キャリア採用とは?中途採用との違いや成功のポイント、企業事例を解説

更新日 2024.07.122024.07.09コラム

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常に変化と成長を求められる現代のビジネス環境において、即戦力となる人材をいかに迅速に確保するかは、企業の競争力を左右する重要な課題となっています。しかし、多くの日本企業は、長らく新卒一括採用による人材獲得を行ってきたため、キャリア採用には不慣れなのが現状です。
本記事にたどり着いた方の中には、キャリア採用とはどのようなものなのか、どのような場合に取り入れ、どのように進めていくとよいのか、基本的なところから理解したい、という方が多いのではないでしょうか。
本記事では、キャリア採用の定義や意味などの基本的な内容から、目的、メリット・デメリット、具体的な実施の方法やポイント、そして事例に至るまで解説をしていきます。

キャリア採用とは

まずここでは、「キャリア採用」のそもそもの意味や目的のほか、類似する「中途採用」との違いから、改めてキャリア採用の前提となる情報について説明します。

キャリア採用の意味

キャリア採用とは、特定のスキルや経験を持つ人材を、即戦力として採用するプロセスを指します。新卒採用とは異なり、既に実務経験があり、特定の分野で専門知識やスキルを持つ人材をターゲットとしています。

キャリア採用の目的

キャリア採用の目的は、主に以下の「即戦力の人材の確保」「専門知識やノウハウの導入」「競争力強化」です。

即戦力の人材の確保

キャリア採用の最大の目的は、すぐに業務に貢献できる即戦力を確保することです。新規プロジェクトの立ち上げや事業拡大、既存業務の改善には、前提となる知識や同種の経験を持っているという意味で即戦力となる人材が不可欠です。社内で経験のない人材を登用するだけでは、まず目の前の業務へ適応するだけでも時間を要したり、それをどのように進めたらよいか教えられる人材が社内にいなかったりするケースもあり、すぐには成果が上がりません。しかし、すでに社外で一定の経験・成果を上げている人材を採用することで、社内の人材を育成するより短期間で成果を上げることが期待できます。

専門知識やノウハウの導入

特定の分野や技術に精通した専門家として採用することで、企業内の知識基盤を強化することができます。また他社での業務経験を持つ人を採用することで、異なる視点や方法論を持つ人が加わり、新しいノウハウを組織に取り入れることができるだけでなく、それらをベースとした新しいノウハウが生まれ、業務の遂行がスムーズになることが期待できます。さらに、既存の社員に進め方や考え方を教え、対応できるようになる人材が増やすことが期待されます。

競争力の強化

異なるバックグラウンドを持つ人材を採用することで、組織の多様性を高め、これまで自社になかったアイデアを取り入れ企業は競争力を強化することができます。業界のトレンドや技術動向に精通したプロフェッショナルを採用することで、競合他社に対して優位性を確保し、市場での地位を向上させることにつながります。

キャリア採用と中途採用の違い

既に社員としての就労経験を有する人の採用について、日本では主に以下3つの呼び名があります。

①第二新卒採用
②キャリア採用
③中途採用

まず、①の第二新卒採用は、新卒で入社した後、数年以内に転職を希望する若手社員で、一般的には、大学を卒業してから13年程度の社会人経験を持つ人を対象としています。これは、先ほどの「既に実務経験があり、特定の分野で専門知識やスキルを持つ人材」という定義には当たらず、違いは明確におわかりいただけると思います。それでは、②のキャリア採用と③の中途採用は、何が違うのでしょうか。これらは、しばしば同じ意味で使われることがありますが、実際にはいくつかの違いがあります。 

目的・位置づけ

キャリア採用 特定のスキルや経験を持つ即戦力の人材をターゲットにしており、企業の戦略的目標を達成するために行われます。
中途採用 一般的に、企業内で空いているポジションを埋めるために行われます。これは、特定のスキルや経験を持つ人材を求めることもありますが、キャリア採用ほど具体的な要件を持つことは少ないです。

選考基準の厳格さ

キャリア採用 選考基準がより厳格で詳細です。企業は、候補者のスキルセットや経験、適性を厳密に評価し、特定の要件を満たすかどうかを確認します。
中途採用 一般的な職務経験や適性を評価することが多く、選考基準はやや広範になります。 このように、キャリア採用では具体的な職務を想定し、それを遂行できるスキル・経験があるかということに焦点が当たっています。こうしたスキル・実務経験を持つ人材は、マーケットには相対的に少ないため、採用するためのアプローチ方法が異なります。

採用プロセス

キャリア採用 採用エージェントや専門の採用担当者が積極的に候補者をスカウトすることが多いです。ソーシャルメディアやプロフェッショナルネットワークを活用して、特定のスキルセットを持つ人材に直接アプローチすることが一般的です。
中途採用 求人広告や転職サイトを通じて広く応募を募ることが多いです。

このように、キャリア採用と中途採用には微妙な違いがあります。実際の文脈では、キャリア採用か中途採用かという区分自体はそれほど重要ではないかもしれませんが、この採用の位置づけ・目的に対して、どのようなスキルセットを持っていることが要件として必要なのか、さらに、そうした人材を採用するためのアプローチ方法は適切か、は成果にかかわるため、採用の在り方を見直す際の参考にしてみてください。

キャリア採用の導入企業が増えている理由

多くの日本企業は、長らく新卒一括採用による人材獲得を行っており、キャリア採用には不慣れな企業が多いと考えられます。それにもかかわらず、なぜここにきてキャリア採用を導入する企業が増えているのでしょうか。

理由同士は重なり合うものもありますが、大きく①企業の事業環境②労働市場環境③働き方に関する考え方の変化に分けられます。

①企業の事業環境

1. 技術革新とスキルの高度化

まず1点目が、技術革新とスキルの高度化です。現代のビジネス環境は、急速な技術革新と市場の変化によって常に変化しています。このような状況下では、企業は迅速に対応できるスキルと専門知識を持つ人材が必要です。キャリア採用を導入する企業は、経験豊富な専門家やスペシャリストを採用することで、業務に即戦力として貢献できる人材を確保することができます。例えば、最新の技術を活用したプロジェクトや新規事業の立ち上げには、過去の実務経験や専門知識が求められます。キャリア採用を通じて、企業は変化のスピードに合わせて必要なスキルを確保し、競争力を維持・強化することができます。

2. 経済環境の変化

2点目が、経済環境の変化です。技術の進歩や市場の変化が加速しているため、企業は迅速に対応できる即戦力の人材を必要とするようになっています。また、日本企業の海外市場への進出も進み外国企業との競争が激しくなってきているため、国際経験や専門知識を持つ人材の需要が高まっています。

②労働市場環境

1. 労働市場の変化

ここまで記載したような①事業環境に伴い、企業側にとって高度な専門知識やスキルを持つ人材や、即戦力となる経験豊富な人材を求めるニーズが高まっており、中途採用市場が拡大し、優秀なキャリア人材が豊富に存在するようになっています。

また、転職エージェントやオンライン求人サイトなどの転職支援サービスが充実し、転職活動がしやすくなっていることも、市場の拡大を後押ししていると考えられます。しかし、人材の需要と供給のバランスについては、特に特定の分野でのスキルや経験を持つ人材の供給が不足している状況があります。そのため、市場全体は拡大していますが、優秀な人材の獲得は困難になっているといえます。

2. 労働力不足

一方、中途労働市場に関わらず大局的に見ると、日本は少子高齢化が進行しており、労働力人口が減少しています。退職していく世代に代わって対応できる人材を確保していくには、新卒一括採用だけでは対応できないスピード感になっています。実際に、人手が不足していると感じている企業の割合は年々増加傾向にあります。

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③働き方に関する考え方の変化

1. キャリア志向の高まり

労働者自身も、自分のキャリアを主体的に考え、スキルアップやキャリアチェンジを図るようになっています。これにより、転職市場が活性化し、企業も中途採用を通じて優秀な人材を確保する動きが強まっています。転職も一般化し、キャリアアップや自己実現を求めて積極的に転職する人が増えています。

2. ワークライフバランスの重視や、終身雇用に固執しない傾向

労働者の中にも多様な働き方を求める声が高まり、企業も柔軟な働き方を導入するようになっています。フレックス制度やリモートワークなどが普及する中で、働きやすい環境を提供する企業に対して、経験豊富な人材が集まるようになっています。

また、就労観としても以前は終身雇用が一般的でしたが、近年では企業側も労働者側も終身雇用に固執しない傾向が強まっています。これにより、キャリア採用が増え、企業が必要なスキルや知識を持つ人材を柔軟に採用するようになっています。

キャリア採用を実施するメリット

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ここでは、キャリア採用を実施するメリットについてご紹介します。キャリア採用を実施することには、主に以下のようなメリットがあります。

即戦力の確保

これはキャリア採用のそもそもの大きな目的でもありますが、キャリア採用では、既に専門知識やスキルを持つ即戦力として活躍できる人材を迅速に確保できます。新卒採用や内部育成のみでは、専門知識やスキルを持つ人材の育成に時間がかかります。また、急なプロジェクトや人材不足に対して即時対応が難しく、業務の遅延や品質低下のリスクが高まります。

専門知識とスキルの導入

特定の分野で豊富な経験を持つ専門家を採用することで、新しい知識や技術を企業内に迅速に導入し、組織全体のスキルレベルを向上させることができます。内部人材の育成に依存すると、新しい技術や知識の導入が遅れ、競合他社に対して技術的な優位性を失う可能性があります。新しい市場や技術に対応するための適応力も低下します。

事業成長の強化

新規事業の立ち上げや国際展開など、特定の経営戦略に必要なスキルや経験を持つ人材を採用することで、戦略の実行力が高まり、事業の成功率が向上します。内部人材のみで経営戦略を実行する場合、経験やスキルが不足しがちで、戦略の実行に時間がかかることがあります。特に、新規事業や国際展開においては、成功率が低下し、競争力のあるポジションを確保するのが難しくなります。

このように、キャリア採用を実施することで企業は即戦力を迅速に確保し、新しい知識や技術を迅速に導入し、経営戦略の実行力を高めることができます。一方、キャリア採用を行わない場合は、これらの分野での対応が遅れ、業務効率や競争力に悪影響を及ぼす可能性が高まると言えます。

キャリア採用を実施するデメリット 

即戦力の確保や育成期間の短縮化など、一見メリットばかりに見えるキャリア採用ですが、実施するデメリットもあります。

ここでは主なデメリットについてご紹介します。

組織文化への適応の難しさ

キャリア採用で入社した人材は、異なる企業文化や働き方に慣れているため、既存の組織文化に適応するのに時間がかかることがあります。これが場合によっては、チーム内のコミュニケーションや協力体制に影響を及ぼし、業務効率が低下する可能性があります。一方、内部育成や新卒採用では、企業の文化や価値観を自然に受け入れやすく、組織内での一体感や協力体制が強化されやすいです。新たに学ぶことが多い新入社員も、企業文化に順応しやすいと言えます。

採用コストの増加

キャリア採用では、即戦力を求めるために高い報酬や待遇を提供する必要があり、採用コストが増加することがあります。また、エージェントの利用や求人広告費用も高額になることがあります。一方、新卒採用や内部育成では、初期の給与や待遇が比較的低く抑えられ、長期的に人材を育成することでコストを分散させることができます。ただし、教育や研修にかかる費用も考慮し、トータルで判断することが必要です。

既存社員との摩擦

即戦力として期待されるキャリア人材が入社することで、既存社員との間に競争意識が生じることがあります。特に、同じポジションや役職を狙う場合、昇進や評価に対する不満が増加し、モチベーションの低下や離職率の増加につながる可能性があります。キャリア採用を行わない場合、内部人材の昇進やキャリアパスが明確であり、既存社員のモチベーションやロイヤルティが維持されやすいです。これにより、社内の安定感やチームワークが強化される傾向があります。

このように、キャリア採用は即戦力や専門知識を迅速に獲得できる一方で、組織文化への適応の難しさ、採用コストの増加、既存社員との摩擦などのデメリットが存在します。キャリア採用を行わない場合は、これらのデメリットを避けられる一方で、即戦力の確保や専門知識の迅速な導入が難しくなる可能性があり、バランスよく考慮し、採用後のことも考えた計画や受け入れ態勢を整えることが重要です。

キャリア採用の多い職種 

特にキャリア採用が多い職種の代表例と、理由について紹介します。
これらの職種は、即戦力としてのスキルや経験が求められるため、キャリア採用が多くなっています。

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ITエンジニア・デベロッパー

ITエンジニア・デベロッパーは、技術革新の速さと需要の急増に対応するため、即戦力としてのスキルを持つ人材が求められます。特に、人工知能、データサイエンス、クラウドコンピューティングなどの分野では、新しい技術に精通している人材が必要とされています。新卒を育成する時間がないため、即戦力としてのキャリア人材が重宝されます。

経営コンサルタント

経営コンサルタントは、特定の業界や機能に関する深い知識と経験を必要とし、プロジェクトベースの業務で即戦力が求められます。経営環境の変化やグローバル化、デジタル化の進展により、専門知識と経験を持つ人材が必要です。クライアントの課題を迅速に理解し、具体的な解決策を提供できる人材が求められます。

営業職(特にBtoBセールス)

営業職(特にBtoBセールス)は、企業間の取引において信頼関係とネットワークが重要であり、豊富な人脈を持つキャリア人材が有利です。新規顧客の開拓や大口取引の成立には経験が必要で、早期に結果を出せる即戦力が重視されます。営業職は企業の売上に直結するため、経験豊富な人材が求められます。

金融アナリスト・ファイナンシャルプランナー

金融アナリスト・ファイナンシャルプランナーは、金融市場や投資に関する専門知識が必要であり、資格や経験を持つキャリア人材が求められます。特に、CFP(認定ファイナンシャルプランナー)やCFA(公認証券アナリスト)などの資格を持つ人材は即戦力として評価されます。

マーケティング・デジタルマーケティング

マーケティング・デジタルマーケティングは、デジタル化の進展に伴い、SEOSEMSNSマーケティングなどの専門知識を持つ人材が必要とされています。新製品のプロモーションや市場拡大のために、データ解析や消費者行動分析に長けた経験豊富な人材が必要です。マーケティング分野では、他社との差別化が重要であり、即戦力としてのキャリア人材が競争力を高めるために重視されています。

キャリア採用の進め方5ステップ

ここからは、意味・目的やメリット・デメリットを考慮したうえでキャリア採用を行おうと意思決定した後、何から取り組めばよいのかについて、進め方を5つのステップに分けて説明していきます。

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1.採用ニーズの明確化と採用計画の立案

まず1つ目に取り組む内容は、企業内での人材ニーズを具体的に把握することです。これには、必要なスキルセットやそれらを求める強度、経験年数、経験のある業務内容や、人数や採用したい期限などが含まれます。これらが明確になった後、採用プロセス全体の計画を立てます。計画内容には、予算の設定、採用チャネルの選定、スケジュールの策定が含まれます。

2.募集方法の選定と求人情報の作成・公開

キャリア採用の候補者を集めるための方法を選びます。以下の手段が一般的です。

求人サイト      :リクナビNEXTやビズリーチなどの求人サイト
転職エージェント   :リクルートエージェント、マイナビエージェントなど
企業のウェブサイト  :自社の採用ページを利用
SNS・ネットワーキング:LinkedInFacebookなどを活用
ヘッドハンティング  :特定のスキルを持つ候補者を直接探す

これらのチャネル選定に当たってはいくつか注意点があります。

①ターゲット層に合ったチャネルを選ぶ

ターゲットとする候補者の属性や職種に応じて、最も効果的なチャネルを選択します。例えば、ターゲットによっては特定の業界の専門的な求人サイトやコミュニティ、SNSなどを活用することが有効です。

②チャネルの特性を理解する

各チャネルの特性や利用者層、求人広告の掲載方法、掲載費用などを理解し、アプローチできた人数や、その後の選考への流入・入社実績などを見ながら、予算を最適化することが重要です。

③複数のチャネルを組み合わせる

また、単一のチャネルに依存せず、複数のチャネルを組み合わせることで、より多くの候補者にリーチできます。求人サイト、採用イベント、社内紹介制度など、複数のアプローチを検討します。

チャネルの選定後、求人情報を作成し、選定したチャネルに公開します。募集要項には、求めるスキル・経験、職務内容、勤務地、給与などの詳細を明記します。

3.選考(書類選考~面接)

採用への応募があったら、応募者の履歴書や職務経歴書を確認し、経験やスキルセットが求める要件と合致しているかを確認します。

書類選考通後に面接に移りますが、キャリア採用では23回の面接を行うことが一般的です。

例)
一次面接
人事・採用担当者が実施し、基本的な適性や意欲、企業文化への適合性を確認します。

二次面接
部門管理者が実施し、技術的なスキルや業務遂行能力を評価します。

4.内定・オファーと契約手続き

候補者に内定を出し、正式なオファーレターを発行します。オファーには、給与、福利厚生、勤務開始日などの詳細が含まれます。また、オファーレターを出した後、候補者が複数企業で入社先を検討している場合は、自社やオファーしたポジションに対する不明点・疑問点について追加で情報を提供し、意思決定を促す面談なども設けることがあります。

そして、候補者がオファーを承諾した後、雇用契約書を作成・署名します。この段階で、入社に関する詳細な手続きも進めます。

5.オンボーディング

新入社員がスムーズに業務に入れるよう、オンボーディングプログラムを実施します。これには、オリエンテーション、社内研修、業務指導などが含まれます。良いスタートを切ることで、新入社員の定着率が向上し、早期離職を防ぐことができます。

キャリア採用成功のポイント5つ

ここまで、キャリア採用の考え方や進め方についてご説明してきましたが、キャリア採用を成功させるためのポイントはどこにあるのでしょうか?ここからはキャリア採用の成功のポイントを、よくある失敗例とそこから得られる教訓に基づいて説明していきます。

明確な採用ニーズの定義

よくある失敗例

曖昧な採用要件で募集を開始し、適切な候補者が集まらず、採用プロセスが長引くことがあります。例えば、「経験豊富なマーケティング担当者募集」という曖昧な求人情報では、具体的なスキルや業務内容が伝わらず、多様なバックグラウンドの候補者が集まりすぎて選考が困難になります。

教訓と成功のポイント

具体的な職務内容や求めるスキルセット、必要な経験年数を明確に定義することで、適切な候補者を効率的に集めることができます。そのためには、部門間でのコミュニケーションを密にして、採用するポジションの具体的なニーズを明確にし、求めるスキルや経験・成果を詳細に記載していくことが重要です。

効果的な採用チャネルの活用

よくある失敗例

一つのチャネルに頼りすぎて候補者の幅が狭くなることがあります。例えば、特定の求人サイトだけに求人を掲載し、多様な候補者にリーチできず、採用活動が停滞することなどです。

教訓と成功のポイント

複数の採用チャネルを活用することで、より多くの候補者にリーチでき、質の高い応募者を確保できます。求人サイト、転職エージェント、企業ウェブサイト、SNSなど、複数のチャネルを利用して幅広く告知し、ポジションに最適なチャネルを選定し、効果的に組み合わせて使用することが重要です。

迅速かつ丁寧な採用プロセス

よくある失敗例

採用プロセスのリードタイムが長いために、優秀な候補者が他社に流れてしまうことがあります。例えば、書類選考や面接のスケジュール調整が遅れ、候補者が他社のオファーを受けてしまうことなどです。

教訓と成功のポイント

迅速かつ効率的に選考プロセスを進めることで、優秀な候補者を逃さないようにすることが重要です。書類選考、面接、評価プロセスを迅速かつ丁寧に進められるよう、スケジュールを見積もり、各ステップで候補者や社内の関係者とのコミュニケーションを密に行うことが大切です。

候補者の体験の向上

よくある失敗例

面接時の対応が不親切・不誠実で、候補者が企業に対してネガティブな印象を持ってしまうことがあります。例えば、面接官が遅刻したり、準備不足で適切な質問ができなかったりすることで、候補者が企業に対して不信感を抱く、などです。

教訓と成功のポイント

候補者に対して一貫してポジティブな印象を与えることが重要です。良い候補者体験は、企業の評判を向上させ、オファーの受諾率を高めます。面接時の対応やフィードバックを丁寧に行い、候補者に対して一貫してポジティブな印象を与えることが重要です。

そのためには、面接官のトレーニングを行い、適切な質問や対応ができるようにする必要があります。

効果的なオンボーディング

よくある失敗例

オンボーディングが不十分で、新入社員が早期に退職してしまうことがあります。例えば、初日から具体的な業務指示がなく、誰に何を聞けば良いか分からず、不安を抱いたまま業務を開始してしまうなどです。

教訓と成功のポイント

オンボーディングプロセスを作り、新入社員がスムーズに業務に入れるようにすることが重要です。これにより、早期離職を防ぎ、長期的な定着を促進します。オリエンテーションや社内研修、業務指導などを充実させてスムーズな業務開始をサポートしたり、メンター制度などを導入したりすることで新入社員の不安を解消し、サポート体制を整えることが重要です。

キャリア採用と新卒採用、どちらにするかの判断基準

企業がキャリア採用と新卒採用のどちらを選択するかを判断する際には、以下の判断軸で比較し、それぞれの利点などを考慮する必要があります。

比較・判断軸

①即戦力の必要性

ポジションや業務の性質に応じて、即戦力となるスキルや経験の有無を比較します。緊急性が高ければキャリア採用を、中長期的な視点であれば新卒採用を採用します。

②組織文化への適応性

企業の文化や価値観に対する適応性を考慮し、採用後の適応が容易かどうかを比較します。キャリア採用では、すでに他社経験での就労経験があるため、その他社とのギャップが大きくなければ比較的スムーズに適応できますが、ギャップが大きい場合はそれをリセットし受け入れるには時間がかかると予想されます。一方新卒採用では、就労経験が無いことが、かえって企業のカルチャーに柔軟に適応するハードルを下げることが考えられます。

③ 専門知識やスキルの必要性

ポジションに必要な専門知識やスキルの有無を比較します。キャリア採用の場合は特定の分野や業務において、高度な専門知識やスキルを持つことが期待され、新卒採用の場合は現時点での専門性よりも、長期的な視点で将来のリーダー候補としてのポテンシャルが期待されます。

④コスト面の考慮

採用コストや長期的な投資効果を考慮し、コスト対効果を比較します。キャリア採用は採用コストが高くても、即戦力としての効果が期待できます。新卒採用は、どちらかといえば採用そのものよりも、採用後一人前になるまでの育成費用が掛かり、短期的な投資ではなく、将来の成長や組織への貢献を見込んでの投資といえそうです。

企業がどちらの採用方法を選択するかは、上記のメリットや判断軸を総合的に考慮し、企業の戦略やニーズに合わせて決定されます。組織の成熟度や業界の特性、採用する職種やポジションによっても、最適な選択は異なる可能性があります。

キャリア採用における工夫の企業事例 

日本企業において、キャリア採用の重要性は年々高まっています。即戦力としての人材を確保し、企業の競争力を強化するためには、採用プロセスの工夫が不可欠です。以下に、日本企業が実践しているキャリア採用の工夫と成功事例を紹介します。

① 広報・ブランディングと多様な採用チャネル

HRテクノロジー事業などを展開するA社では、SNSYouTubeなどのチャンネルで企業の魅力を発信し、社員インタビューやオフィスツアー動画を公開し、企業文化や働き方をリアルに伝えることで、求職者の惹きつけを行っています。また、キャリアイベントを定期的に開催し、求職者が実際にオフィスを訪れ、社員と直接話す機会を提供しています。

また、採用チャネルとしても、転職サイトやエージェントのみならず、LinkedInFacebookなどのSNSを活用し、特定のスキルセットを持つ人材に対して直接アプローチしたり、社員からの紹介制度や出戻り採用なども強化し、信頼できる人材を効率的に採用したりしています。

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関連記事:「SNS採用とは?活用ポイント、メリット・デメリット、成功事例を解説

② 採用プロセスの工夫

電機メーカーを中心とする事業を展開するB社では、特に重要なポジションの採用において、候補者の過去の勤務先からのフィードバックを重視しています。リファレンスチェックを通じて、候補者が過去の職場でどのように評価されていたか、どのような成果を上げていたかを確認します。これにより、面接だけでは見えにくい候補者の実際の業務遂行能力や職場での人間関係を客観的に把握し、適切な評価を行います。

③ 組織適応を促す1on1などの取り組み

システム開発等を行うC社では、配属先部署と人事部で連携し、キャリア採用者の職場でのスムーズな立ち上がりを支援しています。この支援は約6か月に渡り長期にわたって行われ、職場でパフォーマンスを発揮するための確かな土台をつくること、「まずは組織に適応すること」を狙いとしています。そのために、上司や同僚等との縦横ななめの1on1を凝縮して実施し社内人脈を豊かにする機会や、職場の文化を体感し馴染む機会、そして自身のミッション・役割への理解を深める機会を持つなどの取り組みを進めています。

関連記事:「1on1ミーティングとは?目的や進め方、話すことのテーマを紹介」

キャリア採用の魅力訴求のために

ここまで、近年重要性が高まっているキャリア採用の定義や実際の事例について紹介してきました。

キャリア採用は、変化の多いビジネス環境において即戦力となる人材を採用し、事業成長を加速させる重要な取り組みであり、そのためには求職者や候補者に自社を魅力的に感じてもらう採用ブランディングが非常に大事になります。この取り組みを強化するために「働きがい認定」の取得は極めて有効です。働きがい認定は、従業員の満足度やエンゲージメントを客観的に評価し、企業の働きやすさを示す指標となり、候補者が入社の意思決定をする際にも非常に強い根拠・安心材料となります。

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株式会社リクルートマネジメントソリューションズ コンサルティング部 上田 彩乃

出版社にて編集として勤務後、2017年リクルートキャリアに入社(後にリクルートマネジメントソリューションズに転籍)
大手企業での採用に関するアセスメントやコンサルティング、トレーニングの提供に携わり、2024年4月より現職。

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