏に対談してもらった。
文/内藤 綾子 撮影/スケガワケンイチ デザイン/弾デザイン事務所 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA dot. ADセクション
※本コンテンツはAERA dot.の記事(https://dot.asahi.com/ad/22032801/、2022年3月28日公開)を許可を得て転載したものです。無断転載を禁じます。
「働きやすさ」と「やりがい」が“働きがい”を生み出す
小島:今回は、女性にとっての働きがいについて対談をしますが、働きがいを定義するのはなかなか難しいですね。
荒川:おっしゃる通りです。私たちは、働きがいは「働きやすさ」と「やりがい」のバランスから成り立っており、両方から考えなくてはいけないと思っています。
小島:その二つは仕事選びを考えるうえで、重要なキーワードです。現代女性にとって、日本は働きやすい環境が整っていると感じますか?
荒川:ここ10年くらいで、ずいぶん整った印象を受けます。政府が打ち出した働き方改革の影響が大きいのでしょう。特に、家庭との両立で大変な思いをしている女性にとって、長時間労働の抑制、有休取得の促進、テレワーク・在宅勤務の推進といった働きやすさの強化は、進展していると感じます。
小島:やりがいについては、いかがでしょう。
荒川:日本は、Great Place to Work®の海外調査を見てみると、世界各国に比べてやりがいに対する満足度が低いようです。どうしたらやりがいを高められるかという課題には、一人ひとりが千差万別なので正解がありません。ただ、「女性だから」というジェンダーに縛られず、能力を発揮できて、自分らしく働けることがやりがいにつながると思っています。
女性性による業績や能力を評価されていた時代
荒川:小島さんは、放送局でアナウンサーとしての勤務経験があります。そのときは、どのような気持ちで働いていましたか?
小島:最初は、男性と給料が同じで、仕事に男女差はないと言われていたんです。ところが、「女子アナ」と呼ばれてかわいらしく控えめで、知的な雰囲気をまとった女性という役割を求められました。これはアナウンサーの世界に限ったことではなく、多少なりとも女性は職場でこういった役割を経験しているのではないでしょうか。例えば、懇親会で若い女性社員が部長の隣に座らされるとか。
荒川:まさに、私にもそんなことがありました!
小島:でしょう!? 求められているのは、放送のプロとしての技能よりも「愛される女性」を演じる能力。女性という属性だけに注目してそれを消費する構造に気づき、これはおかしいよねとすごくモヤモヤしたんです。
お互いをリスペクトした環境で仕事ができると、やりがいにつながる
荒川:小島さんにとっての当時の働きがいは何だったのですか?
小島:アナウンサーの仕事をしつつ、労働組合の執行委員として、会社に社内制度の改善要求をしていました。1日単位でしか取得できなかった看護休暇を半日単位に変更できたときは、「子どもに予防接種を受けさせたあと、午後出社ができて、本当に助かった」と、喜んでくれた人たちがいました。そのときに、カメラの向こうの100万人に向かって話すことと同じぐらい、目の前の人から感謝されることに、大きな喜びを感じました。だれか一人の生活を劇的に変えることができたら、その人も私も幸せになれる。それが自分にとっての働きがいだと、わかったんです。
荒川:そこからさまざまな仕事を経験されて、今はどのように思っていますか?
小島:自分も周りの人も、大切にされているのが実感できることでしょうか。つまり仕事の現場で、だれかが搾取されていたり、だれかが我慢していたりすることがない環境です。目的を共有し、お互いをリスペクトした関係の中で仕事ができていると感じたときは、「この仕事をして良かった」と思うし、自分の働きがいにもつながっていますね。
荒川:とても共感します。
女性の働きやすさに投資しつつ、やりがいを高めるには
小島:3月に発表した「働きがいのある会社」女性ランキングの上位にある会社に共通点はありますか?
荒川:働きやすい設備や制度が圧倒的に整っていることです。例えばワーキングマザーのために授乳室や母乳を冷凍できる冷凍庫が整備されていたり、女性同士や役員とのネットワークが構築されていて、いつでも相談できるシステムがあったりします。女性の働きやすさに対して、きちんと投資がされているんですよ。
小島:目配りが効いていますね。やりがいの面は?
荒川:もちろん、どの会社も重視しています。そのため女性社員は、「責任のある仕事を任されている」という実感が高いです。女性の働きやすさをベースとしながら、やりがいを高めることに成功しています。
小島:制度を作るだけで、「あとは、あなたが頑張って」ではなく、女性が働きながら成長できるように皆で支える仕組みがあり、本人の満足度も高い。まさに理想的ですね。
多様性のある女性管理職が増える日も近い
荒川:もう一つ、ランキング上位の会社の特徴は、ランキング外の会社と比べて女性管理職の比率が高いことです。公正な昇進・昇格の仕組みを整えているなど、男性と公平にアサインされている満足感や、責任のある仕事をこなした達成感がデータから見て取れます。
小島:素晴らしい。
荒川:日本では、過去何度も女性活躍推進の波が来ては引いてを繰り返してきましたが、10~15年前くらいからの今回の女性活躍の波はひときわ大きく、女性に責任のある仕事を任せ育成する動きを強く感じています。なのでそろそろ、女性管理職が増えてくるのではと期待しているところです。とはいえ、女性に対する人的資本への投資は、まだまだ足りておらず今後も継続して必要です。
小島:管理職の50%が女性という企業が、当たり前の社会になるといいですね。女性管理職が増えれば、その中にも多様性があることに気づくはず。専門性を持った人、独自のリーダーシップを発揮する人、育児や介護と両立している人など、さまざまな女性管理職のあり方を日常的に目にする機会があると、自分のキャリアに対する道しるべになるかもしれません。
荒川:女性ランキングにランクインしている企業を筆頭に、女性にとって働きがいのある会社は、男性にとっても働きがいが高いことが分かっています。イキイキと熱意を持って働く社員が多いほど、ポジティブなイノベーションが起こり、会社の大きな飛躍へとつながるでしょう。
小島:自分だけでなく周りの人も大切にされ、幸せでいられる職場では、働きがいを実感でき、成果を生み出すことができるのですね。多くの会社で働き方の見直しが進み、女性が充実したキャリアと豊かな人生を実現できる場所が増えることを願っています。