採用成功につながるオンボーディングとは?意味や施策事例を紹介。新入社員と中途社員での違いやポイントも解説

更新日 2022.10.032022.09.28コラム

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企業が成長・発展し続けるために、優秀な人材の確保は不可欠です。採用手法は多様化し、各社、様々な工夫を凝らしながら採用強化を進めています。しかし、人材不足の中で本当の意味で採用を成功させるには、採用した人材にいかに自社に定着・活躍してもらうかの視点も重要です。本コラムでは、オンボーディングの意味や、重要視される背景、新卒採用・中途採用で入社した人材の定着・戦略化について解説していきます。

オンボーディングとは

「オン・ボーディング(on-boarding)」とは、乗り物に乗っているという意味の「on-board」から派生した言葉で、船や飛行機などに新しく乗り込んできた仲間に対して、必要なサポートを行い、適応を促進するプロセスのことを指します。

SaaS型のビジネスモデルに携わるビジネスパーソンの口からこの言葉を聞くときは、多くの場合、カスタマーサクセスにおける「オンボーディング」を指しています。「サービス・商品を利用し始めたユーザーに対して、いち早く使い方や機能に慣れてもらうためにサポートするプロセス」のことです。

ただし、元来は人事用語としての使われ方が主流です。「新しく会社や組織に加わった人材に、組織に慣れてもらい、組織への定着・戦力化を促進するための一連のプロセス・取り組み」のことを指します。

オンボーディングが重要視される背景

「オンボーディング」という言葉は、以前からよく聞かれていましたが、この数年は特に注目度が高まっているようです。その理由として、大きく2つの変化が挙げられます。

一つ目は、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の流行で促進した就業スタイルの変化です。

GPTW調査参加企業においても、過去5年間でのテレワークの導入割合は右肩上がりに増えています。会社によっては入社時からテレワークが常態であることは少なくありません。生産性向上が求められている中で、以前はあった職場での雑談機会は減っており、さらに追い打ちをかけるように、感染症対策として歓迎会など業務外でのコミュニケーションも限られているのが現状です。新規採用者が新しい環境に慣れるということが、自然発生的には難しくなっています。

企業のテレワーク導入率のグラフ

2022年版調査 全体傾向レポートより)

二つ目の変化は、働く人の価値観の変化や、採用市場の活性化です。

就業スタイルの変化により、人々の働き方への価値観も多様化しました。好きな場所や時間で働きたい、私生活の時間を重視したいなど、ワークライフ全体への見直しがされた結果、そういった価値観を成就させるためにキャリアチェンジを行うということも当たり前となってきました。若年層を中心に、一社で勤め上げるよりも転職をしながらキャリアを築いていく価値観も広まっています。

人材の流動性が高まる中で、これまで新卒一括採用しかしてこなかったような大手の企業群も、中途採用市場に現れるようになりました。コストをかけて採用した優秀人材が、期待されたパフォーマンスを上げられない、もしくは活躍までに時間がかかるということが、多くの企業で問題視されるようになってきました。

このように就業環境や採用市場が変化している中で、これまでよりもオンボーディングへの期待は高まっており、施策の強化を目指す企業は増えています。

オンボーディングを実施する目的・メリット

一般的なオンボーディングの目的は、新規採用した本人のパフォーマンス発揮と置かれることが多いようですが、働きがいの高い職場においては、組織のパフォーマンス最大化までを目的にした施策を実施しています。オンボーディングには採用~育成の長いプロセスが関わってくるため、関係者も多くなります。上司や同僚も一丸となり、職場全体で新規採用者を受け入れるというプロセスを経ることで、既存メンバーと新メンバー双方にとってのメリットにつながり、組織として成果を上げられるようになることを目指します。

企業にとってのメリット

企業側にとっては、採用した人に早く活躍してもらえることで、採用コストを回収することができます。新規採用者が一人前になり成果を上げられるようになって初めて、採用は成功と言えるでしょう。

またオンボーディングのプロセスは、既存の従業員に会社のバリューを浸透させる機会と捉えることも出来ます。組織で暗黙知となっている、大事にしていることや自社らしい風土、もしくは本当は変えるべきだが当たり前になってしまっていることについては、新規採用者への関わりを通じて再認識・発見する場面は多いでしょう。こういった再解釈のプロセスを繰り返しながら、組織風土は形作られていきます。

関連記事:ミッション、ビジョン、バリューとは?違いや組織浸透について解説

新規採用者にとってのメリット

新規採用者本人にとっても、オンボーディングを通じて内部から会社を知ることは、自身のキャリアを描く上で重要なことでしょう。オンボーディング施策に対して受け身でいるだけではなく、自ら周囲に働きかけて組織に適応する努力を行うことは、ビジネスパーソンとして成長するために必要不可欠です。決して組織に全てをあわせるのではなく、違和感などは率直に発信していくこともポイントでしょう。

また、GPTW調査でも「入社した人を歓迎する雰囲気」の有無について確認する設問がありますが、入社時の受け入れムードは、働く人にとって連帯感を感じることに繋がります。「連帯感」はGPTWの全員型「働きがいのある会社」モデルにも組み込まれているように、「働きがい」を構成する重要な要素のひとつです。

関連記事:在宅勤務・テレワーク環境下での連帯感の高め方

全員型「働きがいのある会社」モデル

GPTW 全員型「働きがいのある会社」モデル(For Allモデル)

上記のように、オンボーディングをすることは確かにメリットを感じられそうですが、その難易度は年々高まっています。生産性向上が叫ばれる中、これまで以上にそのプロセスに対して時間がかけられなくなってきており、「早期戦力化」が求められているのが現状です。

オンボーディングに向けての課題

オンボーディングにおいて一番重要なことは、描いていた様々な理想と現実の間にギャップを感じて衝撃を受ける、いわゆる「リアリティショック」をいかに緩和し対応するかです。リアリティショックは時代を問わず、誰もが経験する可能性があるもので、新規採用者だけでなく、異動や昇進などの変化によって起こるケースもあります。このコラムを読まれている方の中にも、経験されたことのある方がいらっしゃるのではないでしょうか。

企業側は採用時の面談を増やすなど、リアリティショックを失くす努力をしていることでしょう。ただし採用時だけでなく、入社後のフォローを通じてリアリティショックを緩和する必要もあります。一方、先にお伝えした環境変化の中では、十分なオンボーディング施策を打つことができていない企業も多いでしょう。

他に、オンボーディングが難しい理由として、以下のようなことが挙げられます。

新入採用者のオンボーディング課題

・入社後まで配属が分からない

多くの日本企業の場合、毎年決まった期間で新卒学生を対象として在学中に採用選考を行い、卒業後にすぐ入社する新卒一括採用が主流です。最近では職種別採用をする企業も増えてきましたが、スキルや経験のない学生を「総合職」としてポテンシャル採用するため、入社後の面談等を通じて入社後に配属を決定します。「採用ガチャ」という言葉が話題になったように、配属一つで思い描いていたイメージとは全く異なる社会人生活をスタートすることになります。

・マンパワー不足による情報連携の限界

新卒一括採用の弊害は、配属が決められないことだけでなく、人事負荷が非常に高いことも挙げられます。何十人、何百人という新人を各部署に割り当てざるを得ない企業にとっては、一人一人を手厚くフォローし、受け入れ先部署へ情報連携することは困難です。研修中に見えてきた本人の特徴、気になること等を全て言語化し、現場上司に伝えるのは限界があるでしょう。

情報連携ができていないことにより、本人にとっては、伝えたはずの希望が伝わっていなかったり、聞いていたはずの内容との齟齬があるということになり、会社への信用に関わります。

中途採用者のオンボーディング課題

・入社時期や配属先(地域)、中途採用者が持つ経験やスキルが異なる

新卒採用者の入社タイミングが原則年1回であるのに対して、中途入社者の入社時期は年間通し複数回に分かれます。中途採用者数の多い企業では毎月のように入社者がいるということもあるでしょう。ばらつきが多いほど、人事の負荷は上がり、時間かけて導入を行うことが難しくなります。

また、採用理由やポジションが異なることから、入社者の年齢、前職での経験、配属先での期待なども異なります。そうすると一律の教育が難しくなり、多くの企業で現場任せの育成になってしまいます。

・「即戦力」という勘違い

新卒採用が一括ポテンシャル採用なのに対して、中途採用は、特定のポジションに必要なスキルをもった人材を採用するため、即戦力としての期待をされています。

ただし、前職の知識やスキルが、新たな職場では想像以上に活用できないケースは多いのです。知識・スキルを発揮するためには、転職した先の企業の風土や文脈を読み取りながら活用しなければなりませんが、そういったものは暗黙知化されており容易に掴むことは出来ません。ただし、育成者も本人も、「即戦力である」という期待から、丁寧に文脈を説明することや、暗黙知をあらためて意識した伝え方・聞き方ができないのです。

オンボーディング実施の5つのポイント

1.自社のオンボーディングにおける特徴を把握する

あなたの会社に入社した人が、会社に慣れ、独り立ちし、活躍できるまでにはどれくらいの期間が必要でしょうか。人による差はもちろんのこと、業界や、職種によっても異なると思いますが、物差しとして、どれくらいの期間で、どの程度の適応を目指すのかは目安を置くべきでしょう。例えば中途入社者に関しては、入社後1年以降のキャリア入社者へ、インタビューやアンケートを取ってみると自社の特徴が見えてくるはずです。入社から一人前になれたと思うまでのモチベーション曲線を描いてもらい、高いところ、低いところで起きた出来事について教えてもらうなどの手法があります。

2.段階を踏んで適応を促す

特に現場での業務が始めると、On the Job Training(仕事を通じた育成)の名の通り、業務に慣れてもらうことを主眼に置いた指導が進められがちですが、まずは、職場の雰囲気や人に慣れてもらう「組織適応」を優先すべきです。

人間関係をつくり、組織の文化に慣れることで、主体的に周囲を巻き込みながら仕事を行うことができます。その後、知識経験を増やすことで「職務適応」ができ、そういった仕事の経験を積み重ねることで、成長を感じキャリアの見通しがつく「キャリア適応」に繋がります。順番を間違ってしまうと、スキルや経験は高くても、中長期的に組織でパフォーマンスを発揮してもらうことが難しくなるでしょう。

オンボーディングの段階

3.縦横のつながりを意識的に広げてもらう

業務に関わる人との関係性構築も重要ですが、中長期的なキャリアを描いてもらい、長く活躍し続けてもらうためには、業務に関係のない人との繋がりも重要です。縦横の繋がりが多いほど、仕事やキャリアの壁に躓いた際に相談できる窓口、セーフティーネットが広がります。逆に、そういった繋がりが希薄であればあるほど、組織の中で孤立する存在になり、キャリアが描けないまま次の転職に踏み切るというサイクルが生まれてしまいます。偶発的な繋がりが生まれにくい職場では、ワールドカフェという会議の手法を使って、も部門や役職、世代を超えた会話を生みだすなど様々な取り組みが行われています。

4.オンボーディングにおける役割認識をそろえる

オンボーディングは誰が行うものでしょうか。先にお伝えしたように、働きがいの高い職場においては、オンボーディング施策の目的を組織のパフォーマンス最大化までにおいています。つまり、会社ぐるみで行うものと言ってもよいでしょう。少なくとも、人事、受け入れ先の上司、育成担当者、本人は、ポイントに挙げてきた1~3について共有し、それぞれの立場で具体的にどのように進めるかを検討しておきます。

5.定期的に効果を検証し、PDCAを回す

このようなオンボーディングプログラムは、成果が見えづらく、結局は実行を個々人に委ねられて形骸化してしまうケースも多々あります。形骸化させないためには、定期的に効果を確認し、重要なポイントを、関係者で共有し続けることが重要です。例えば定量面としては、「離職者数」「ストレスチェックの結果」「入社者アンケート」などが取得可能ですし、定性面としては定期的に中途入社者を集めて「躓いていること」や「馴染めたきっかけ」などについて共有してもらうことが有効です。

オンボーディングの施策・事例

事例1:オンライン上で、ちょっとした疑問をすぐに解消できる仕組みづくり

A社では、テレワークを主体とした働き方を進める中で、1人で仕事をしている時にぶつかるちょっとした疑問をすぐに解決できる仕組みとして導入しました。社内SNS上で、部署のメンバー全員が参加する“誰か教えて!”というスレッドを作成し、だれでも自由に投稿ができるようにします。実際には、質問をするのは主に新入社員含む若手のメンバーが中心で、ベテランやマネジャーは質問に対して即時に回答を行っています。

ポイントは、「そんなこともわからないのか!」や「まず自分で調べろ!」という否定的なことは一切言わないこと。結果的には、ベテランメンバーも質問を投稿する場面も増え、組織の生産性の向上に寄与しています。

事例2:リモート環境での中途採用者へのフォロースキーム構築

B社では、これまで中途社員の育成は現場任せでしたが、リモート下におけるメンタル離職の増加を受けて、オンボーディングプログラムを構築し、受け入れ体制を整えました。

入社初日は人事より企業のミッションビジョンバリューについての研修を行い企業文化について丁寧に説明を行います。配属後は、上長より1on1ミーティングにて具体的な担当業務や期待値、チームや部門のミッション、今後のスケジュール等を説明した上で、中途採用者をチームメンバーに紹介し、組織での受け入れの雰囲気をつくります。本人は、その後1か月ほどかけて、部門内やチーム内、加えて、業務関連部門の社員との1対1ミーティングを設定し、相互理解を深めてもらいます。人事部は3か月後、半年後に、アンケートやグループ研修を通じて中途採用の状態を確認し、そこで得た情報を、上長へフィードバックします。これまで配属先が拠点に広がっており出来なかった中途入社者同士の交流もオンライン上で増やすなど、徹底的に「組織適応」に重点を置いて施策を行い、中途採用者の早期戦力化に繋げています。

関連記事:1on1ミーティングとは?目的や進め方、話すことのテーマを紹介

中途採用者へのフォロースキーム

まとめ

オンボーディングの意味や目的、企業側・従業員側のメリット、ポイントや事例などをお伝えしました。

人を資本とするほとんどの企業において、優秀人材の採用と育成は重要な経営課題でしょう。しかし、採用難易度が劇的に高まっている中で、せっかく採用した人材に対してフォローができず定着・戦略化されないことは、穴の空いた桶に水を汲み続けるようなものです。ぜひ貴社においてのオンボーディングの目的や位置づけを再検討していただきたいと思います。

また、GPTWでは若手の「働きがいのある会社」ランキングの発表や事例紹介、働きがい向上のご支援も行っておりますので、お悩みがあれば是非お気軽にご相談ください。

Great Place to Work(R) Institute Japan マネジャー 植田 若葉

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新卒でリクルートグループの人材派遣会社に法人営業として入社。
2016年リクルートマネジメントソリューションズに転籍し、営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2021年より同社の事業推進部を兼務し、戦略転換期における営業組織の組織開発に携わる。
2022年よりマネジメント職としてGreat Place to Work(R) Institute Japanに参画。自らも営業、コンサルタントとして「働きがいのある会社」調査の提供や、調査の分析・研究、顧客の働きがい向上支援を行う。

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